何者ですか、私たち
「わたしら、どこから来たんや」
『揺さんそこだよ、大事なの』
「だからどこやねん!」
『いや、だからそこがさぁ』
♡♡♡
こんにちは。フジミドリです。
昨日の私物語は、霊魂の故郷を描きました。故郷の視点から何が見えるのか──
♡♡♡
「フジさん、シーズン2は文体を変えたんやけど、そろそろ慣れてきたやろか」
『どうかな。【千日の瑠璃】から、無生物主語の一人称視点だけ借りて、オマージュ名乗るのも気が引けちゃう感じだよ』
「あっはっは。オマージュで謙遜かよ。まぁ面白い試みやとは思うで」
『丸山さんのお陰さ。よく考えつくね。傑作だよ。たぶん翻訳されないから、世界は知らないまま。勿体ないことだ』
「確かに完成度が高いな」
『日本語の極致だよ』
♡♡♡
私がこれまで書写した小説は、2作だけでございます。その一つが、丸山さんのデビュー作【夏の流れ】なのでした。
経緯は思い出せません。
ただあの衝撃は、30年を経た今でも鮮やかに蘇って参ります。天才って本当にいるのだな。しみじみそう感じたものです。
♡♡♡
『いやもうホント完璧なんだわ。描写と構成と台詞。人物の性格づけも。見事だよ。写しながら溜息出たもの。こりゃ敵わねえ!』
「フジさん、落ちつきなはれ」
『初めて書いた小説がこの完成度!』
「23歳で芥川賞の最年少やったな」
『他の小説、読まずにコレ。御手本だね』
「せやけど【千日の瑠璃】は独創的や」
『デビューであれ書いたら、そうなるよ』
「なんやピカソを思い出すで」
『あ。似てるかもしんない』
♡♡♡
私自身は、小説家に憧れを抱き、ハウツー物などもけっこう読みました。プロ作家の添削指導を受けたことさえあるのです。
そして今や、オリジナリティ溢れる小説家になる夢は、すっかり消え去っております。
このような私が書き続けるためには、【千日の瑠璃】など御手本が必要です。今でも、少しずつ読み返しております。
♡♡♡
「わたしはどうやろな。ラノベやコミックが好きで、読んどるうちにスッと浮かぶんよ。キャラと場面が。そん中入って観るんや」
『オレは、道術で学んだ経験が土台になってるね。形式は意図的な模倣だよ』
「今回のイラストもな。描いたはええけど、なんか足らへんの。木の陰入れたらどうにか収まったわ。ギリギリですまんな」
『とーんでもない。オレも、なんか足りねえって迷ったの。イラスト観て、ココアの法則と呼吸を繋ぐアイデアが浮かんだよ』
♡♡♡
模倣か創造か。
緻密な論理と直観的な構成。
創作過程を顧みれば、自分への理解が深まるのではないか。そう感じております。
私は、自分自身が何者なのか、理解を深めるために生きているのです。
それは、学問研究の如く、新しい知識を積み重ねる道ではございません。
♡♡♡
「今回は霊魂の故郷やった。眠りの間に行けるんや。うん。確かにあったらええと思う。この忙しない現実の避難所やね」
『オレはホントに、そういう場所があるって感じるわけよ。だから、この感覚をどれだけ深められるかが生きるテーマなのさ』
「本当にあるかどうか、誰にもわかれへん。証明しようがない。せやけど、死んだらハイさようなら言うんは寂しいかもな」
『無批判に信じてるんじゃないのさ。ホントにあるのかって、いつも中真に尋ねるくらいだからね。それで心を澄ませると──』
♡♡♡
いつも考えるのです。
現実とは何か。
昨日のことさえ、薄っすらとしか思い出せません。それどころか、つい先程の出来事だって、次々と消えてしまう世界です。
これのどこが現実なのか──
むしろ、空想しつつ心地よく過ごせる時が、私には現実と感じられたりするのです。
♡♡♡
「わたしの好きな異世界ファンタジーによくある設定や。スキル発動したら、秘密の部屋とか箱庭とかへ行けるんよ」
『あるある。いいね~あれ。自分が望む世界を創れるんだからさ。憧れちゃうよ』
「需要あるからウケるんやろな」
『息苦しい世の中だもんね』
「やってられへんよ」
『現実逃避って批判もあるけどさ』
「それ言うたら、なんでもや」
『たーしかに確かに』
「音楽やらスポーツやらゲームやら」
『みんなで逃げれば怖くない!』
♡♡♡
次回の私物語、自分が何者であるか、そちらの視点から描く想像が閃きました。
人気のない問いかもしれません。
今日の仕事、目前に横たわる諸々で手一杯。あるいは娯楽、雑談、心配事に没頭して。
それもまた人生ですが。
♡♡♡
10月2日午後3時の私物語。
こちらは翌3日午後6時。
お会いできれば嬉しく思います。