【第二十一話】鬘(かつら?かづら?)も重要アイテム|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う
鬘。
かつら、
と読みたいところだが
かづら、
だそうで。
(関西だからかな?)
かづらは舞台のこしらえの中でも最重要アイテム。
おっしょはんはたしか、
一、髪。 二、化粧。 三、衣装。
とおっしゃっていた。
(いち髪、ってシャンプーがあったなぁ。ソースはここか?!)
舞台でかぶるかづらを選ぶことを
かづらあわせ
という。
自分の頭の形、顔だちにあったかづらを選んでもらうのだ。
例年は5月ごろ、かづらさんのところに伺い、
↓
たくさんあるかづらから、
これ!というものを選んでもらう。
↓
本番までに演目にあった形に結ってくれる。
であるが何しろ新型のアレのせいで異例づくし。
今年はかづらさんが下稽古先に出張してくれはりますよー
東京から大阪、何度も行かれへんからいっぺんで済むようにしてくれはったわー
よかったなぁ。
とおっしょはん。
なんとありがたいこと・・・
(やったー!交通費、一往復分浮いた~)
さて6/8、下稽古の日。
東京駅から新幹線で一路大阪へ。
新大阪からは赤いマークの御堂筋線。
なんばで降りて、超絶長い地下街・なんばウォークをひたすらまっすぐ進む。
(帰りにとん蝶、買ってこ)
えーと、文楽劇場についたけど、どうしたらいいのかな?
(お客さんでしか来たことがないから勝手がわからないよ・・・)
あ、大阪の姉弟子さん、名取のKさん発見!
おはようございますー。ご一緒させてくださーい。
(よかった安心した・・・)
楽屋口の守衛さんにも、
おはようございまーす。
とご挨拶して、いざ入館。
どこ行ったらいいんやろ?
あ、なんか貼ってありますよ!
「山村若佐紀 伝承の会 ・・・」
で、伝承?!(絶句)
えらいものものしい会名なんですけど、
私らが出る「なつの会」のことですかね?
(聞いてないよー)
指定の場所に行くと、受付が。
お世話になりますー、よろしくお願いしますー。
(前回こんなん、なかったけどな・・・)
ほんでどないしたらええんやろな、私たち・・・
(微妙に不安)
廊下で所在なくしていると、
あ、おっしょはん来たー!!
(不安、一気に解消)
先生、おはようございます。
今日もよろしくお願いします!
おはようございますー
順番、まだだいぶ後みたいやから、
先にかづらあわせかな。
ちょっと見にいこか。
おっしょはんに連れられて、楽屋から客席ロビーへ。
おお!ロビーがかづらやさんになってる~
こないたくさん持ってきてくれはったんや・・・
(搬入搬出の労力を思い、クラクラする)
さて早速。
よろしくお願いしまーす!
鏡の前に座ると、頭を羽二重で巻かれる。
(かづらをかぶる準備、下拵えね)
さて、どんどんかぶっていきますよー
こっちのほうがええかな?
いやこっちかな?
これがええんちゃうかな!
大師匠に見てもらってきてなー
はーい。
私はおっしょはんにつれられて、小ホール客席へ。
舞台では下稽古(リハーサル)の真っ最中。
緊張感ただよう中、みているかたの邪魔にならないように、
上体を直角に折り、腰をMAXに落とし、スササササーッと客席中央にお座りの大師匠のところへ。
おっしょはんが絶妙なタイミングでお声かけをすると、
舞台をジッとみていた大師匠が一瞬、こちらを向いてくださる。
まー、遠くからよう来てくれたなぁ~
藤娘やな、もうちょーっとこうな、ここが丸ぅ〜になってるほうがええなぁ。
大師匠は私の顔、オデコの生え際を指差しながらおっしゃった。
おっしょはんと私は、ははーっ、と退場し、かづらさんのところへ戻る。
ここもうちょっと丸ぅに、って言われましたー
そうか、じゃあこっちにしよか。
これやろ!これ!大師匠にもっぺん見せといで。
(再びスササササーっと客席に入る)
まぁ。これやったらよろし。
さっきより、よぅなった。こっちにしなさい。
OK出ましたー!!
ほんとに微妙。ミリ単位の攻防であった。
(続く)