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ゲームで学び、ゲームを学ぶ(12)-「3対3」のゲーム①特徴と課題
前回までの記事では「1対1」「2対2」における戦術学習に焦点を当て、具体的な方法論や選手に意識させたい点や、指導者が観察したい点などを説明してきました。また、「1本目返球」「2本目以内返球」「3本目以内返球」など「返球条件」の違いによって、学習できる内容が変わっていく、増えていくことを説明してきました。
これは、「ゲームで学び、ゲームを学ぶ」シリーズの第2回、第3回で解説したゲーム・ラリーの要素に加えて、様々なゲーム・ラリーの条件を設定することによって、学習課題が変化することを意味しているものです。戦術学習を効果的に取り入れるためには学習の条件設定によって、学びの場をどうデザインするかが、大きな鍵を握っています。
これまでの連載を踏まえつつ、「3対3」のゲームではどのようなものが課題になるのかを、この「3対3」のシリーズでは説明していきます。
「3対3」の特徴
選択的な判断が求められるプレーが増える
コートの大きさを変えることなく「2対2」から「3対3」に選手の数を増やした場合、特に初級者段階で顕著ですが、ボールが急につながらなくなること(ボールが落ちやすくなること)があります。これは、単純にコート上の選手の数が増えることによって、1人がカバーする範囲が狭くなるから簡単になることはないということを示しています。むしろ、人数が増えることで、1本目を誰がとるのか、誰につなぐのか、2本目に誰がとるのか、など選択的な要素が増えること等が難しくなる主な原因として挙げられます。
この「2対2」から「3対3」へ移行した際の「難しさ」が何に起因するのかを理解しておくことは、戦術学習を進めていくにあたり、非常に重要な部分です。同時に、その「難しさ」の部分が極めて重要な「学習課題」と捉えています。なお、3人以上に選手の人数が増えたとしても、その「難しさ」をベースに選択肢が増えていくだけであり、応用していくに過ぎません。そのため「2対2」と「3対3」で学べる内容が異なることを、指導者が理解しておくことは大切なことです。
返球までに要する組み合わせ
2対2の場合
例えば「2対2」の場合、返球条件が最大の3本以内返球であっても、返球までに要する組み合わせは「6通り」しかありません(表1)。
※A選手、B選手の2人とした場合、1本目返球はA選手もしくはB選手の2通りで、2本目返球はA選手→B選手もしくはその逆の2通りで、3本目返球はA選手→B選手→A選手もしくはその逆の2通りで、合計6通りです。
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相手から返球される1本目をどちらがプレーするのかという「2つ」の選択肢がありますが(AもしくはB)、2本目返球でも3本目返球でも、1本目のプレー以降は誰がプレーするのか決まっています。
つまり、選手は1本目の選択的なプレー(どちらがとるか)をクリアできれば、それ以降は自動的に誰がプレーすべきかが決まるので、連続で「誰につなぐ」「誰がつなぐ」を判断する必要はありません。このプレーの「必然性」は初心者段階の選手にとっては、判断することが少なく、認知的な負荷の観点からは易しいものであることはこれまでの連載で触れてきた部分です。
3対3の場合
一方で、「3対3」の場合では、1本目から「2対2」とは異なり、返球条件が最大の3本以内返球であれば、返球までに要する組み合わせは「21通り」あります(表2)。また、返球条件によって、返球までに要する組み合わせは異なってきます。
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まず、1本目返球の場合は「3通り」です。「3対3」でも1本目返球のゲームは成立しますが、あまり活用しないので、ここでは説明を省略します。
次に、2本目返球の場合、相手からの返球に対処する1本目は、3人のうち誰がプレーするのかという「3つ」の選択肢があり、加えて、1本目にプレーした選手以外のどちらにつなぐかという「2つ」の選択肢があるので「6通り」あります。したがって、1本目返球の「3通り」を合計すると、2本目以内返球における返球までの組み合わせは「9通り」になります。ただし、2本目以内返球であれば、2本目のプレーで返球が義務なので、その後の選択肢はありません。そのため「つなぎ」を選択する場面も1回で、なおかつ「9通り」の組み合わせ数からも、初心者段階でも比較的導入しやすいものであり、「3対3」を導入していく上では効果的な方法です。
さらに、3本目返球の場合、2本目返球の組み合わせ「6通り」に加えて、3本目は2本目にプレーした選手以外の2人のうちどちらかがプレーするという「2つ」の選択肢があり、組み合わせは「12通り」になります。つまり、2本目以内返球の「9通り」に、3本目返球の「12通り」を加えて、3本以内返球では「21通り」になります。返球までに要する組み合わせの数に加えて、「つなぐ」回数も2回出てくることもあり、初心者段階ではなかなかラリーの発生が期待できません。味方からの不意なボールも含めて、どうにか処理できる程度のボール操作技能がある程度必要になってくる条件です。このように、選手の数、返球条件が増えることによって、2本目以降の選択的プレーが増えることは初心者段階の選手にとっては、判断負荷の観点からは難しいものです。
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-------ここから、8月30日追記・編集-------
「3対3」における工夫
前述の部分では、数学的な観点から単純に「組み合わせ」(選択肢の数)に触れてきました。選択肢の数が増えることでの難しさを前提にすると、逆に選択的な判断が減るようにするような工夫をすることで難易度が下がることもあります。例えば、具体的には2本目をプレーする人を決めることです。2本目をプレーする人を決めれば、1本目は3人のうち2人のどちらかがプレーし、2本目は決まっており、3本目は他の2人のどちらかになります。選択肢としては、組み合わせは4通りしかありません。
ご承知の通り、このような考え方は一般的には「セッター」というポジションを置くことにつながります。ポジションを決めるということは、単に専門的なプレーヤーという側面ではなく、選択肢の数を減らすことの手段にもなっています。
ちなみに、1本目を必ず1人でプレーするようにすれば、選択肢として1本目は1人で、2本目は2人で、3本目は2人の4通りになります。また、3本目を必ずプレーする人を決めても同じように4通りになります。ただし、プレーが上手くいくかは考慮していないので、事前の約束事が達成できない(2本目にプレーさせたい人がプレーできない)場合は、逆にプレーがつながらなくなる可能性もあります。あまりにも事前の約束事にこだわり過ぎていると、逆にボールが落としてしまうことになります。
これらのことを配慮しながら、選手が自ら前述のような工夫を発見できるような環境を整えてあげることが大切だと思います。例えば、こちらからポジションを与えるのではなく、選手が自らボールがつながる工夫を話し合い・試行錯誤する中で2本目をプレーする人を決めようとしていく過程を大切にすることをお勧めします。そのような過程で選手はボールをつなぐことの楽しさ、ポジションが果たす意味、約束事がうまくいかない場合もあること等々のバレーボールには欠かせないエッセンスを経験を通して学んでいくと思います。
それらを踏まえつつ、次回はボール操作技能が低い選手にとって「2対2」から「3対3」になったことで、選手の主観的な立場になった時に1本目・2本目・3本目がそれぞれどのような難しさを持つのかを説明します。特に「2対2」と大きく異なる部分で、返球条件に関わらず、1本目のプレー以降は誰がプレーするのか決まっていないことが挙げられ、その部分が難しくなる大きな原因を説明し、具体的なプレーを挙げながら説明していきます。
次の記事に続く
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