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昭和天皇の御陵にお参りされた眞子内親王殿下の異例(令和3年10月12日、火曜日)


眞子内親王殿下の御結婚はあまりにも異例続きである。


報道によれば、殿下は今日、雨の中、昭和天皇、香淳皇后がそれぞれ鎮まる武蔵野陵、武蔵野東陵にお参りになり、御結婚の報告をされた。宮内庁によると、皇室の慣例によらず、ご本人の「希望」によるものとされる。


皇室には独自の冠婚葬祭の定めがある。殿下のこれからの幸せを祈りたいのは山々だが、今回の御結婚は皇室が大切にしてきた伝統からほとんど逸脱している。


皇室の婚姻に関する儀礼を集大成した皇室親族令(明治43年)の附式には、

1、納采の儀

2、告期の儀

3、賢所皇霊殿神殿に謁するの儀

4、参内朝見の儀

5、皇太后に朝見の儀

6、内親王入第の儀

と続くことになっている。


むろん戦後、日本国憲法施行とともに皇室令は全廃されたし、したがって皇室親族令も廃止された。しかし、このとき宮内府長官官房文書課長名による依命通牒が発せられ、「從前の規定が廢止となり、新らしい規定ができていないものは、從前の例に準じて、事務を處理すること」(第3項)とされている。


また、この依命通牒について「廃止の手続きはとっておりません」という宮尾盤次長による平成3年4月25日参院内閣委員会での答弁からすると、依命通牒第3項はいまなお効力があり、廃止された皇室親族令に代わる新しい規定がない今日、内親王の婚姻はこれまでと同様、親族令附式に準じて行われるべきものと考えられる。


しかしすでに、今回、「納采の儀等は行われない」と伝えられている。依命通牒は守られず、したがって、皇室親族令附式は無視されている。


そして今日の先帝先后の山陵に謁するの儀である。


親族令附式では、先帝先后の山陵に謁するの儀は、天皇、皇太子の御結婚の場合に行われるべきもので、親王、内親王の場合は行われない。天皇、皇太子の場合も、宮中三殿での儀礼その他すべてが終わったあと、締め括りとして行われ、しかも神宮神武天皇山陵並びに先帝先后の山陵に謁するの儀としてセットで行われることとされている。


附式に予定される皇祖皇宗、天神地祇へのご挨拶がない一方で、附式では予定されていない内親王の儀礼が行われることは異例中の異例といわねばならない。内親王の婚姻としてこれは許されるのか。


殿下の昭和天皇、香淳皇后へのお思いはよくよく理解できる。けれども、皇室がもっとも大切にしてきた「およそ禁中の作法は神事を先にし、他事を後にす」(禁秘抄)という祭祀第一主義が蔑ろにされてはいるのではないかとの疑いがどうしても晴れない。


天皇・皇室の祈りは国と民のための、絶対他者のための祈りであり、私的な祈りではないはずである。内親王は婚姻によって皇籍を離れられるにしても、離れ方に問題があり過ぎるのではないか。これでは皇室の歴史と伝統を否定することになりかねない。


ご挨拶を受けられた昭和天皇、香淳皇后はどのように思われるのだろうか。挨拶のない皇祖皇宗はどうだろうか。逆に、異例を正すため、蛮勇を振るって、殿下に献言するような側近はいないのだろうか。


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