詩 ・ 砂時計と牛


なにかをひっくり返す
そのためにあるのだ牛の角は

牛とはなんだろう なんにせよ
決めたのだ
その角でひっくり返すのなら
この砂時計だと

それをだれかがひっくり返さなければ
せかいは蜜のように
こごって
饐えていく

またあの夢かというように
半透明に
にごっていく

ほんらいならその役がわたしなのだ

牛はそんなわたしを
なにもかもしっているような
なにひとつ興味がないような
すずしい目で
見ている

もうずいぶん前に
砂時計はこわれてしまったのに
牛は気づいているのか

隠し通すために
その角のまえに
わたしは佇たなければならない

腰もくびれさせず
さらさらと口ずさみもせず
わたしは
命乞いもしないで

曇った天地の
あいだは
なお曇っているのだ




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