【第二十八話】他人の動画は参考にならない?!|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う
いまや巷にあふれかえる動画。
私の旧友はYouTubeを見てきものの着かたを覚えた。
いつも美しく完璧なセルフ和髪アップヘアの姉弟子さんは、暇さえあればYouTubeを見て髪技(ほんとに神技!)をupdateしているそうだ。
職場の若い衆(20代中盤)は、会社のポータルサイトに全員視聴必須の資料動画がUPされた際、
「私、動画は二倍速で見るので字幕つけてほしいです」
と言っていた。
二倍速?!字幕?!
オバチャン、ツイテイケナイ・・・
さて私。
実は動画視聴が苦手である。
YouTube、ほとんど見ない。
Twitterの画像リンクを踏んで、動画が表示されるとすぐに閉じてしまう。
理由はよくわからない。
しかし、イヤだキライだダメだ〜、とも言っていられない。
全ては舞台のため、と神DVDをポチー。
玉様♡
届くや否や、正座して拝見。
わー!
舞台中央に大きな松の木、
長くしだれた藤の花が横いっぱいに広がり、
長唄連中が左右にずらり!
華やか〜豪華〜!
(こ、これほんまにわたしやるんか・・・:(;゙゚'ω゚'):)
(安心してください、録音やで)
(舞台もここまで広くないと思うで)
そして玉様♡
はわわ〜、う、美しい〜
・・・
え、あれっ?
_人人人人人人人人人人_
> 振りが全然ちがう <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
(なんなら曲の調子も違う。ハ長調とへ長調くらい違う、と思う)
藤の枝を大胆にさばき、高く大きくかかげる。
長い袖も華麗にヒラヒラ。
ぐぅーっとのけぞる見せ場で拍手喝采。
(うわー、派手だなぁ〜)
(私がやったら頭から落っこちてしまうわ、こわっ)
シナシナと床に横座りになると、
塗笠の赤い紐を口にくわえて妖艶な流し目。
かと思ったら紐を一回ゆわえ、端を左右の手に持ち、
こっちがあなた、こっちはわたし。
ちょいちょい、仲良しね、ウフフ・・・
(いやいや、こんなんせえへんよー!)
ササササーっと舞台の端いっぱいまで進んで深々とお辞儀。
反対側にもススススーッっと行って、うやうやしくご挨拶。
(なんやこの曲?!知らん知らん<藤音頭ですがな、今回あなたはやらないの)
〽︎可愛がろとて酒買うて飲ませたら
(えー、お酒飲んじゃうのー?!)
〽︎うちの男松にからんでしめて
(えーと、ちょっとあのこれは・・・(*/∇\*) キャー)
酔っ払っちゃって…あらワタクシとしたことがウフフ〜
なんてことになっているが、
私の教わった振りは端から端までシラフである。
なによりあの飛び道具、
三段笠を使っていない!
そういえばだいぶ前におっしょはん、
「うちの流派の魅力は “振り”。 品がいいんですよ〜」
とおっしゃっていた。
品がいい・・・
山村流、かつては船場の商家のお嬢さん必須のお稽古だったそうだ。
こいさん、いとさん、ごりょんさん、の世界。
そりゃ上品なわけだ。
なるほどね〜
おっしょはんの言うことと冷酒は後で効く。
(続く)