透析中に見逃してはいけない致死性不整脈とは?

透析患者は心血管リスクが高く、透析中に不整脈が発生することがあります。その中でも致死性不整脈は、適切な対応をしなければ数分で命に関わる重大な状態になります。

今回は、透析中に特に注意すべき致死性不整脈の種類と原因、対応策について、わかりやすく解説します。


透析中に発生しやすい致死性不整脈

1. 心室頻拍(VT:Ventricular Tachycardia)

💡 特徴

  • 心臓のリズムが異常になり、150~250回/分の速い脈が発生

  • 意識消失や血圧低下を伴うことがある

  • 放置すると心室細動(VF)に移行し、心停止のリスクが高まる

⚠️ 透析中の主な原因

  • カリウム(K)の急激な低下(透析開始直後)

  • カルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)のバランス異常

  • 心筋虚血(低血圧や動脈硬化の影響)

  • QT延長(薬剤の影響や電解質異常)

🚨 対応策

  • 意識がある場合 → 抗不整脈薬(リドカイン、アミオダロン)を投与

  • 意識消失やショック状態 → 直ちに電気ショック(カルディオバージョン)


2. 心室細動(VF:Ventricular Fibrillation)

💡 特徴

  • 心臓がバラバラに震え、血液を送り出せなくなる状態

  • ほぼ100%心停止に直結し、最も緊急性が高い不整脈

⚠️ 透析中の主な原因

  • 高カリウム血症(K>6.5mEq/L)

  • 急激な電解質変動(Ca, Mgの異常)

  • 低血圧による心筋虚血

  • 透析液のKやCa濃度の不適切な設定

🚨 対応策

  • 直ちに**電気ショック(除細動)**を行う(救命率を大幅に向上)

  • 心肺蘇生(CPR)を開始

  • カリウム異常が原因の場合、グルコン酸カルシウムの投与


3. 無脈性電気活動(PEA:Pulseless Electrical Activity)

💡 特徴

  • 心電図は動いているが、実際には脈が触れず心拍出がない状態

  • そのまま放置すると心静止に移行

⚠️ 透析中の主な原因

  • 急激な除水による低血圧

  • 心筋虚血(冠動脈病変)

  • 高カリウム血症

  • 透析液のカルシウムが低すぎる

🚨 対応策

  • 直ちに心肺蘇生(CPR)を開始

  • カリウムやカルシウムの補正(グルコン酸カルシウム投与)

  • 透析の一時中断や輸液負荷を検討


4. 心静止(Asystole)

💡 特徴

  • 完全な心停止状態(P波、QRS波ともに消失)

  • 即死に直結する最も危険な状態

⚠️ 透析中の主な原因

  • 急激な高カリウム血症(K>7.0mEq/L)

  • 透析液のKやCa濃度の異常

  • 低血圧による循環不全

  • 急性冠動脈閉塞(AMI)

🚨 対応策

  • 直ちに**心肺蘇生(CPR)**を開始

  • 高カリウム血症が原因なら、グルコン酸カルシウム静注

  • エピネフリン(アドレナリン)投与を検討


透析中の致死性不整脈を防ぐために

透析中に不整脈を起こさないためには、リスク管理と早期対応が重要です。

透析前に確認すべきこと

  • カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)のチェック

  • 除水速度(UF rate)は適正か?(急激な除水は低血圧の原因)

  • 透析液のK・Ca濃度は患者の状態に適しているか?

  • 低血圧のリスクがないか?(過去の血圧データの確認)

透析中に注意すべきサイン

  • 動悸や息苦しさを訴える

  • 血圧が急激に低下する

  • 心電図モニターに異常波形が出る

  • 意識レベルの低下が見られる

🔴 これらの症状があれば、不整脈の発生を疑い、即座に対応することが重要です!


まとめ

透析中に見逃してはいけない致死性不整脈は、以下の4つです。

  1. 心室頻拍(VT) → 150~250回/分の頻拍、不整脈が悪化するとVFへ移行

  2. 心室細動(VF) → 完全な心停止、直ちに除細動が必要

  3. 無脈性電気活動(PEA) → 心電図波形ありでも脈なし、CPRが必要

  4. 心静止(Asystole) → P波・QRS波なし、最も危険な状態

透析中の電解質変動・除水速度・血圧管理が、これらの不整脈のリスクを左右します。
透析中の細やかな観察と迅速な対応が、患者の生命を守るカギになります。

🩺 「ただの不整脈」と思わずに、常に致死性不整脈の可能性を意識しながら透析を行いましょう!

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Yusuke
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