中国史に ハマった頃 中年からの歴史勉強について
学生時代は 専門が日本古代史だったので 世界史は疎い
本当は それじゃあ いかんのだが
中国の歴史も 部分的には 知っていたが 全体を通しては かなり知識が貧弱だった それは今でも変わらないものの 若い頃よりは 幾分 改善された
40代後半から 50代前半にかけてだと思う
始まりは
『春秋戦国激闘史』来村多加史
を読んだ事
むちゃくちゃ 面白かった
この著者は 関西大出身で 網干善教先生に 師事したとのこと 網干先生は 壁画で有名な 高松塚古墳の発掘に携わった方だ
わたしも 学生時代 横田健一先生のゼミ旅行で 橿原考古博物館を 案内してもらった
天井にとどくサイズの円筒埴輪などが展示してある部屋があって
『これを復元するのに 7年かかりました』
とかいった話しが ぞくぞく飛び出す
要するに 博物館のほとんどを 網干先生が手がけていたのである
わたしが 考古学者は無理 と思ったのは 自分には 根気と執念が 決定的に欠落している と思ったからである
来村多加史先生は 陰陽五行などの中国思想史や 戦争史などに詳しく 少し 他の教授とは 視点が違うように感じる
そうしたところが わたしが尊敬してやまない 有坂隆道先生に 通じるところがあるような気がする
この本『春秋戦国激闘史』を読んでから わたしは 中国史を自分のものにする 方法論を思いついた
中年の頃のわたしにとって 今さら受験勉強的な勉強は 無理!なのである
『春秋戦国激闘史』は通史である
その中から 面白いエピソード 興味深い人物をピックアップして それらを扱った時代小説を読み漁る
時代小説は いきなり その時代の雰囲気の中に ぶち込んでくれる
人物の名前を聞いて(見て) 『あ~ あいつね』と思える
平行して 通史も たまに読む
時代小説の登場人物が どの時代の どの辺りで活躍していたかを マッピングできるからだ
SFでなければ 時代考証を経ているはずなので 作家の視点はあるものの エピソードの信憑性は ある程度あるとみて良い
時代考証の根拠は 根本史料であったり 学説であったり 考古学的な成果であったりする
作家は そうした原典を元に 創造の翼を広げ 物語を紡ぎ出すわけだが 複数の作家の 大体同じ時代の小説であれば エピソードは 必ずかぶる
象を前から描くか 横から描くか 俯瞰して描くか 接近して描くか
そんな違いである
例えば 伍子胥 范蠡 孫武をそれぞれ描くと 同じエピソードが出てくる
原典が同じ 時代が同じだからだ
特に 司馬遷の「史記」は 中国古代史を書くには 避けて通れない
物語が古ければ古いほど 原典になる史料は少ない それでも中国史の史料が とんでもなく昔まで豊富なのは 中国人の 何事でも 書き残しておくという 性癖のおかげだろう
現代の公的文章も改竄してしまう国民性とは 違うのである
具体的に どのような作家の時代小説を読んだのかを記しておこう
『陳舜臣』
まず 中国の時代小説というと 何と言っても この人
特に チンギス・ハーンの時代や 近・現代史も 守備範囲なのが嬉しい
「秘本三国志」は 三国志演義ではなく 正史の三国志(陳寿のやつ)を原典にしているが 独特の歴史観で 五丈原での諸葛孔明と司馬仲達との戦いを 出来レースでは という見方をしている
マルコ・ポーロを扱った ミステリー仕立ての小説もあって 楽しい
陳舜臣は 推理作家でもあった
『宮城谷昌光』
どえらい量の本を出していて どれも けっこう長編だが 恐れることはない
スラッと入っていけて あっという間に読めてしまう 良くも悪しくも
夏王朝とか 殷(失礼 商と呼んだほうがよろしいでしょうか?)王朝とか
とんでもなく古い時代にも切り込む
介子推とか 名前と簡単な事績ぐらいしか残らない人物でも 一冊書いてしまう
その事の正否はともかく わたしのような目的の人間には ありがたい
様々な蘊蓄知識が入り込むのも嬉しい
実は そこが一番重要だったりする
例えば 『北方謙三』みたいなスタイルだと 歴史的知識云々より ストーリー展開でグイグイもっていくので 歴史的な知識は 蓄積しにくい
それが 悪いと言っているのではない
彼が描く人物は 非常に魅力的(ハードボイルド小説の主人公のように)なので そんな奴が 歴史上にいたんだ と興味を持ったら どんどん別書で補完していけば良いのだ
『塚本靑史』
ミステリー仕立てっぽいのもある この人の視点 というか 登場人物への距離の取り方は けっこう好きだ
適度に突き放しているような気がする
宮城谷は 主人公またはその周辺を 好きになり過ぎるとのだと思う
読む方にしてみれば 安心感があって いいというのもあるが
その他 中国の歴史小説を書いておられる方は 多くおられるが 司馬遼太郎の「項羽と劉邦」も 楚漢戦争を俯瞰するには 面白かった
小説ではないけど 通史であったり また より原典に近い 比較的読みやすい作家(学者)として 『安能務』『高島俊男』そして 来田村多加史先生を挙げておこう
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