【沖縄】その7 沖縄最後の夜と、琉球の音色
「龍が如く3の世界、そのまんまだなー」
最後の夜は、国際通りの飲み屋さんでしめくくろうと思っていた。
ふらり、予備知識もなく入ったそのお店は〔沖縄料理ちぬまん〕とあって、店内はとても賑わっている。
二人とも、そんなにお酒は飲めないから、店員さんおすすめの泡盛を二人で分けて、ちびちび飲って、あとはソフトドリンクに逃げるばかりだが、料理はほんと、どれも満足のゆくものばかり。
そりゃそうだ、ゴリゴリの沖縄名産で、攻めに攻め切った注文だったし。
てびち煮付け、ゴーヤ、海ぶどう、牛肉のあぶり握り、ヤギ肉のお刺身、ラフテー煮付け、刺身盛り合わせ、あぐー豚のロース焼肉……もうね、胃袋とお財布が許す限り、
「これが沖縄最後の夜!」
食べに食べまくった。
すぐ近くに『ちぬまん島唄ライブ』と銘打った小さなステージがあり、琉球の民族衣装をまとった男女ふたりぐみが、三線を鳴らし、喉を鳴らし、ライブを始める。
陽気なのに、どこか物悲しい。それでいて、その物悲しさをさらに吹き飛ばす勢いの陽気さで唄う。
ふと、中国放浪の最中に知り合った、沖縄の人のことを思い出す。
琉球はとても悲しい歴史を歩んでいたことを、その人から教えてもらって以来、沖縄に興味を持つようになったけ。
また、ふと連想を呼ぶ。
沖縄に興味を持って以来、『THE BOOM』の『島唄』の、それもウチナーグチバージョンをよくカラオケで歌っていた頃の話。
妹が結婚式を挙げる時、母が、
「あんた、島唄が得意だったよね。それ、披露宴で歌ってよ」
一瞬、わたしは耳を疑ったし、たぶん、すごく嫌そうな顔をしたと思う。
(島唄にこめられた意味や背景をおもえば、間違っても『結婚式で歌って』なんて言えないはずなんだけどな……!)
でも。
多くの日本人にとって、知らないのが、当然なんだろうと思う。
わたしも、少し前まで知らなかった。
だからわたしは、ただ曖昧な笑みで、
「いや、やめとくよ」
とだけ答えて、断った。
そんな思い出に苦笑しながら、今、陽気な琉球の音に乗って、手拍子し、拍手し、みんなで陽気に騒いでみる。
(ああ、沖縄が大好きだな……)
しみじみ思いながら、余韻のままにお店を後にした。
良い夜にめぐりあえた気分にひたりながら。
ただ、欲張った飲み食いっぷりだったので、お財布は大怪我だったけどね。