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【上田】巨大とんかつ 六文銭

 ちょいと用事があって、またもや上田へ出向いた。
 高速道路から下りて、馴染みのある上田の街並みを見ると、なにやらほっとする。
 北関東から3時間半もの道のりだけど、堂々の日帰り。

和風洋食 六文銭

 巨大なとんかつが食べられる〔六文銭〕が本日の目当てで、地図アプリで調べると、別所温泉の麓あたりに位置していた。
 扉を開けると、厨房の中に立つご主人らしき年配の男性の姿が、目に飛び込んできた。
 洋食屋らしく白いコック帽にコックコートを着ていて、いかにも厳しそうな風貌だった。
(あ、これは自分の仕事に妥協しない職人肌の人なんだな……)
 そう感じながら、カウンター席へ。

 このご主人のたたずまいだけで、もう、このお店の味に期待できることがわかった。
 カウンター席だから、調理の手つきをじっくり観察できる。
 手際よく、分厚い肉を処理し、油へ投入。
 揚がったものへ、さっと包丁をいれて、てきぱきと皿へ持っている。
 その目つきは、鋭い。

 待っている間、新たにお客さんが来てカウンターへ導かれたので、
「あ、一つ隣にずれますね」
 横の席へ移ると、ご主人、ふっと嬉しそうに微笑んでくれた気がした。

待っている間も幸せ

 メニューには、
フィレカツ……脂が少なめで柔らかい
ロースカツ……脂が多めで濃厚
 迷うことなく、ロースにした。

 待っている間の時間も幸せ。
 ご主人の手際を見ていて、飽きない。

薄い衣に分厚いカツ

 いざ、わたしのロースカツが出てきた。
 大中小と選べるから、当然、大を選んだ。
 キャベツが高いご時世だけど、それをケチっている様子もないほどの盛りっぷり。
 衣はとても薄く仕上げてある。
 塩をかけて、まずは味わう。
 美味しい。
 肉と脂が調和していて、塩がその旨味を引き立ててくれる。
 つづいて、ツボに入っているソースをたっぷり掛けまわす。
 夢中でむさぼり喰った。

おおきい=幸せ

 やがてご飯とお味噌汁も出てくる。
 さらに、
「はい、アイスティーです」
 なんとレモンティーも出てきた。
(このお店、わかってる……!)
 脂の濃厚な肉料理には、アイスティーが圧倒的に合う。
 あらゆる飲み物の中で、これほど肉につきづきしい飲み物はない、とわたしは思っているのだ。
 焼肉屋さんで、もしドリンクバーにアイスティーがあったなら、迷わずそれを飲むことにしているくらいだ。

脂の強い肉料理には、アイスティー

 やがて……。
 隣の男性が、
「ご飯、おかわり」
「あいよ」
 店のおばさんが笑顔でおかわりを持ってきた。
 ご飯、おかわりができたのか……トンカツはかなり減って、残り3切れほどとなっていたけれど、
「すみません、わたしもおかわり……あああ行っちゃった」
 少ししょんぼりしていると、ご主人が、
「こちらのお客さんも」
 とおばさんを促してくれた。感謝。

 もっと早くおかわり制度を知っていたら、もう一杯くらいご飯を食べられたのに……少し悔しがりながらも、
「まんぞくまんぞく」
 アイスティーを飲み干して、口の中をすっきりにした。
 お店に敬意を表して、お皿にはかけらひとつ残さなかった。

絶対にまた来たい、六文銭

 上田城の近くにある教育会館にて、本日の主目的である「赤松小三郎講座」を受講する。
 幕末に活躍した、郷土の偉人だ。
 上田民以外の知名度は、今のところないに等しい。
 けれど、だからこそ、いつかわたしの手で赤松小三郎を書いてみたいと考えて、何年も前から研究している。
 まあ、その前に、歴史小説でのデビューも必要なんだけどね……。

 会場へ顔を見せると、会長さんの奥さんが、
「来てくれたんですね、お久しぶり!」
 こちらが照れてしまうくらい、喜んでくれた。

 今回は赤松小三郎と西洋科学の関わりについての講義内容で、とても充実した。
 いざ、帰途につくも、
「せめて別所温泉で、日帰り湯にでも……いや、無理せず帰った方が……」
 悩みながら、車のエンジンをかけたのだった。

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