「民衆暴力」中公新書

2022年8月某日読了

「民衆暴力」
一揆・暴動・虐殺の日本近代
著者：藤野裕子

他国の戦争や、
正当だったデモに対して過度に残虐になり暴走する警察。
映画でもだけど、特に実際のニュースなどをみて
常々思いはしたものの

なんでなの！と決定的になったのは
自国の入管職員の姿を見てでした。

ニュース記事や映像でも
#ウィシュマさん をどう放置し人権を踏み躙ったかを目撃してはいたけど
更に #映画牛久 で観た
虐待を加え、
ヒステリックに高圧的な態度の入管職員(日本人)
あのテンションや発声の感じ、ヤクザ映画とも違う
何か人間的な制御が外れてしまった精神状態
私が思い浮かべたのは戦場での極限状態の軍隊とかの雰囲気…
後は家庭内でのDVの中の最も殺人的な加害者の雰囲気。
(どれも観たのは作りものだけど…)

なぜ職員があの様な尋常じゃなく激した精神状態になるのか？
相手は犯罪者でもないし、あなたに危害を加えた訳でもないのに？その感情はなに？
もし彼だけがああなのだったら
あの職員は病院に連れて行かれるでしょう。
でもそうではない。当たり前に継続して職務をしている。
目を覆いたくなる外国人への「オモテナシ」の実態。
日本人の職員や組織、そしてはぐらかした答弁をする法務大臣に至るまで。
何故？

何がどうなると、「普通」だった人々は非人道的で極端に高圧的な生き物になるのか。
私もその立場に立たされたら目の色を変えて暴力に興じるのか？
そんなわけ無い、と言えるのか？

江戸から明治、
欧米に恥じない様にと、生活態度を変えさせられ
なのに一向に生活が楽にならず
しかも今まで「下」に見ていた賎民「穢多非人」が「解放」されて平等を求めてきた事への反発もおおきくなり、
百姓は上へも下へも不満を抱えた。
権力へ向かう一揆と同時に
元賎民の家々が焼かれ人々が虐殺された。

具体的には、元賎民たちが
自分達と同じ風呂屋に来る様になったとか
不当な重税を軽減する様申し出たとか
本来ならば「そんな当たり前の主張」なのに…
(米国で黒人がバスに乗れなかった時代の話を彷彿とする)

百姓達には、政府に反発して一揆をする気概のある一方、
『賎民身分とは異なると言う特権意識も同居していた』ということ。

思い出すのは #私のはなし部落のはなし で
「下には下がある」という言葉があった、
あれが、昔も今も私たち皆が持っている心理なんだろう。
#BlackLivesMatter が盛り上がり、黒人差別への悲しみと怒りが渦巻くアメリカの中で
黒人がアジア人を襲う #ヘイトクライム が起きたのと同じ構造なんだろう。
だって差別されてるアジア人の私達が人種差別をしているのだから。
私の好きな韓流スターが、何も知らない日本のネトウヨの標的になった時も、
本当に自分の国が恥ずかしかった…。
でも私に差別意識がないなんて決して言えない。
これは、悲しくも人類の普遍的な衝動なんだろうか…？

答えは一筋縄ではなくても
数々の研究の中から見えてくる事がまとめられています。
そして忘れてはいけないのは、
『権力犯罪が、権力側の資料に正確に記録されていることはまれである。』
って事…この記述に「あー😩」とため息をつく…

黒塗りしなきゃ出せない資料
嘘を付かなきゃ切り抜けられない国会
なんなら平気でシュレッダーしましたとか言うし
書き換えさせられた人が自死してもシラを切るような権力。
今に始まった事ではなかった。

この本は、
民衆の暴力を利用した政府、軍、警察、
権力側の圧力に反発する民衆のエネルギーをかわして、
民衆に民衆を襲わせ、平気でシラを切ってきた国家権力の事実が、
数多くの証言から綴られていました。

それが最も興味深かったのは関東大震災後の朝鮮人虐殺についてでした。
知りたかった事件。
それがどの様にして起こり、広がってしまったのかということ。
この本の終盤、まるでクライマックスとも言える様な章で、
夢中で読みました。

これ、知らなきゃいけないですね…
「寝た子を起こすな」と蓋をすれば、
私たちはまたきっと同じ罠にハマり、同じ様な過ちを繰り返す。
現に、これを無かったという歴史修正主義者はヘイトスピーチをばら撒いてる。
彼らは何かに良い様に利用されていないだろうか？

関東大震災後の朝鮮人虐殺、
それは私が勘違いしてフワっと思っていた様な、
民衆が勝手に始めて広まった虐殺じゃなかったです。
そしてそれは急に起こった事ではなく、
それまでの歴史から連綿と繋がっていました。

興味のあった後半だけ読もうかと、
最初ちょっと思ったのですが、初めからじっくり読んでよかったです。
繋がっていたので…
そうですよね…繋がっていない歴史なんてあり得ないですよね…

何か資料をという気持ちで、
図書館で探して借りたのですが、
読み終わってみたらとても意義ある大切な本で、
自分で買い直したくなりました。
でも…それしてるとキリがないから…💦
とりあえず返却…。

タイトルもテーマも怖い気がするけど
自分を知るのにとても良いお勧め本です。

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