帰り道
私はあの子が嫌いだった
なのに思い出すのは前を歩くあの子の後ろ姿
あの子が指をさした先の世界
ファインダー越しのあの子の笑顔
必死に大人に近づこうとしたスクールバッグ
履き古したコンバース
黄色と黒のスケッチブック
ぬるくなったカルピスソーダ
私たちの周りにふく穏やかな風と
私たちを包むやわらかな西日
早く大人になろうと地面を蹴って
もつれて転んで繰り返す
あの子はいつだって私の少し先を歩いて振り返って
私の嫌いな私を好きと言った
だから私はあの子が嫌いだった
もうあの子の声をうまく思い出すことはできない
顔は思い切りピントをはずしたみたいにぼやけてしまう
なのにあの子とかいだ風の匂いだけははっきり覚えていて
きっとあの子はずいぶん遠くを歩いてるんだろうな
私の足はいまでももつれて、そうして転んで、繰り返す
私は今でも子供のまま