【青森】その1 弘前・さくら祭と、悠久のまったり喫茶店
ほぼ葉桜だらけの、さくら祭を楽しんできたよ。
関東圏なら4月初旬が桜の季節。
本州最北端の青森県なら、ゴールデンウィークの時期こそが満開の時期……だったらしいけど、開花が年々早まっていて、わたしが行った時はもはやほぼ葉桜。
桜の品種によっては、咲いている木もちらほら。
「以前は、雪が残っている中で、今の時期が一番の見頃でしたけど……」
とは、青森の書店員さんからの情報。
ほんと、時期がずれてきてるんだな……。
◯
でも大丈夫。
わたしが弘前公園へ来たのは、桜を見るためではなく、ロケ地訪問・聖地巡礼が目的だったので。
風祭千さんの『チューニング!』という、青森を舞台に、音楽を題材とした青春小説がありまして。
『爽やかさ120%』とうたっている帯の文言は、伊達じゃない!
……ていうくらい、大好きな小説なのだ。
中学二年生の主人公たちが作中で訪れたのが、弘前公園とその周辺。
桜が咲いていようとも、いなくとも、わたしはついに、この場所へやって来た!
◯
作者の、風祭千さんからの情報で、屋台が立ち並んでいることもわかっていたので、さっそく津軽そばを堪能。
花より団子、色気より喰い気!
お蕎麦の他に、おでんもあったので「角こんにゃく」も添えてみた。
面白いのは、この辺のおでんは、お蕎麦のつゆと共通ということ。
やさしい味わいだった。
◯
旧市立図書館も訪問してみる。
明治時代の建物で、とてもこじんまりとしつつも、味わいのあるたたずまい。
ここ弘前は古くからある文化財が、とてもよく保存されていて、歴史の風格を感じさせる。
歴史をもつ街は、どこか悠然としていて、かつ意識的にせよ無意識的にせよ心に誇りをいだいていて、言語化できない、豊かな何かを持っている気がする。
わたしが知る中では、例えば長野県の上田市。あそこは真田の里で、やはり同じように、ゆったりとした自信のようなものが空気に漂っていると思う。
◯
弘前公園から東の方面へ10分ほど歩いてゆくと〔土手町商店街〕が見えてくる。
古くからある商店街で、人通りはさほど多くはないものの、独特のぬくもりが漂っていて、なおかつ寂れた感じがしない。
普段は深緑のアーケードが目印らしいけれど、この日は風が強かったので、たたんであった。
この商店街にはおしゃれな喫茶店が多い。
ただ、営業しているかどうかは、お店側の気分次第なところもあるようで、なんか、そういうの、おおらかで好き。
とても古いたたずまいの建物にはいっている〔時代屋〕という喫茶店が、あいていた。
築100年にもなる、素敵な骨董的建造物だ。
ただ、こぢんまりした店内は、地元の常連さんでいっぱい。
「あらら、じゃあ私たちはこれで失礼しましょうかね。どうせいつも来てるんだしね」
年配の女性グループが、笑顔でわたしを気遣って、席を空けてくれた。
リンゴジュースとアップリパイのセットを。
青森県に来たら、やっぱりこれだよね。
リンゴジュースは、果肉感がどろりと残っていて、まさに、
「リンゴをそのまま飲んでいるような……」
食感と飲みごたえだった。
品種は王林。
アップルパイの中にあるリンゴも、ごろりと塊になって入っていて、まったくケチケチしていない。
こんなにも「そのまんまリンゴ」なアップルパイ、生まれて初めて食べた。
ナイフをいれると、外のパイ生地が、さっくり砕ける。
甘いものを食べたり飲んだりした後なので、苦味の深いコーヒーで締めくくりたいと思ったしね。
マンデリンの味と香りを楽しみながら、
(また弘前に来よう。こんなに優雅な時間を味わえるだけでも、その価値があるよね……)
この土地が、すっかり大好きになっていた。
つづく(次回、上品な中華料理と、わくわく車中泊)