【京都】京都タワーでひとっ風呂
〔村川〕のおでんで、たっぷり京野菜の旨み甘みを堪能した後……。
すっかり満足した二人は、なんとなく真っ直ぐホテルへもどる気になれず、京都タワーへ立ち寄った。
この内部に、銭湯があると知ったので。
今にして思えば、一度でも行っておいてよかった。2021年の六月末日をもって、57年の歴史に幕を閉じたというニュースをネットで見たから。
フォントに昭和を感じさせる看板に従って、地下へと降りる。
この、今は亡き大浴場で、二人しておバカな話題で腹筋が死にかけつつ、付近の人に怪訝な目でみられながらも、のぼせ上がるまで湯につかる。
話題は他愛のない内容ばかり。
昨夜、ホテルでわたしが上品な寝返りをした時、お尻とパンツが丸見えになって、友達はそれを眺めながら眠る羽目になった、とか、実にくだらないことばかり(おかげで朝からパンツ女よばわりされた)。
その後は、タワーの展望室まで上り、京都の夜景を楽しんだ。
「あ、ニンテンドーが見える!」
ああ、京都だねえ。夜の闇を切り裂いて〔NINTENDO〕の文字が光芒を放っていた。
伏見城もどこかに見えるはずだが、これはちっとも光ってはいないので、さっぱりわからない。
昭和の時代に復元された、鉄筋コンクリートの建物ではあるが、戦国末期、桃山時代にオリジナルが建てられた時には、豊臣秀吉はこの城から、天下人として京を睥睨していたはず。
その姿は、京都市中からもよく見えたそうだが……現代はもう高い建物だらけなので、京都タワーにでも登らなければ、その姿を確認することもできないし、夜ならばこれはもう、無理な話だよね。
と、
「のどか、あそこって、うちらのホテルじゃね?」
友達に促されて、別の方向を眺めてみれば、確かに、
「なんだか、それっぽいよね」
よくよく観察してみると、最上階には、浴室らしき窓が見える。
かなり小さくはあるが、なんと、京都タワーからは丸見え、ということになるのか……。
あれが女風呂ではないことを祈りながら、友達とわたし、可笑しげに目を合わせた。
【追記】
調べてみたら、その後すぐにマンションが建ったおかげで、京都タワーからホテルのお風呂場が見えることはなくなったっぽい。
……え、まって。
それって、今度は新しいそのマンションの窓から見えちゃうことに……?