【神保町】三幸園 長安の宴と日本の町中華
現在、飯田橋の日中友好会館で〔長安・夜の宴 唐王朝の衣食住展〕という展覧会を開催している。
12月1日までなので、たっぷり一ヶ月半くらい残っている。
その中で、唐の時代の楽器で演奏会をやるというので、千葉ともこ先生から誘っていただいた。
わたしにとって憧れの作家で、まるで妹みたいにわたしのことを可愛がってくれている。
唐の時代を中心に、重厚で壮大な歴史小説を執筆されている作家さん。
しかも品の良い美人とあれば、憧れないではいられない。
その背中を追うべく、わたしも中国の歴史ものでもデビューできるよう頑張ってる最中。
その千葉先生と現地で待ち合わせすると……。
「双子コーデだ!」
なんと二人とも、白いカットソーの上に黒いワンピを重ねた姿だった。
この素敵な偶然に、ちょっと照れながら展示物を眺め、そして時間になると、演奏会が行われるホールへ。
すごい長蛇の列で、もしのんびりしていたら、立ち見になるところだった。
〔千年の響き ♪ 秋の唐楽器コンサート〕と題した演奏会では、七絃琴を主として簫(しょう)、手鼓(てつづみ)、横笛など、さまざまな楽器を使って、1400年前の長安を彩っていたであろう楽曲を再現してくれていた。
のみならず、せっかく現代での演奏なので、大ヒットドラマ〔陳情令〕の曲や〔カノン〕のアレンジ版も披露。
西洋音楽とは音階が違うから、それ専用に調律をしないといけないところが、興味深かった。
なんと、同じ会場に、漫画家の望月桜先生もいらしていることがわかって合流。
中華エンタメつながり。
望月先生は、品のある着物姿。
中華エンタメの分野では、まだデビューできていないわたしだけど、こうやって活躍されているさまざまな作家さんとお会いできるの、とても恵まれた環境にいると思う。
◯
その後、神保町へ移動。
黄昏が深まる中、千葉先生の提案で、美味しい町中華の〔三幸園〕というお店で食べることに。
17時にして、すでに行列となっている。
30分ほど、千葉先生とおしゃべりしながら待っていれば、時間なんてあっという間に過ぎ去ってくれる。
どれも美味しそうだったけれど、初めてのお店だし、一番基本となるメニューを選ぶことにした。
普通のラーメンと、水餃子。
千葉先生は同じくラーメンと焼き餃子。
お互いに一個ずつトレードして、その美味しさを楽しむ。
ガチ中華も大好きだけど、こういう町中華も好き。
ラーメンはごく基本的な醤油ベースの優しい味。
五臓六腑にしみわたる。
1400年の時を経て、さまざまに変遷しながらも中国の味が日本へ伝わり、やがて町中華として帰結する。
どこにも衒いのない、さりげなくも洗練の極地にあるラーメンだ。
餃子は、唐の時代にはすでに存在していたらしい。
たとえば西域のアスターナ古墳群からは、今と同じ半月型の餃子が発掘されている。
極度に乾燥した砂漠地帯なので、完全な形を保って出土した。
唐代には牢丸、粉角など、さまざまに呼ばれていたらしい。
なお、餃子の「餃」という時は、本来は飴の意味だったそうで、どこをどうたどってこの呼び名に変遷していったのか、実に謎である。
なんて理屈っぽく中華料理の歴史に思いを馳せながら、理屈ぬきの美味しさに、まんぷくになって外へ出る。
唐の時代を肌で感じ、なおかつ日本に定着した中華料理でしめくくる一日は、とても素敵だった。
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