水民マガジン 水泳における 武術的アプローチ 卒啄の機
甲野善紀の本を読んでいると よく 「卒啄(そったく)の機」「石火の機」という言葉が出てくる
卒啄というのは 卵の中の雛鳥が 内側から殻を破ろうとすると同時に 親鳥が 外側から殻を破る という事である
石火の機は 石を叩き合わせると同時に火花が散る ということだ
つまり 簡単に言うと 間髪入れず ということになる
水泳の大会でも 大きな会場の大会だと 電光掲示板に 泳いだタイムの他に リアクション・タイム(反応時間)も出てくる
おそらくは スターターのピストルの電子音と選手の足が飛び込み台から飛んで離れる時間が連携していて そのタイムだと思う
フライングだと スターターが判定しなくても 機械的にわかってしまう
大体飛び込み台を使う種目だと0.6なんぼ 背泳ぎだと もう少し速い
以前 選手クラスを担当していたことがあり その中で この反応時間が 非常に速い子どもがいた 速い子どもは 大概 いつも速い
逆に 遅い子どもは たまには速かったりする
卒啄の機 なる言葉を知ったわたしは さっそく 選手の水中練習の後に 卒啄同時練習をやってみた
目をつぶって わたしの「ハッ」と言う合図に反応して 手を叩く
「用意」とかは言わないで ただ 突然「ハッ」と言うだけだ
でっきるかな できないだろうなぁ イェーイ
ところが 趣旨を説明してからやってみると ほとんどの子どもは卒啄タイミングで合わせてくる
中に合わない子どもがいると やたら目立つので みんなに笑われる
だが
笑い事だろうか?
『ハッ』という声を聞きとり 脳が『手を叩け!』という指令を発して 手が動く
これは 随意動作である
ある意味 当たり前の運動の連系である
という事は 他の多くの子どもたち(高校生から小学3年生)は 一瞬にして 卒啄の機の極意をマスターしてしまった事になる
では 卒啄の機 とは何か?
これは 『ハッ』という合図が 脳を通過せず 手を叩く動作に直結する 不随意動作である
何かが目の前に現れたら とっさに目をつぶり 防御の姿勢を取る
ボクシングなどの格闘技だと この 目をつぶる という反射(不随意動作)を 抑制して 反撃に備えるという
不随意動作を抑制して 随意動作のコントロール下におくのは 運動動作の習得過程では 必要な事だ
しかし 不随意動作をコントロールする という次元については 実は今 これを書いていて気づいた
あ そういえば である
水泳において 不随意動作のコントロールは スタートぐらいしか使い道はなさそうだが(あれば紹介します)格闘技なら使いでが満載 というか すでに やられているのかも知れない
井上尚弥なんか やってそう