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「水曜日のコロッケそば」第九夜/田舎そば かさい・中野

今回は地元。中野駅の名物店「かさい」です。あの立地、なかなか場代が高そうなんですが、そこでも変わらぬ人気店として営業している、地元民には頼もしいお店。しかし、今回のレポート、一筋縄ではいかなかったのです・・・。

⚫︎田舎そば かさい 中野 

地元でありながら一度も紹介してこなかった。と、いうのも、このテキストを読んだ人の多くが「コロッケそば食べに、わざわざ中野までは行かないよ」と思われるからだ。実は中野という街には、雰囲気の良い立ち食いそばが何軒もある。そのほとんどが、チェーンではなく、ローカルに根ざした地元店だ。南口には外見も魅力的な「中野屋」があり、北口には老舗「かさい」。ZEROホール方面に向かえば「立浪」という、あなどれない個人経営の立ち食いそばやがある。サンモールに入れば、チェーン店「梅もと」もあるし、中野はちょっとした立ち食いそば天国だ。紹介しないでおくのももったいないとは思っていたけど、ある理由が見つかったので、ついに封印を解くことにした。満を持して、おなじみ感のある「かさい」を紹介したい。

JR中野駅北口を出てロータリーごしに見える黄色いテント。中野商店街、サンモールの入り口にあるのが「かさい」だ。比較的、混んでいることが多い人気店。お隣の大判焼きのお店「れふ亭」と並んで、食べたことはなくてもその佇まいを記憶にとどめている人は多いだろう。目立つ黄色いテントに書かれた「田舎そば」というところが気になるポイント。確かに、垢抜けない中野の街並みの中でも、とりわけあのテントは垢抜けない。その期待感にたがわず、食券販売機もなく、カウンター内のおばちゃんに口頭で注文、出て来た丼と交換で、代金を払う昔ながらのアナクロな仕組みだ。貼り出されたメニューを見ればわかるとおり、ここはベースに「280円 田舎そば」があり、そこに各自が好みで乗せ物を加えていく。厳密に言えば、この店には「かき揚げそば」も「コロッケそば」も存在しないのだ。

店にたどり着いた時は、カウンターはいっぱいで、待ち人一人の順番待ち。5分ほど並んで、空いたスペースに割り込んで行く。さて、それでは注文を・・・と、思ったらメニュー表の「コロッケ」の上に「品切れ」の容器が・・・。完全な空振りだ。どうしようか迷ったが、せっかくなのであじ天そば(立ち食いそばに、あじ天なんて珍しいし)を注文。コロッケのレビューは後日にまわすとして、本日は、そばそのものを楽しもう。

田舎そばというから、乱切りの短いぼそぼそした自家製のものでも出てくるのかと思ったんだけど、そういうわけでもない。製麺所の箱から取り出された袋入りのめんは、しかし、確かに太い。細うどん?というくらいに太い。ただし、色はそばの色だ。黒いツブツブも確認できる。これはかなり珍しいんじゃないか?これが田舎そばか?すすってみると、やわらかくつるっとしている。そばの風味など期待していないが、これは「茶色いうどん」と言っていいのではないか?思い描いていた「田舎」とはちょっと差がある。予想よりも「食べやすい、ということだ。刻み葱もチェーン店にありがちな乱暴さはなく、細かく綺麗に刻まれているあたりも印象が良い。つゆは、黒いが特別辛いわけでもない。ほんのりかつおの風味があり、いいつゆだ。むしろ、洗練されてるじゃないか!あじ天は、丼の半分以上を覆うレベルでデカい。立ち食いの他店の例に漏れず、しんなりしちゃってるが「あじ」が肉厚。つゆに浸せば衣がふわふわになってくる。なんとなく、家で作った天ぷらの雰囲気だ。かき揚げは全然からりとしていません。むしろ「田舎天ぷら」っぽさが強いかもしれない。カウンターの上には「生姜の風味をお試し下さい。ひと味おいしくなります。風邪の予防に、血液もサラサラになります。」と書かれ、おろし生姜の瓶がおかれている。自分でも関西だしでうどん、きしめんを食べるときは生姜を入れているけど、なるほど、汁の甘さもほどよく引き締めてくれるので、関東風のつゆとの相性も悪くない。味がだいぶ変わるので、個人的には半ば食べ進んでから、後半戦に投入することをおすすめしたい。

なにはともあれ、「あじ天そば」はことのほか美味しく、「エサ」をかき込む気でいた気分は良い意味で裏ぎられたのだった。さて、近日中に「コロッケそば」を食べるのだと心に誓って、その日は店を出た。

さて、それから数日ぶりの来店だ。今回は二度目なので、前回のようなことにならぬよう、遠目にメニュー表をチェックする。やった、本日はちゃんとある!!そば自体の説明は、すでに書いた通り。太め、角断面のうどんのようなそばだ。改めてコロッケを見てみる。大きさは控えめだが、厚みがある。かじってみると、もちえろん冷凍コロッケだが、他店よりコーンが目立つかな?といった程度。冷凍コロッケとしては中の上。コロッケそばには十分なクオリティだ。問題は、そばとの相性だ。この店の個性である、生姜と、ちぐはぐな感じがする。せっかくの、生姜の香りもコロッケのがしっとした迫力に気圧される。非常にもったいないのだ。これは、立ち食いそばの上手さが標準点以上なゆえに感じてしまう「贅沢な悩み」というやつだ。値段もひかえめで、食べ応えがあり、生姜風味も楽しめるおすすめの立ち食いそばには違いないのに・・・。

オチのような形になってしまって申し訳ないが、もし純粋に「美味い立ち食いそば」が食べたいのであれば、これはもう間違いなく「あじ天そば」にすべきである。トッピング2品めからは、10円引きだ。いっそ、卵も50縁で追加してしまえば、たぶんさらにいい。そのくらい、あじ天は美味しかったのだ。もちろん、かき揚げだって美味いかもしれない。未知の魅力がある。コロッケに関して言えば「よーくわかった」から、こんなことが書けるわけだけど・・・。

住所/東京都中野区中野5-63-3
アクセス/中野駅北口より徒歩30秒
TEL/03-5380-4030
営業時間/7時〜22時
定休日/無

コロッケそば:360円

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