【ENNEAD(エネアド)感想】 S2第60話まで。ホルスのアヌビスの嫌いかたが好きである。
続きが溜まったので読みに行ったら、「エネアド」が超絶面白いことになっていた。
ホルスがイシスの神殿にかくまったセトを、オシリスによって呪いの力を与えられたアヌビスが連れさらいに来る。
状況としてはこうなのだが、アヌビスは自我がない、セトはひたすらアヌビスを気遣う、ホルスはひたらすらセトのことしか考えていない。
誰一人誰とも意思の疎通が出来ない(しようとしない)
シーズン2に入ってからのホルスのはっちゃけぶりは凄い。こんなに面白い奴だとは思わなかった。
シーズン1の時に「いい奴だが、真面目な常識人という感じで余り面白くないな」と思っていた自分を後ろから殴り倒したい。
自分がホルスを面白いと思うのは、「セトへの愛情」よりも「アヌビスの嫌いかた」だ。
セトの愛情を独占しているアヌビスに嫉妬しているのもあるが、本筋はそこではないのではないか。
前に書いたように、ホルスはセトのことがなくともアヌビスが嫌い……というより、ホルスはアヌビスに対して限りなく嫌いに近い無関心しか持っていないように見える。
アヌビスは、セトの愛情が余りに強かったために大人(神)になれない呪いをかけられた上に、自分はセトの子ではなく、オシリスとネフティスの間の不義の子だと知る。さらに実の父親であるオシリスにも呪いをかけられ利用されるという、悲惨な身の上だ。
だがホルスは、アヌビスの不幸に対して同情も共感も一切示さない。
ホルスがアヌビスに対して表すのは、終始一貫して「こいつを必ず排除しなければいけない」という強固な意思だけだ。
アヌビスはオシリスに呪われ、正気を失ってセトをさらうための道具にされている。
そうわかっているはずなのに、そこには特に言及せず「獣だからか」「あの時殺しておくべき(だった)」と言っている。
しかもセトに聞こえないようにぼそっと。
セトに声をかけられたら、何事もなかったかのようにパッと手を放す。
実の父親に呪われてこういう状態になっているアヌビスに「叔父様にとって害悪」以外は「へえ」みたいな反応しか見せない。
「ざまあみろ」のほうがまだしも人間味がある。
性愛がテーマに含まれている作品で、オシリスのような愛情から狂気じみた振る舞いをするキャラはよく出てくる。
しかしホルスは、セトへの愛情よりもアヌビスに対する冷たさのほうが狂気を感じる。
ホルスのアヌビスに対する冷たい無関心が凄く好きなので、嫉妬を全面に押し出したり愛憎を絡めたりせずに、ずっとこのままの関係でいて欲しい。(アヌビスも大して気にしていなさそうだし)