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「ドラムの里」大改造計画

栄町の令和4年度の決算状況をみると「歳出の部」で2番目に多いのが「総務費」の17.8%というのが分かります。14億8,000万円の支出は、総歳入約86億円しかない栄町にとって、かなりの比率を占めています。

令和4年度 決算概要、健全化判断比率及び資金不足比率について

総務費というのは、 全般的な事務や総合計画策定、財産管理などの事務にかかる経費のことです。栄町の総務費は、定住・移住促進事業、循環バス運行事業などの費用に充てられており、町の活性化や利便性を図るための予算といえば、イメージが付きやすいのではないかと思います。

その総務費ですが、令和3年と令和4年を比較すると、約2億円ほど増えています。内訳をみると、子育て世帯支援金や高齢者生活支援給付金、米価下落分助成金など、必要な予算が計上されており、「これは増えても致し方ない」という項目がズラリと並びます。

ただ、その中にひとつだけ項目として気になるものがありました。

ドラムの里の活性化計画策定等業務委託(14,597,000円)
及び活性化協議会補助金(11,620,000円)

合わせて26,000万円のお金が「ドラムの里」に投資されることが決まっており、今後、この資金を使って活性化が図られるとのことです。

いまひとつ人気のない「ドラムの里」

「ドラムの里」とは、栄町にある直売所やレンタルサイクルが借りられる複合観光スポットのことです。県営の屋外歴史博物館「房総の村」に隣接している施設ということもあり、時代モノからアニメまで、さまざまなコスプレを楽しむことができる『コスプレの館』を一番のウリとして、町でも積極的にアピールしています。

しかし、地元の私が言うのもなんですが、あまりパッとした観光施設ではありません。いまひとつ盛り上がりに欠けており、観光客数も年々減少傾向にあります。

栄町ドラムの里活性化計画より

町もその点は危機感を感じているらしく、なんとかテコ入れしたいという思いから、なけなしの税金の「2600万円」を投資して、「もっと盛り上げていこうぜ!」と、予算編成からもひしひしと伝わってきます。

試しにネットで検索したところ、この「栄町ドラムの里活性化計画(案)」というものがネット上に公開されていました。

60ページにもわたる資料に、いろいろ描いていますが、分かりやすく要点だけまとめると、下記の3点です。

・物販のスペースを広げる。
・レストランの再開業。
・芝生スペースでBBQなどができるようにする。

栄町ドラムの里活性化計画より

このような感じで、残念ながら、現状のドラムの里が、「少し便利で広くなりましたね」ぐらいの構想しかなく、これだと2600万円を投資しても、そう現状と変わりないかなぁというが、元観光施設で働いた経験のある、私の考えだったりします。

そもそも、「ドラムの里」に人が集まらない理由は、栄町にこれといった「観光スポットがない」というのが最大の要因です。たとえば、富津市にある「マザー牧場」の場合、年間90万人もの観光客が呼べるのは、マザー牧場そのものの魅了よりも、「房総」という魅力的な観光スポットをバックに抱えていることが大きいと言えます。

一方、成田市にある「成田ゆめ牧場」が年間30万人の入場者数しか集客できないのは、成田ゆめ牧場の魅力と言うよりも、「北総」という観光地としての弱さが、集客力を落としてしまう要因になっています。

つまり、観光客というのは、そのエリア周辺を“観光する”ことを目的として動いているので、魅力的な観光施設がエリア内に複数点在していないと、わざわざ時間を作って遊びに来て苦はくれないものなのです。どんなにドラムの里が魅力的な施設になったとしても、栄町のエリア全体が魅力的でなければ、施設を充実させても観光客に足を運ばせることは難しいと思います。栄町の中に、成田山や佐原の街並みのような観光スポットがあれば話は別ですが、基本的に、周辺の観光地に魅力がないエリアで、施設が単独で頑張っても、観光客の数は「ほとんど伸びない」というのが、観光ビジネスの鉄則だったりします。

少ない投資で観光客を増やすには?

地域に魅力がないエリアで単独の施設を運営する場合、「そこの施設に行く目的を明確にする」ということが重要です。産直所やレストランという、どこにでもあるような施設ではなく、「この場所にしかない体験」ができるような施設にしなければ、今のタイパ重視の時代に、わざわざ足を運んでもらえる人を増やすのは難しいといえます。

そう考えると、予算2600万円でできることといえば、「ドッグラン」ではないでしょうか。

設備投資が少なく、なおかつドラムの里に来る目的を明確にすることができて、人手をかけず、安定した売上を作ることができるのは、ドッグランぐらいしかないと思います。

年間パスポートを発行すれば確実にサブスク収入が得られるようになり、平日、雨天、冬の閑散期なども確実な収益が入るようになります。

また、ドッグランは栄町近辺でも多数ありますが、自然に囲まれていて、産直所もレストランも近くにある施設は、そう多くはありません。ドラムの里のシチュエーションは抜群で、成田市、印西市のペット好きのオーナーにとっても交通の便が悪くないことから、サービス内容や接客、施設の内容で差別化を図れば、少ない投資で魅力的な施設を作ることは十分に可能だと思います。

定期的にイベントを開催すれば、メディアへの露出も上がり、栄町の良い宣伝になると思います。ドッグラン周辺の店舗に関しても、産直所、レストランはもちろんのこと、ドッグフードやワンチャンのグッズなどの品ぞろえを豊富にしてあげると、より賑やかになります。ワンチャン関連のサービスを提供する起業家に声をかけて、チャレンジショップを何軒か運営してもらうのも町を盛り上げる一助になると思います。

設備の整ったドッグランができれば、隣接した竜角寺台、酒直台にワンちゃん好きのオーナーが引っ越してくるようになり、空き家問題の解決につながるかもしれません。何もウリがない栄町を「ワンちゃん好きが住む町」としてアピールすることは、成田市、印西市との差別化にもなると思います。どうせなら、栄町の住民でボランティアを募って、町民たちで手作りのドッグランを作ると、愛着のあるドッグラン施設になって、より利用者が増えるかもしれません。

「ドッグラン」というテーマが定まったほうが、InstagramやTikToKで情報が発信しやすくなり、フォロワーがつきやすくなって、情報発信の拡散が期待できるようになります。一方、産直所やレストランのSNSのコンテンツは世の中に溢れ返っているので、どんなに頑張って情報発信をしても、集客につなげることは難しいです。観光施設の場合、情報発信をすることが大事なのではなく、情報発信ができる施設を作ることが大事だということは、町作りとして押さえなくてはいけないポイントになると思います。

今後、どのようにドラムの里が発展していくのか分かりませんが、大切な税金を使ったリニューアル策です。みんなで知恵を絞って、そして協力して、栄町の目玉の観光施設として、盛り上げていきたいと思います。

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