「東京裁判」 小林正樹監督作品
2022年8月某日
「東京裁判」
監督:小林正樹
1983 日本
2019 4Kデジタルリマスター版
俳優を使った方ではなくて、
ドキュメンタリーのほう。
4時間37分!(休憩あり)
見応えがあり、勿体無くて寝られなかった。
わかっていないこと、理解が脳内で整理されていない歴史を、
解説と映像付きで観られる貴重な機会。
ずっと裁判の場面なのかと思ったのだけど違って、
裁判の進み(立証段階)と並行して、
ほぼ時系列で出来事の映像や解説が入っていて、
この一連の戦争の顛末を確認しながらどうにかついて行ける親切構造だった。
例として「満州事変段階」「日独伊三国同盟段階」「太平洋戦争段階」「残虐行為段階」
など。
個人的には日独伊三国同盟の場面で、
ドイツの大通りに賑々しく三国の国旗がはためいていた映像に衝撃を受けた。
ヒトラーのドイツ、
ムッソリーニのイタリアと手を組んだ日本の姿。
なんと恥ずかしい映像。
それはともかく、映画の視点は広かった。
つまり、何某かの思想的な偏りが大いに発揮されていては、
冷静に観るのが難しいと思うのだけど、
私にとっては、それを回避すべく広く編集されていたと感じた。
戦勝国が敗戦国を裁くという、この裁判のそもそもの不条理についてどう扱われたか、
欧米人がアジア人をどう思っていたか、
被告(旧大日本帝国軍の指導者たち)を弁護する弁護士に何人もの米国人がいて、
元敵国の国民である彼らがいかに誠実な法律家だったか、
また裁判長、判事、検事側がそれぞれに、
見据えていた方向性はどこにあり、結果どこへ帰着したか。
丁寧に広く編集されていたと感じた。
(しかし「天皇を裁きの俎上に乗せる事自体もってのほか」とか、
「東條英機らは英雄であった、英霊を尊べ!自虐史観の非国民を断罪せよ!」
とかを未だ信条としている人にとっては、やはり偏りがあると思うのかも?)
とにかく、現在に於いて過去をどう捉えている人でも、
当時の本人達の様子や言葉や態度を観られるのは貴重。
掻い摘まないで腰を据えて観たい作品。
「戦争はもとより罪、前後や上下に回避できない理由がどれほどあっても、
それでも戦争犯罪は裁かれるべき」
と、単純にしか考えて来なかった私にとって、
大いに視野が広がる映画体験だった。
私が育った頃、既に昭和天皇は「あっそ」などという口癖なんかを微笑ましく語られるただの象徴たるお爺ちゃんであったし、
平成の天皇や美智子妃は人間的に尊敬すらして来た。
でも人間として尊敬に足るかどうかとは別に、
天皇制から派生する日本人の病理とも言える妙なプライドと排他主義、
それと昭和天皇の戦争責任についてはちゃんと考えた事がなかった。
(ひとりの人間として基本的人権が剥奪されすぎている事はずっと疑問に思っていた。
言論の自由も彼らには無く、お痛わしやと思っている)
あと、愛国心なんてクソ喰らえだ、と思っていた私でも、
敗戦が決まり、その書類に署名をした船上の式典
(ポツダム宣言受諾後の儀式?←の場面か?すみませんバカで😅)
あの場面で身体のでかい米国人(マッカーサーや軍人たち)に囲まれた小さい日本人の偉いさん達の姿には、
流石に忸怩たる感情が自然に湧いたし、
最終的に絞首刑となるべくしてなった東條英機の、
天皇に対しての想いが伝わってくる裁判の終盤では、
悲しいかな西洋人にはわかるまい、
全くこの場に及んで非合理な考えではありながらも、
わかる、日本人は天皇に対して未だにその感情を持っている、
と理解はできる自分がいる。
(しかし結果は別だ)
天皇制を捨てられない日本の病理ここにあり。
でも大正のアナキストの様に、
「天皇を駆逐せよ!」なんてとても思えない。
尊敬に値する方々だと思っている。
ただ、天皇家にも人権を与えてあげて欲しい、
莫大な税金で暮らすのをやめさせてあげて欲しい。
言いたいことを言いたい時に言える人生を送らせてあげて欲しい。
なんなら貧困を経験したり、
医療へのアクセスが難しい恐怖なども味わうことが出来れば、
天皇家の皆様も人生がより味わい深く豊かになる筈だ。
なんてね。
やっぱり私の中でも答えは出ない。
でもこの戦争の責任は「あった筈だ」と個人的な見解、
に至った。
昨今の、
「1分でわかるナニナニ」のようなものや「何倍速で視聴」みたいなものが好まれる時代にあっても、
こうして5時間、映画館にとどまって、
まるで自分も裁判の傍聴席にいるようなジリジリ感を味わうのって悪くない、ていうかやってよかったと思う。
バカがこんなちっちゃな画面に要約して書くには無理すぎるけど、
4、5時間にするのも壮絶な作業だっただろう。
とても価値ある映画体験だった。
映画の最後には、A級じゃない、
B級、C級戦犯が、戦地とは言えど行き過ぎた残虐行為の為に
南洋の地などでそのまま簡易に裁かれ処刑されて行った事も、
短くではあるけど映像と共に語られていた。
語らない、語れないまま死んでいった、
私やあなたの先祖がそこに写っていたかもしれない、
それが戦争なんだと、思いました。
#東京裁判#小林正樹
#極東国際軍事裁判
#戦争反対#NOWAR
#映画記録#映画鑑賞
#movie#ドキュメンタリー