若い人が「故郷に帰りたい」と言ってくれる町にしたいんです。
地方自治体の「人口が減る」という現象は、出生数の減少だけでなく、その町で生まれ育った人が「故郷に戻ってこない」というのが、思いのほか影響が大きかったりします。
特にその地域に大学がなかったり、働く場所がなかったりすると、若い労働人口が急速に減少していきます。
当然、その地で生まれ育った人が少なくなれば、その自治体に対して愛着を持つ人も減ることになります。そうなると、伝統的なお祭りの維持や地域の防災、自治会の活動も、その地域に残った高齢者たちが請け負うことになるので、地域の活動はさらに鈍くなっていきます。
このように、自治体の弱体化は「若い人の流出」の影響が思いのほか大きく、若い人が「この町に住み続けたい」と思えるような魅力的な町を作ることが、人口減に歯止めをかける施策の一つと言えるところがあります。
では、若い人が栄町に「住み続けたい」と思ってもらえるようにするためには、どうすればいいのか?
ひとつは、「面白い大人たちがいる町」を作ることです。
芸術でもスポーツでも、ビジネスでも、ボランティアでも、「面白いことをやっている大人」が身近にいると、その大人たちに若い人たちが憧れの気持ちを持ってくれるようになります。やがて「自分もこの町で、あの大人たちのように生きてみたい」と思ってもらえるようになり、大学や就職で一度は栄町を離れたものの、再び子育て世代になった時に、ふと思い出したように、栄町に戻ってくるようになるかもしれません。
今の栄町は、成田空港や東京の会社で働く人が多く、どうしても「この町で楽しく暮らしている大人」というのを、子ども達がイメージしにくいところがあります。
私たちが知らないだけで、この町にはたくさんの「面白い大人」がいるかもしれません。そのような隠れた人材を掘り起こすために、ユニークな町民にスポットが当たるようなイベントを開催したり、大人たちが子どもたちに知識や情報を教える勉強会を開いたり、「面白い大人たち」と触れ合える機会を増やすことが、栄町の魅力を子どもたちに伝える一歩になっていくのではないかと思います。
もうひとつ、若い人が栄町に興味を持ってもらう施策は、「歴史」を学んでもらうことです。
歴史を学ぶことは、その町に対して誇りや愛着心を育てることにつながります。今でも小学校の授業で栄町の歴史を学ぶ時間があると思いますが、旧石器時代から平安、江戸、明治時代、第二次世界大戦など、栄町がどのような変貌を遂げてきたのか、当時の写真や資料をふんだんに使った、小学生でも読みごたえがあるような、そんな栄町の歴史の本を作ることができれば、子ども達の「栄町民」という意識は、もう少し強くなるのではないかと思います。
このように「面白い大人たちがいる町」と「歴史の教育」の2つの柱を軸にすれば、栄町で生まれ育った子どもたちが、大人になってからも「栄町に住みたい」と思ってもらえるようになるのではないでしょうか。
少し突飛なアイデアかもしれませんが、若い人への「町への愛着」を深める施策は、必要不可欠なのではないかと思います。