『かがみの孤城』を読んで
ずっと読みたいと思っていた作品がついに文庫化された。地方に住む私が近所の書店で発売日にその本を手にする事はできず、数日遅れての購入になった。手にするまで時間がかかったのに対し、本を購入してから読了までの時間はわずか数時間。一気に読んでしまった。
疲れた。
久しぶりに本を読んで疲れたと感じた。
心は傷ついたし、体は本当にお城の中を走り回った後のように重たい。この本を読んでいる間、私は本の中にいた。
読後に疲れたと感じるのは、私が面白い本を読んだ時の感覚だ。作品にのめり込んで、自分もその場にいるかのように読み進めるため疲労感が残る。
事前に作品の感想を読んだ時『中学生の時にこの本に出会いたかった』という感想がいくつかあった。でも私はそう思えない。中学生の頃にこの本を手にしていたとしても、おそらく最後まで読めなかった。
大人になった今でも、ぎゅっと心を押し潰されるような痛みを思い出しながら読んだこの物語を、あの当時の私が読み進めることはできなかったと思う。読んだのが今だったからこそ最後まで読み終え、苦しみの中に希望を見出せた。
世界は広い、そしてそこにはたくさんの人がいる。大人になれば、子どもの頃に感じていた苦しみなんて、大した事ないと思えるようになる。私はそう考えていた。でもかがみの孤城を読んで、その考えを改めようと思った。
大人になり経験を重ねれば、起こりうる問題を察知できるようになる。たとえ問題が起こってしまっても、受け流したり距離を置くことである程度の苦しみを回避できるようになる。
でももし、それをせず素直に真っ向からその問題を受け止めてしまったら・・・
子どもの頃の悩みをちっぽけな物だと思えるのは、過去を振り返っている立場だからこその意見。
人の経験は、今と過去にしかない。大人から「今だけだから大丈夫だよ」なんて、言われたところで納得も理解もできない。必要なのは子どもの「今」に寄り添ってくれる人。
かがみの孤城で出会った7人が、現実の世界で再会できるかどうかはわからない。でもそれぞれが時に闘いながら、逃げながら今を積み重ねて、生きていくのだ。
苦しみ、驚き、そして涙と感動を与えてくれたこの作品に出会えてよかった。重いテーマではあるけれど、最後まで読んだ人には必ず心の中に何かを残してくれる、素晴らしい作品でした。
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