「Desolito: Citizen」(拡張)のメインメカニクスのゲームデザイン
ゲームの簡単な紹介
こんにちは。arsenicと申します。普段は、このnoteで毎週土曜日に記事を投稿したり、ゲームマーケットで自身がデザインしたゲームを発表したり、というようなことをしています。
このたび、機会がありまして、Sui Works様の方で、「Desolito」(デソリト)というゲームデザインを担当させていただきました。
公開現在、下記ページでKickstater中です!
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このKickstaterでは、メインのゲームに合わせて、拡張セットも込みになっているリワードが選択可能になっています。
この記事では、その拡張セットがどのような考えによってデザインされているのか、そして、それがどのようなメカニクスを採用しているのか、といったことを記載しています。
また、メインゲームの詳細は、先日公開されたSui Works様の記事が正確かつ、わかりやすいので、そちらを参考にしていただければ幸いです。
注意
あくまでゲームデザインの視点でみた話になります。
開発中のものであり、細かな仕様などが変更される可能性があります。
拡張セットの意義
基本ゲームのデザインに関しては、以下の記事で紹介しています。
このように基本ゲームが固まってきたのですが、多くの方々にテストプレイをしていただいていく中で、色々なことがわかってきました。
その中で、一番重要な気付きであったのは、想像以上に、このゲームを簡単だと思うか、難しいと思うかが人によって異なる、ということです。
基本ゲームにあるタイル配置は、タイルに書かれている路面電車の線路と個人ボードの外縁部によって区切られている範囲(これをゲームではエリアと呼んでいます)に、なるべく多くのアイコンを入れ、かつ、なるべく1種類のみにすると多くの勝利点が得られる、という構造になっています。
これの難易度が人によって異なるように感じられるようです。
もちろん、これは、多くのゲームでそうだと思いますし、空間把握に近い能力を求められるタイル配置ゲームでは、そもそも、個人差が比較的でやすいといった特徴があるのかもしれません。
本作では、このような特徴に対してのアプローチの一つとして、拡張セットを用意することができました。
基本ゲームは、あくまでも、タイル配置ゲームをあまりプレイしたことがない方でも、それらが得意な方でもプレイでき、面白く感じられるゲームという立ち位置で調整し、その中で歯ごたえがなくなってきた、と感じられた時に、拡張セットを加えることで、ゲームの幅を広げ、複雑性を上げるためのオプションという位置付けになります。
つまり、基本ゲームはなるべくシンプルで理解しやすく、多くの方々が満足できるようなラインでまとめる一方で、パズルゲームが得意だったり、本作を複数回プレイしていただけると考えた場合に、もう少しだけ複雑性の高いゲームを用意するという意味で、拡張セットが存在します。
本作の場合、そもそも、基本ゲームが拡張しやすい構造になっているのですが、単純になんでも実装すればよいというわけではありません。
拡張セットをデザインする際には、以下のようなことを主に考えました。
第一に、基本ゲームの少し特殊な構造に合致するデザインであることです。
基本セットの紹介でも取り上げましたが、主にプレイヤー共通の場が存在しない、という特徴から、一般的なゲームで使用されているメカニクスの多くをそのまま実装してしまうと、歪みが生じやすい構造になっています。
そのため、基本の構造をなるべく崩さないことをベースに考えました。
第二に、ルールやプレイが軽量である現状を維持したい、というものです。
基本ゲームにおいて、サイズ感やプレイ感に対し、ルール量が少なく、プレイ時間が短いというのが、重要な特徴の一つであると思っています。
拡張セットを導入することによって、そのような特徴が欠けるようであれば、本末転倒なので、ルール量や準備の手間などがなるべくかからないようなデザインにまとめる必要があると考えました。
第三に、ゲームの幅を広げ、複雑性を上げることです。
上述したように、基本ゲームのベースの構造は一定的で、それが利点にも繋がっているのですが、このようなゲームに慣れた方や、複数回プレイされる方にとっては、物足りなく感じる可能性がありました。
そこで、各ゲームにおいて、基本ゲームだけでは味わえないような幅を感じさせたい、ということが目標になりました。
拡張セットの内容
そして、デザインされた拡張セットのルールは、「Desolito: Citizen」という名前からもわかるように、Citizen、つまり、『市民』という要素を付け加える、というものです。
これは木駒で表現された要素で、各ラウンドのドラフトの際、タイルとのセットで場に出ることになります。
つまり、各タイルに対して、各市民駒が付いてくるような形です。ここだけを見れば、「カスカディア」などに代表されるような、2レイヤーの要素のピックに近いと言えます。
拡張セットでは、各ドラフトにおいて、タイルの価値だけではなく、市民の価値も加味して、その相対でどれをピックするのか選ぶ必要がある、ということになります。
ここで取得した市民は、それぞれの固有の効果を持ちます。
たとえば、追加で移動することができるようになったり、ピック・設置した後のタイルに干渉したり、取得数によって勝利点を得たり。様々な幅を持たせて、それを市民という要素にまとめ上げるような形です。
市民は各ゲームに対して、4種類使用します。
この効果の組み合わせは、それぞれの特徴に合わせて、用意させていただく予定で、それを選択することで、ある程度の難易度やテーマ性のまとまりを感じられる組み合わせでプレイできるようになる予定です。
つまり、市民の効果によって、各ゲームにおける幅が生まれ、それぞれのドラフトにおいて、それを加味したピックをする必要が生まれるので、複雑性が上がる、というような実装になっています。
一方で、逆に言えば、基本ゲームとの差は、その市民の分だけなので、インストする必要があるのは、その4種類の効果だけですし、ゲームのプレイ時間も大きくは変わりません。
また、ドラフトにおいて、要素が増えるので、複雑性自体は上がりますが、多くの市民の効果は、上述のようにタイル配置を楽にする効果が多いため、組み合わせによってはむしろ、タイル配置に関しての余裕が生まれるようなものもあります。
よって、市民の効果の組み合わせ次第ではありますが、基本ゲームが苦しいと感じられるプレイヤーにとっても、その閉塞感を緩和するために使用することができる拡張セットになっています。
拡張セットのまとめ
その名の通り、『市民』という効果を持った駒を、タイルのドラフトに追加のレイヤーとして加えることで、複雑性を上げ、各ゲームの幅を広げるような拡張セットになっております。
それを追加すればよいだけなので、インストや準備の量、プレイ時間なども大きく変わることなく、プレイできる拡張セットとなっています。
ドラフトらしさが上昇するような効果も実装予定ですので、より、一般的なドラフトのやり取りを好むプレイヤーにも向くものにもなる予定です。
もちろん、もっとシンプルなゲームが楽しみたい場合や、タイル配置に集中したゲームを行いたい場合には、拡張セットなしでも、十分にお楽しみいただけるよう、調整しております。
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