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精肉店としての生き方

19歳で精肉店で働きはじめたので今年で40年ということになります。いまだにこの仕事が向いているのかどうかわからないのですが、少なくとも楽しさは年々増しているように感じています。

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いま僕の下で22歳(左)と23歳の2人の若者が働いています。レストランで料理をする人のことをシェフといいますが、精肉店で働く人のことは呼び名がないんです。一部では職人とかブッチャーと呼ぶ人もいますが、どうにもしっくりこない。実際、僕も職人とか言われることあるんですが、そもそも僕は自分のことを職人とは思っていない。職人というのは卓越した技術者であり、僕のような未熟な者がそう呼ばれることに抵抗があります。

ところで、どの職種も人手不足で困っていますが、精肉店も同じくです。人手不足以前の問題で、精肉店で働きたいとか、そもそも興味を持ってくれている若者が果たしているのだろうか。たぶんいないんじゃないかな。それでもサカエヤの取り組みに少しでも興味を持ってくれる若者がいればと情報発信しているのですが、なかなかヒットしてくれません。そういう意味ではいまうちで働いている子たちはホームランなのかも知れません。

ウサギもカメもゴールは同じ
23歳の子は覚えも早く性格も積極的。一方、22歳の子は覚えが遅く表現力が乏しい。おそらく自分に苛立ちを覚えることも少なくないだろう。でも、同じことを10年も20年もやっていればどこかのタイミングで同列になるときがあるのです。だから焦ることはないし、精度を高めることに注力すればいいと思っています。大事なことは続けることです。

連絡・報告・相談=信用
いわゆる「ホウレンソウ」ですが、これがなかなかできない。若いときにホウレンソウをしっかりやっていない子は大人になってもできない。ミスを隠してしまう癖が身についてしまうのです。ミスを起こしたときに正直に報告すればいいのですが、叱られるのが嫌なので隠してしまう。隠した分だけ2倍叱られる。そうなると、この子を信用できなくなるのです。だから、僕が口やかましく言っているのはホウレンソウであり、肉の切り方ではないのです。

掃除のために営業時間を短縮
掃除をするために営業時間を2時間短縮しました。忙しいと掃除をする時間がなくなりますからね。忙しさにかまけて掃除を怠ると良い仕事ができないばかりか気付きも悪くなります。まな板も床もピカピカだと肉も嬉しいはず。そういう姿勢が大事じゃないかな。もちろん制服もエプロンもきれいじゃないとね。汚れれば何度でも着替えればいい。

ストライクゾーンは狭く

ジビーフ2

近江牛だけを扱っていれば今ごろどうなっていたのでしょうね。間違いなくいまの姿はないんじゃないかな。だって近江牛はストライクゾーン広すぎ。日本最古の銘柄牛の産地は老舗だらけ。たかだか30年程度のサカエヤは若造以下です。そんななかで競ったところで埋もれてしまって誰も見つけてくれません。みなさんに助けられてなんとか世に出たジビーフがストライクゾーンを狭くするきっかけになったのは確かです。すると、東海大学のあか牛や吉田牧場さんのブラウンスイス牛、経産牛といった市場に流通しない牛ばかり寄ってくる。牛の神様に試されているような気もしないではないですが、生産者と料理人、消費者を「つなぐ」ことによって仕事の質に厚みがでたように感じています。

いったい何歳までやるのか

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来年60歳になります。まさか僕が還暦ですって。体力的にはしんどいときもありますが、この歳になっても新しい発見にわくわくすることがあります。いままでこうカットしていたのに、こっちのほうがいい感じになるやん。みたいなね。だからやめる気ないんです。まだまた楽しいこといっぱいありそうな気もしますしね。もしかしたら精肉店という職業、僕に向いているのかも知れません。最近そう思い始めてきました。

昨年、おこがましくも出版しまして。しかしあれですね、あとであれも書けばよかった、これも書けばよかったと後悔しきりです。なのでnoteは本の続きみたいなことを書いていこうと思っています。てことで本日の書きはじめにお付き合いいただきありがとうございました。









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新保吉伸/Niiho Yoshinobu
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