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人気者はどこへいくの

「今回の私物語は人気が主人公やったな」
『あはは~楽しんでもらえたかね』
「そうやなぁ。まだAIには書けへんかも」
『うーん。アレGPT、なんかスゴそうだよ』

「目立つと想念浴びる、いうのも納得や」
『見えない世界って気づけないから』
「ひっそり静かに、程々てきどがええんかな」
『それもまぁ、決まってんだけどさ』

商売ビジネス鉄則しくみは商品が先やない、買い手を先に見つける……これは目からウロコやったわ」

『フジミドリの私物語&朔川揺さくかわようイラストも、読み手の皆さんがいらして創れるわけよ』

♡♡♡

こんにちは!
フジミドリです☆

今回の私物語、人気に焦点を当てました。

実は、シーズン3を始める前、人気について書きたいなと構想していたのです。

文体の稽古を兼ね、書き溜めておりました。とは言え、今ひとつしっくりきません。

始まってから、とある作家さんの新作小説が発売されると知りまして……私にとって、用意されたかのような巡り合わせでした。

これはもう、書くしかない──

♡♡♡

「知らんかったんや」
『ポスター見て驚いたよ』
「そら、偶然やないで」
『たーしかに確かに』

「デビュー作から、リアルタイムで読んできたいうとったもんな。どんな作家さんやろ思うて、読ませてもろたことあったけど」

『そうだね。波長が合うというか、テーマも共感するところがあってさ。揺さんは合わなかったみたい……ミドリもそうだったな』

♡♡♡

思い出します。
亡妻ミドリと出逢った頃。

1982年10月──私は新宿でミドリを待っておりました。約束の場所が紀伊国屋。

エスカレーターを上がって2階入口前。

待っていながら読んでいたのは、発売されたばかりの【羊をめぐる冒険】です。

ミドリが来て、いつもの喫茶店へ向かう道すがら、頭は読みかけの物語で一杯でした。

「あなた、続きが気になるでしょ」

喫茶店の窓際席に座って、頼んだ紅茶が来ると、ミドリはそう言いました。

『え。いや……あはは~バレテーラ』
「いいわ。あたし、これ読んでる」

ミドリは、バッグからコンラートローレンツの本を取り出すと、読み始めました──

♡♡♡

「優しい人。わたしなら怒って帰る」
『スビバセン。若かったよなぁ』
「微笑む顔が浮かんどる。不思議や」
『いや、ホント今、笑ってるの』

「フジさん、わたしと話すんとミドリさんが微笑んでくれとるの、同時並行パラレルワールドなんや」

現界こっち霊界あっちは重なってる。今ここにある。中真を意識するとそう感じるのさ』

♡♡♡

彼岸あちら此岸こちら

現実世界へ折り重なる、もう一つ別の世界があって、二つの交錯に翻弄される男女──

村上春樹さんの小説を通して、私が最も惹かれているテーマなのです。

あるはずなのに、いてくれたけれど、失われてしまう。どう足掻いても取り戻せない。

私は呆然ぼーっと立ちすくみ、途方にくれ、切なさで胸が張り裂けてしまいます。

♡♡♡

「大学の図書館、文芸誌の掲載作、そう書いてあったな。ようわからんかったわ」

『スビバセン。詳しく書いちゃうと雰囲気っていうか、バランス崩れるって感じてさ』

「あるな、そういうの。こういうお喋りとちごうて、作品はリズムいうか流れあるから」

『この創作談話で説明すればいいか、みたいな逃げというか、甘えもあってね』

♡♡♡

【街と、その不確かな壁】が【文學界】に掲載されたのは1980年です。私は大学の図書館で読みました。淡い印象が蘇ります。

村上春樹という作家を知ったばかりの頃でしたか。どうしてそんなことを覚えているのでしょう。不思議に感じます。

しばらく経って【世界の終わりとハードボイルドワンダーランド】を読み終えると、淡い印象は明確に決着ついた、そう思ったものです。

♡♡♡

決着けりついとらんかった」
『あとがき通りならね』
「含みのある言い方やな」
『デビュー作のあとがき……ウソ書いた

「そらあかんやないの」
『小気味よーく騙されたよ』
「あとがきも作品なんか」
『今回もスッキリしたけど』

「読み終えてどないや」
『静かな物語と静かな感動』
「なんや枯れた感想やで」
『ああホント、そんな感じ』

♡♡♡

ひと世代ほど年嵩としかさの村上さんがデビューしてから、リアルタイムで追いかけて参りました。

私にとって憧れであり目標であり、また自分の才能を嘆くに至る対象でもございました。

同時代を生きた。

そのような作家と作品に出逢えた僥倖しあわせ、改めてしみじみと感じたものです。

これもまた、前世ぜんせの理解で私が組み込んできた展開ながれなのです。この現象を通し、何をどう理解するか──来世らいせへ繋がります。

♡♡♡

『イラスト、ありがとう』
「今回やネモフィラの花や」
『お蔭で気分よく書けた』
「ほな、よかったわ」

『花言葉を調べたら、可憐ってのは納得、どこでも成功はちょっと意外だったな』

「見た目は可愛らしくても、けっこう丈夫らしいで。厳しい環境でも育つんやて」

『なるほど~あやかりたいもんだ』
「大丈夫やで。可憐はともかく……」
『あはは~照れるな~あはは~』
「喜んどるから、まぁええか」

♡♡♡

お読み頂き、ありがとうございます。

次回の私物語は5月14日午後3時です。
こちらが18日木曜お昼となります。

是非いらして下さい。

ではまた💚



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