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デフバレー男子日本代表ブロック講習 第2回(3日目)後半

前回は、1泊2日(半日×2)の「ブロックのベース作り」以後初めての練習試合、実戦のゲームの中での「ブロックとディグの関係作り」がどのように進んでいったについて紹介しました。そこでは「できそうなことに意識を集中させて、それ以外を棚上げする」(課題の焦点を絞る)ことが指導者としての重要な役目でした。

今回は、特にミドルブロッカー(MB)の進化と宿舎でのミーティングについて紹介したいと思います。

MBのパフォーマンス

今回はMBが2人しか来ていなくて、さらにその1人は前回の合宿に参加しておらず、ブロック講習も受けていなかったので、最初の方は結構バタバタしましたが、後衛で交替している間にポイントを確認しただけで、とてもいい動きをしてくれるようになりました。

彼に「スプリットステップから動くことはできる?」と聞いたら「できる」とのことだったので、実際に「スプリットステップから3つの方向に動く」をやってもらって確認しました。さらに「サインに合わせて3方向に動く」詳しくはこちら)もやってもらったら、直ぐつかんでもらえました。なかなかサイドアウトが取れず後衛の時間が長かったとはいえ、1回の交替の間にそれだけやれたのは驚きでした。

その後「慌ててサイドステップ」をしてしまうこともありましたが、「慌てなければ、スイングブロックでとても上手く追いかけられる」ようになり、素晴らしいパフォーマンスを示してくれました。「慌てなければ(むしろ、ゆっくり反応すれば大丈夫と思っていれば)サイドステップとか無駄なことをせずに済み、最短の時間で移動することができる」ということです。

「慌てなければ間に合う(というかベストの行動を取れる)」のです。

もう1人のミドルは前回からかなりいい動きをしており、「遅れたと思うようなタイミングから、よく追いかけて有効なブロックを作る」というプレーが何本も出て、確実に「できること」をつかんでくれているなと思いました。

最後の方はチーム全体としてとてもしつこくブロックに跳べるようになり、「相手がブロックを振ろうトスを速くして、ミスで終わる」という場面が何回も出現していました。これこそが「リードブロックの真骨頂」なんですね。相手にもよるとは言え、ここまでやれるようになるとは、本当に凄い人たちだと思います。

宿舎でのミーティング

ミーティングでも動画のワンシーンを見て、「ライト攻撃に対してブロックの位置取りはどうだったか」を確認してもらいましたが、レフトブロッカーとミドルとディガーとで見解が違うことが分かり、「そこを擦り合わせるために時間をかけて行くことが大事」「正解は相手次第だし、チームが決めること」という話をすることができました。

正解は相手次第

相手次第というのは、例えば相手のライト攻撃が「ストレートの強打が決めてで、それに対してディグで対応するのは難しい」という場合、「ライトからのストレートコースを確実に塞ぐ」のが最優先で、それに2枚揃えたいということになると、「それができる範囲でクイックに準備する」べきでしょう。または、「ライトの速いトスでブロックが1枚になるところをクロスに決める」のが得意なチームに勝ちたいならば、サイドブロッカーはクロスに基準を作って、ミドルブロッカーが間を詰めやすいようにする方がいいでしょう。

よって、本番の大会で勝ちたい相手がどんなバレーをしてくるのか?決め手は何か?によって「どんな対応の仕方がベストか」は変わってくるということです。ただし、「自分たちの身体能力でどこまでのことができるのか?」をまずはリードブロックで納得いくまで追求して欲しいということを伝えました。

◆遅れそうで有効なブロック
◆しつこく跳んで有効なブロック

この2つは特によかったところとして説明しました。
◆クイック・センターバックに2枚以上
◆ブロックの上を通る攻撃

この2つは今後つかんでもらいたい課題。

攻撃「アタッカーが呼んだら上げる」の代わりに
セッターは「どんなところからでも、どこにでも上げる」ことができ、「普通そこからは上げないと思われるところにトスを上げる」のが強みでした。チームとしてもそれ(「トリッキーさ」と言っていました)を活かしたいという共通認識がありましたが、いろいろと「間に合わない」という現状でした。

「間に合わない」の一つに「アタッカーが準備できていない」ということもあり、そういう場合に多くの(健常者の)チームでは「アタッカーが呼んだところに上げる」ということをやるけれど、このチームではできないのでその代わりにどうしますか?という問いかけをしました。

「アタッカーが呼ぶ代わりに手を挙げる」とか「セッターがそれを目で確認して選択できるように、パスを高くして余裕を作る」という答もありましたが、提案したのは「確認しなくても済む方法」でした。

それは「全てのアタッカーが十分な助走を取るために開いて用意できる」というやり方で、「パスを高くして余裕を作る」のは同じなのですが、その目的が違うので、「どのくらいの高さにすればいいか」の答も違ってきます。さらに重要なのは「アタッカーは必ず十分な助走を取って攻撃参加する」のがチームのルールとなり、それをしなかったら「サボり」になるということです。誰がコートに入っても「こういう場面では必ずこう行動する」という行動指針(プレー指針)が重要です。それがあることによってチームのパフォーマンスを最大化することができるのです。

できそうなこと→できるつもりでやってみる⇒自分たちのできることを知る
最後にまとめとして「自分たちのできること知る」ことが重要だという話をしました。
これからどんなことを構築していかなければならないか
それにはどんな手間がかかるか
それをイメージして見通しを持ってもらいたい、覚悟を決めてもらいたい

それさえできれば、後は十分自分たちで作り上げていけるチームだということを伝えられたと思います。

ブロック講習第2回を終えて

こんな動きができるという「ブロックのベース作り」を、ここからは「実戦に活かしていく」段階がとても重要で、できそうなことに課題を絞っていくことによって成功体験を積んでいき「諦めず、慌てずに行けば、結構間に合う」「リードブロックができる」「リードで頑張りたい」と思ってもらえるかどうかが分かれ道なんですね。

本当にやりたい放題やらせていただき、こんなに真剣に取り組んでもらえて、聞いてもらえてということは経験したことがないので、夢のような気分でした。みんな意識が高いし、前回練習で見た時よりも、ゲームだと、失礼ですが思ったより能力が高いなと感じました。どんな場面でも、少しでも有効なことをしようというのが見えるんですよね。こんな素晴らしいチームをお手伝いできるのは何よりの幸せな時間でした。

本当に素敵なチームなので、1人でも多くの人に知っていただき、みんなで応援していきたい、そうなることを願うばかりです。


日本デフバレー協会のフェイスブック2024年12月22日の記事より


デフバレー協会のフェイスブック2024年12月22日の記事に21,22日の練習試合の様子が載っています。プレー写真がいずれも「ブロック」なのが嬉しいですね。

▶︎布村忠弘のプロフィール

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バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。