「見えないばけもの」は「作品の暴力性」という「見えないばけもの」に自覚的だったら、そうとう面白かったと思う。

 先日読んだ「見えない化けもの」について。

 名端がこう言っているように、この話のメインの言及ターゲットは「男社会」である。

(引用元「見えないばけもの」しまなか歩 講談社)

 だが指摘が多く見られるように、描かれている「男社会」にリアリティがない。
 その感覚が正しいかどうかはともかく(問題ではなく)『男社会』に言及することがメインに関わらず、その『男社会』にリアリティを感じなければ話に入り込めない。
 かと言って、「ざまあ」のような「藁人形と百も承知で殴ってスカッとする話」かというとそういう話にもなっていない。

「ちょっと面白さがわからないな」
 最初はそう思ったが、少し経って「このリアリティのなさにこそ、この話のポテンシャルがあるのではないか」と思いついた。

・この話に描かれる『男社会』になぜリアリティを感じないか。
・ここで『男社会』とされているものは何なのか。
・自分がこの話の肝はここではないか、と思った箇所
などを合わせて話したい。

◆この話が「『現実の男社会』を描けていない」と感じる理由

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