【選挙徘徊記】2024年 東京都知事選 感想
1. はじめに
6月20日告示/7月7日投開票で東京都知事選挙が行われた。
今回の選挙は一般的に「3選を目指す小池百合子都知事に2〜3名の『主要候補』らが挑む構図」と評されることが多いようだが、実際のところは過去最高の56名が立候補し十人十色の戦いを繰り広げたという、その背景はともかくとして大変賑やかな構図であった。
特に私としては大半のマスコミが取り上げない「独立候補」、俗に言う「泡沫候補」が如何なる選挙戦を展開するのかについて、非常に興味深く見ていたのである。
本稿では、私が6月21日から23日にかけて各候補者の選挙運動を見物した際の感想を中心として述べる。
なお、見物した期間が告示日の翌日からの3日間という選挙戦の序盤であるため、私の見物以降に各候補者が選挙の戦略や戦術を変えた可能性がある点については留意されたい。
2. 都知事選を彩る「特異な理念」 ~「保守」思想と陰謀論~
2.1. 田母神 俊雄氏(新・無(参政系))
今回の都知事選において私が立候補表明の前から注目していた人物が、元航空幕僚長の田母神俊雄氏である。
彼は2014年の都知事選で約61万票を獲得したという(1) 、今回の選挙に出馬すれば多くのマスコミから「主要な候補者」とみなされる人物であり 、また「保守」系政治団体「日本のための選択肢」が昨年10月の時点ですでに彼の都知事選擁立を目指していた(2) 。そしてこれらに加え彼が参政党のアドバイザーを務めていたこと(3)から、「参政党ウォッチャー」である私はかねてから田母神氏の同党からの出馬を予想しており、そして見物の初日に早速彼の街宣を見に行ったのである(4) 。
まず田母神氏は私の「覇気に欠けた爺さん」という第一印象と異なり、75歳と比較的高齢ながらそれなりにはっきりとした声で演説を行っていた(5) 。
また政策面で彼が重視したものは「教育」であるが、それは「自国に誇りを持てる歴史」や「修身」の授業を実施することや、それの実現のために教科書採択に介入するといった、我が国の「保守」勢力が長年主張してきたものである。
他にも彼は「外国人への生活保護」や「外国人の起業への補助金」の廃止といった排外主義的な政策を訴えていたが、これらの点から、田母神氏が「典型的な『保守』系候補」だということが理解できるであろう。
だが田母神氏はこの「保守」という個性を除くと、あまりにもお粗末な候補者であった。
例えば「経済」は有権者の多くが関心を持つ分野であろうが、田母神氏はここでは若者支援を目的として「都民税の減税」を訴えていた。だが彼は実のところ、「数字の中身は都知事になってから検討するが、『減税はできる』と言えるはず」と、この政策については極めて漠然としか考えていなかったのである。もっとも、演説中に「税とは罰金である」と荒唐無稽な発言をしていた点からは、彼の経済観がそもそも現実離れしたものである、という可能性も指摘できるであろう。
また彼は「災害に強い町」をスローガンとして「防災」を第一の政策としたが、実のところそれは選挙ビラで自称した「危機管理の専門家」らしからぬ具体性に乏しいものであり、同じく「防災」を訴えた他の候補者との差別化はほぼなされていなかったのである
結局、田母神氏は「『保守』であること」以外のアピールポイントに乏しかった。これでは、彼が「保守」的な有権者以外からの支持を得ることは極めて困難だったであろう。
今回の選挙戦にあたり、田母神氏はやはり「保守」的な活動家や言論人からの応援を受けていた。
例えば私が見物した街宣でマイクを握ったのは、①反移民、反ウクライナ、反ワクチンを公言し、官僚や政治家を「日系ユダヤ人」と呼ぶ、日本保守党の石濱哲信党首、②田母神氏を「唯一信頼できる大人」と信奉し、これまたワクチン政策に反発する、シンガーソングキャスターの saya氏、③「凶悪犯罪の発生は、『日本人としての誇り』を教えない戦後教育が原因」「少子化対策として、中学校~大学で『20代で結婚すべき』といった『人生設計』を教えるべき」等の珍説を披露した、「新しい歴史教科書をつくる会」の諸橋茂一理事である。
だが防災や経済に触れたsaya氏はともかく、他2名は都政とほぼ関係のない、大半の有権者が関心を持たないであろう「保守」的な主張を披露するばかりで、私にはこれが田母神氏の支持の拡大につながるとは全く思えなかった。
またインターネットで確認した限り、他の街宣での応援弁士も似たり寄ったりの主張をする「保守」系文化人ばかりであり、部外者たる私としては「有権者そっちのけで、『保守』界隈のお仲間で盛り上がっているだけ」との印象が拭えなかったのである。
このように、田母神氏のみならずその陣営も「保守」であることが唯一の強みであったように見える。
もしも「保守」界隈がある程度一枚岩であれば、「対立関係にある参政党と日本保守党をはじめとする『保守』を団結させるために、無所属で出馬する」という田母神氏の戦略(6)が成功し、彼は「保守」票を固めて健闘できたかもしれない。しかし文筆家の古谷経衡氏によれば、田母神氏が2014年の都知事選以降に公職選挙法で逮捕・起訴され、有罪判決を受けたとき、「保守」界隈は「田母神批判派」と「田母神同情派」に分裂し、結局「保守」界隈から田母神氏は急速にフェードアウトしていったという(7) 。
このように「保守」界隈が田母神氏自身を巡ってすでに分裂していた状況では、この戦略ははなから成功の余地がなかったのではないだろうか。
なお、ここで田母神氏と参政党の関係については触れておかなくてはならない。
選挙期間中に参政党事務局に問い合わせたところ、同党は今回の選挙において党としての推薦や応援はいずれの候補にも行わず、党員に対しても自主投票という立場をとっていたとのことである。また党東京都城南支部連合会事務局からも「党内では自由投票となっております」「各候補への応援の参加も自由です」との回答をいただいた。
そして同党の神谷宗幣代表によれば、この判断をしたのは「衆院東京15区補選で東京都連が消耗したから」「国政のことをメインで訴えられない選挙だから」等の理由がある、とのことである(8) 。
しかしながら私の予想していた通り、かつ告示前に神谷代表が示唆していた通り(9) 、実際は同党の少なからぬ党員が田母神氏をサポートしていた模様である。私自身、彼の街宣のスタッフの中に参政党員らしき人物がいたことを確認しており(10) 、また神谷代表自ら田母神氏の応援演説を行ったことも判明している(11) 。
なお、これについて党事務局は「応援演説に関しては15区補選の時に弁士として協力いただいてますのでその恩返しという立場で行っております」と説明しており、また党都城南支部連事務局も「ほか候補(※原文ママ)を応援している方もいます」と補足しつつ同様の事情があることを推測している。
党の公式見解は理解したが、選挙期間中に党の幹部、所属地方議員、各種選挙の立候補予定者及び地方組織等が街頭やSNSでこぞって田母神氏を応援していた様子を見るに、私には参政党が田母神氏を実質的に支援していたように思えてならない。
田母神氏は今後も参政党との友好関係を継続するのか、また場合によっては同党から選挙に打って出ることがあるのか。「参政党ウォッチャー」として、彼の動向は今後も追いかけたい。
2.2. 内海 聡氏(新・市民がつくる政治の会)
田母神氏と並んで私が注目していた候補者が、医師の内海聡氏である。
彼は代替医療や現代医療批判関連の書籍を多数発行し、Xのフォロワー数が20万を超える、その界隈でもトップクラスの知名度を誇る人物である(12)が、最近は参政党を離党した吉野敏明氏と街頭演説を行う等(13) 、参政党の離党者に急速に接近していた。
そして今回、吉野氏や赤尾由美氏、武田邦彦氏といった離党者らからの応援を受けて立候補するに至ったのである。
内海氏は小休止をはさみながら、1人で1時間半近く長々と演説をするスタイルをとった。その語りは基本的に穏やかなものではあるが、徐々に「怒り」を露骨に示しヒートアップしていくものである。
また演説の内容(14)は2つの事柄が柱であった。1つは「救急車がすぐに現場に来ないのはワクチンによって超過死亡率が増加したから」「ワクチンによって血栓やがんが増える」といった反ワクチンの訴えである。
内海氏はここでは根拠不明なデータや知人からの伝聞、「ヤフコメや2ちゃんねるの書き込み」を根拠とした怪しげな講釈を断定口調で垂れ、またロバート・ケネディ・ジュニア氏といった他国での反ワクチンの運動を讃えていた。
そしてもう一つは排外主義的な主張である。彼は移民政策を「犯罪が増える」、外資企業への優遇措置を「外資に我々の金が流れている」と激しく批判し、これらの政策によって「日本が日本でなくなってしまう」ことに対して怒りをあらわにするのである。
特に、外国人の生活保護等の不正受給を糾弾しつつ「我々の税金は都内の貧困層等のために使われるべき」と主張する様子からは、福祉の対象を自国民に限定するとともに移民(或いは外国人)の排除を訴える「福祉排外主義」 (15)の影響が見て取れるであろう。
さて、内海氏のこれらの演説から伝わってきたのは、「我らの生存や権利が、既存体制とその背後の外国勢力に脅かされている」という、陰謀論色の強い彼の世界観である。
彼によれば、与野党や経団連は裏で結託しており、ワクチン政策等を通じて日本を外資に売り飛ばし利権を得ようとしている。他方国民はそれらの犠牲となって「税金をパクられ、命さえも脅かされ、生活も碌に保てなくなっている」というのである。
即ち内海氏は、政治を含む今の社会体制を自分達を追い詰める「敵」とみなしているのである。それは彼の「政党政治に期待をかけるということに無理がある」「政治家は偉そうにして、スポンサー(である外国勢力)に媚びを売りながら、口では綺麗事を言ってるだけ」という、既存の政治への不信感に満ちた言葉から伝わるであろう。
他方彼は自分自身を「金ではなく日本のために仕方なく立候補した、右でも左でも中道でもない普通の日本人」と位置づけ、彼が唾棄する「職業政治家」と対比させようとする。そして聴衆に対し「我々は追い詰められて、その怒りを政治家達にぶつけたくて動いている」と述べ、既存の政治への憎悪を煽るのである。
「人民」の立場から既存政治やエリートを、人民をないがしろにする「悪」として批判する。これはまさに政治学者の水島治郎氏が採用した定義における「ポピュリズム」の手法(16)ではないだろうか。
だが内海氏は、陰謀論者としては一流であっても、候補者としては三流であった。
内海氏は政策としては「泉大津市と同様の反ワクチン政策の実施」や「外資に『横流しされている』金の、中小企業や学生向けの政策への転用」等を掲げていた。だが彼は一方で個々の政策よりも社会の諸問題の原因を理解する方が重要と語りつつ、「公約はやろうと思えばできる」「財源はある」「これ(外資向けの予算の転用)は数字の細かいところではなく概念の問題」と大言壮語を吐く等、具体的な政策やそれの実現について訴えることを明らかに軽視していたのである。
内海氏が単なる評論家であるのなら、政策に対してはこの程度の認識があれば十分かもしれない。だが都知事選に出馬した以上、彼は当選すれば個々の政策を実行しなければならない立場におかれているはずである。にもかかわらず政策に正面から向き合おうとしなかった点で、内海氏は選挙の候補者としては失格であろう。
ここで街宣全体の様子に目を向ければ、6~7名のスタッフが手慣れた様子で動線確保等の活動をしていた。また内海氏によれば、彼の陣営は選挙戦2日目の時点で掲示板へのポスター貼りを都内の極めて広い範囲で行うことができたとのことであり、彼の下に少なからぬ熱心なボランティアが集まっている様子がうかがえた。
聴衆については女性を中心に60名程度が集まっていたが、その最前列には今年行われた熊取町長選にも関わった元参政党員(17)を含む複数のYouTuberが陣取り、ライブ配信を行っていた模様である。そして内海氏も演説中にこれらの配信の視聴者に配慮する発言を複数回行っていたが、ここからは彼が「日本人が得意なはず」と聴衆に求めていた「口コミ」による支持の拡大だけではなく、「ネットによる宣伝」も当てにしていたことが分かるであろう。
さて、ここで読者諸氏はお気づきではないだろうか。
「福祉排外主義」「既存体制を敵とみなす陰謀論」「『我ら普通の人民』と『敵』の二項対立」「『熱心なスタッフの活動』と『ネットでの宣伝』の併用」…。
これらはすべて参政党がこれまで用い、結果を出してきた手法である。
内海氏陣営がこれにどこまで自覚的であったかは不明だが、今回彼らによって、「参政党の選挙運動の手法は模倣可能であり、また一定以上の結果を出すことができるもの」ということが証明されたのではないだろうか。
そうであるならば、今後内海氏の二番煎じ、即ち参政党の「三番煎じ」を目論む個人又は団体が選挙に現れることは容易に想像可能である。したがって私としては、彼らによって陰謀論や「保守」思想が有権者の間で更に蔓延することに強く警戒すべきである、と主張したい。
2.3. 木宮 光喜氏(新・未来党)
今回の都知事選については政治や選挙の専門家だけではなく、ウェブライターの黒猫ドラネコ氏やライターの雨宮純氏といった陰謀論の専門家も注目していた。その要因の一つに未来党副代表の木宮光喜氏の存在があるであろう。
木宮氏の主張とは、簡潔に言えば「『ディープステート』(闇の政府、以下『DS』)が収奪した富を取り戻し、『ゲサラ法』を国際都市・東京で実現すること」である。
当然、大半の有権者にとっては全く理解不能なものであろう。それもそのはず。ノンフィクションライターの窪田順生氏よれば、「ゲサラ」というものは、1990年代の「個人の思いつき的提言」がネットの世界で「DS」と結びつけられて一人歩きをし、今やアメリカ社会ではそれを語る人たちが「Qアノン的な「陰謀論者」」として見られるような「古典的陰謀論」なのである(18) 。
実際、木宮氏らの荒唐無稽な訴えを、辻隆太朗氏が指摘した2つの「陰謀論の特徴」 (19)と照らし合わせてみると、未来党が「むき出しの陰謀論団体」である、ということが分かる。
そもそも彼らの世界観の根底にある「世界は『DS』によって支配されている」という考え自体が、「世界がある邪悪な意図によって操作されているという結論」という陰謀論の特徴に該当する。また党代表の石川新一郎氏は応援演説において、
と述べていたが、これも「正しい「われわれ」とまちがった「彼ら」という強固な二分法」というもう一つの特徴に合致していよう。
このように木宮氏らの世界観が、拙稿(20)で分析した参政党の世界観と同じく陰謀論色の強い要素を持っている一方で、彼女達が「ゲサラ法」や「DS」といった陰謀論的な用語を臆面もなく語る様を見て、私には未来党が「建前をかなぐり捨てた参政党」にしか見えなかったのである。
もっとも、木宮氏の奇妙な演説からは、彼女が「奨学金の返済」「重い税金」そして「女性に『出産・子育てへの恐怖』を感じさせる社会」といった現代日本の諸問題に対し、強い怒りを覚えていることが伝わってくる。
その解決策として提示するものが「ゲサラ法」なる代物であることは何ら評価できないが、彼女の抱く「理不尽な社会に対する怒り」にだけには大いに共感したい。
因みに、木宮氏は候補者としては穏やかに原稿等を読むだけの特徴のない人物であった一方、石川氏は明らかに演説が上手く、また「『木宮光喜、頑張れ』『負けるな、木宮光喜』の思い」と選挙の演説での定番のフレーズを使ったり、彼女の演説中に四方八方の通行人に絶え間なく手を振る等、明らかに選挙運動に慣れきった言動を見せていた。
私は石川氏の経歴を調べていなかったため、そこで彼に選挙運動の経験について直接尋ねたところ、
と、非常に納得できる回答をいただいた。
またその後調べたところ、彼は2019年の参院選にN国の公認候補として出馬していた(21) 。「公明→N国→未来党」という石川氏の変遷には何があったのか。次に彼と会った際は是非ともその詳細を聞きたいものである。
2.4. 桜井 誠氏(新・日本第一党)
本節で「保守」思想を取り上げるにあたり触れなくてはならない候補者が、日本第一党党首であり、人種差別団体「在日特権を許さない市民の会」元会長の桜井誠氏である。
彼は2020年の都知事選で約18万票を獲得するという衝撃的な結果を出しているが(22) 、今回も選挙戦を通じてヘイトスピーチを行うことが懸念されながらも立候補した。
桜井氏の街宣は「外国人生活保護の即時廃止」を目玉政策と位置付けたうえで、案の定「朝鮮人、志那人、クルド人」を罵倒するという人種差別意識をむき出しにしたものである。また彼の憎悪の矛先はマスコミにも及び、特に街宣の会場にいた神奈川新聞の石橋学氏に対しては名指しで「テロリスト」とのレッテルを貼った上で徹底的な侮辱を行った。
そして演説中に「帰れ!」と勇気ある野次を放った有権者にはわざわざ演説を中断してまで詰め寄り(23) 、マイクを使って彼女を「クソババア」呼ばわりしたのである。
桜井氏のこういった行動の根本には何があるのか。その答えは彼の石橋氏に対する次の発言によって要約可能であろう。
つまり桜井氏にとっての政治とは、「敵」とみなした者に憎悪を向け、その存在すら否定しようとするものではないだろうか。これは特に公職に就かんとする者の思想・発言としては、絶対に許容してはならないものである。
更に彼は、自分が「敵に対し先陣を切って戦う覚悟」と「日本人である誇り」を持っていると言い張り、まるで自分自身が「悪と戦う英雄」であるかのように表現した。この表現をもって己の所業を必死で正当化しようとする彼の様子を見て、私は「桜井氏が如何なる人間であるか」を深く理解したのである。
このように桜井氏の街宣は、人種差別思想を恥ずべきものと考える「正常な」私に、強い不快感を抱かせるものであった。そしてそのような街宣を平気で行える彼が都知事として、いやそもそも都知事以前のレベルにおいて「適正」な人物であるかは、火を見るよりも明らかではないだろうか。
なお、この街宣での聴衆は7〜80名はいたようであるが、そのうち桜井氏の演説に拍手等で反応する者は20名程度に見えた。
これは聴衆の中で、賛意を「公然とは」示さない支持者が多かったからなのか、或いは支持者より野次馬のほうが多かったからなのか。私としては努めて後者だと思いたいものである。
3. 「異常な選挙」の立役者達 〜評価すべき点はあるのか〜
3.1. 福原 志瑠美氏(新・NHKから国民を守る党)
今回の選挙で最も物議を醸したものは言うまでもなく、NHKから国民を守る党が行った「ポスター掲示板ジャック大作戦」(以下「ジャック作戦」)であろう。これは同党が候補者を大量擁立して選挙ポスターの掲示板を占有し、党に寄付した人の主張をポスターに掲載するという、型破りの構想である(24) 。
同党としては「ポスター掲示板について問題提起を行う」を表向きの目的としていた模様だが、選挙の告示以前から「選挙と無関係な『広告』が入ってくることによって、人々がポスターを見ながら真剣に考える行為を阻害し、集中できなくさせてしまう」 (25)といった批判がなされていた。
私は今回、N国の24名の公認候補及び系列候補のうち3名に「取材」を行うことができた。そのうち対面で話を聞くことのできた候補者の1人が、起業コンサルティング業の福原志瑠美氏である。
彼女は「『ポスタージャック』で掲示板の必要性を問う」と、この狙いを語る。
また話を聞くと、彼女自身も2023年の北広島市議選に出馬した際はポスター貼りに苦労したとのことである。
このように、ポスター掲示板を「新人候補に対する参入障壁」と語る福原氏は、「候補者が増えたら競争原理が働く」という理屈で、掲示板の数を減らす、ポスターを先にコピーして貼っていく、電光掲示板を使う等、これを効率化することでより選挙に立候補しようとする者を増やそうと言うのである。
「ジャック作戦」についての私の見解は一旦脇に置くが、ポスター掲示板の問題点についてはフリーランスライターの畠山理仁氏がすでに指摘をしており(26) 、私もこれを改めるべきだと以前から考えていた。
そしてかつてはこの問題の当事者であった福原氏の意見もまた、我々が参考にすべきものであろう。きっかけはともかくとして、今後ポスター掲示板の仕組みが改善され、より新人候補が立候補する際のハードルが下がるようになることについては強く望みたい。
なお私はこの作戦について、N国の支持者に対しては「選管やマスコミ、有権者等が嫌がっている様子を見て、日頃の鬱憤を晴らす効果」があるのではないか、と感じていた。
そこで福原氏にこれに関する見解を尋ねたところ、彼女は日常生活の鬱憤のはけ口になることには「政治は私物ではない」と批判しつつ、他方で政治の鬱憤のそれとなることについては寧ろ「鬱憤を感じてもらいたい」とまで述べていたのである。福原氏が「ジャック作戦」によっていわば有権者の今の政治に対する不信感が高まることを期待していた点については、この作戦の狙いを考察する上で重要であろう。
因みに福原氏は、「『正しい歴史認識』を記述するよう、教科書検定に介入する」「中国共産党寄りであるNHKを解体する」と「独特」の主張を持っていた。だが彼女が「ジャック作戦」に参加した影響で、有権者は彼女のこれらの政策を、ポスターや選挙公報といった利用しやすい手段では知ることができなかった。
「ジャック作戦」の「意義」は別として、この作戦によって有権者が彼女の主張を知る機会が奪われたことは甚だ残念である。
3.2. 松尾 芳治氏(新・NHKから国民を守る党)
フリーランスエンジニアの松尾芳治氏もまたN国の候補者である。
彼は選挙期間の大半を地元の福岡で過ごしたことから直接会うことはできなかったものの、6月30日に電話での「取材」に応じていただくことができた。
松尾氏は今回、東京における人口過密等を課題と考えたことや、自分の話を有権者に聞いてもらえるようになるべく知名度を上げようとしたことから、N国による供託金の負担を受けて都知事選に立候補した。
そして選挙戦にあたり、「あえて一切の街宣をやらず、インターネットのみを使った選挙運動をする」という斬新な戦略を取った。これは彼の「有権者は選挙の情報を自発的に集めるべき」という持論に基づくものである。
松尾氏は以上の考えから、街宣という政治に関心のない有権者にも一方的に情報を与えるような運動は行わなかった。そして同じ特徴を持つポスター掲示板に対しても「時代に合っていない」「危険性をはらむ」「税金の無駄」と批判し、これらの問題を提起するために「ジャック作戦」に参加したのである。
確かに私も、有権者の政治に対する関心の低さは問題であると感じている。その点で松尾氏が望む「自分から情報を取りに行く有権者」の像はまさに私の理想と一致するものである。
とはいえ、受け身の姿勢に慣れきった今の有権者に一切の説明なくこれを求めても、彼らが松尾氏の狙い通りに動くことはなかなか難しかったのではないだろうか。私としては、彼がやらんとした「『主体的な有権者』の育成」にはより効果的な手法があったのではないか、と思うところである。
また、松尾氏は日本保守党に強い関心を持つ人物であり、同党事務局長の有本香氏を「実務能力や人脈に長けた人物」と評した上で、当選すれば有本氏を副知事に任命し自身との共同指導体制を構築する、ということを主な訴えとしていた(27) 。
他にも彼は取材の中で、今回の選挙について「公平な選挙として成立せず無効となる」 (28) 「小池、蓮舫、石丸の各氏は逮捕又は取り調べの対象になる」「『公選法のエキスパート』であるN国の立花孝志党首は逮捕されない」といった見通しを示した
だが、彼のこういった「ユニークな主張」や「興味深い予想」を有権者が知る機会が、彼の戦略の一環とはいえネット上に事実上限られてしまった点は残念でならない。
因みに、私は松尾氏に対しても「ジャック作戦」の「N国の支持者の鬱憤を晴らす効果」の有無について質問したが、彼は「そのような気持ちは湧いてこない」ときっぱりと否定した上で、寧ろ「法令について選管に問い合わせようとしても、彼らが『ジャック作戦』等に関する大量のクレーム対応に忙殺されていて、電話がつながらない」と嘆いていたのである。
これは確かに新人候補にとっては深刻で、鬱憤の溜まる事態であったであろう。私としては、こうした悲劇を二度と起こさないよう強く願いたい。
3.3. 内野 愛里氏(新・カワイイ私の政見放送を見てね(N国系))
今回、私が直接会うことのできたもう一人のN国系候補が、合同会社代表社員の内野愛里氏である。
彼女は政治団体「カワイイ私の政見放送を見てね」 (29) が擁立した候補者であるが、N国とは「自分のポスターの枠を提供する代わりに選挙に関する手続を行ってもらう」という、本人曰く「一方的にお世話していただけている」関係であり、また「ポスター掲示板はこんなにいるのか?」という疑問から「ジャック作戦」にも参加している、とのことである。
私は駅前に立って有権者と話をしている内野氏に会うことができた。聞けば彼女には選挙資金がなく(30)街宣ができないため、選挙戦はインターネットでの発信と、LINEでメッセージを受け取った有権者との会話を中心に行っているとのことであった。
内野氏が選挙戦を通じて最も訴えたいことは「皆さんに選挙に関心を持ってほしいということ」である。
私も彼女が「選挙戦で」訴えようとしている主張には大いに賛同したいのだが、では内野氏は都知事となった時は何をしたいのだろうか。
ここで興味深いことに、彼女は「当選が目的ではない」と明言したのである。
彼女はこう語り、立候補したのは当選ではなく、自身の知名度を上げて今後のキャリアに繋げる、という目的があると認めたのである。
しかし彼女は選挙期間中、「政見放送で服を脱ぐ」という大胆な行動で話題に上ったような人物である(31) 。そのような「勇気ある行動」を堂々ととれる彼女ならば、都知事として、例えば安芸高田市のように連日「話題」を作って都民の「関心」を政治に向かわせることができたのではないだろうか。内野氏のような注目すべき人物が早々に当選を諦めていたことは、私としては誠に残念であった。
なお肝心な点として、内野氏に今後のキャリアについて尋ねると
都内の各区民は喜ぶべきである。今後の区議選においてこの野心的な人物に対し、議員のバッジを与えるか否かを自由に選ぶ機会を得られるのだから。彼らにおかれては都知事選を通じて、是非区議選への関心も高めてほしいものである。
3.4. 黒川 敦彦氏(新・つばさの党)
「選挙の秩序」という言葉を見て読者諸氏が真っ先に連想する候補者は彼ではないだろうか。つばさの党代表の黒川敦彦氏である。
彼は衆院東京15区補選での選挙妨害事件に関連して逮捕、起訴され勾留中の身であるが、勾留中でも選挙の立候補は可能ということもあり(32) 、今回の選挙にいわば「獄中立候補」する形となった。
黒川氏本人は選挙期間中に街宣を全く行うことができなかったが、彼の陣営は本人に代わり様々な選挙運動を行っていた。その一つが、黒川氏らが拘留されている警察署周辺での流し街宣である。私はそのうち深川警察署(33)でのそれを見物することができた。
小池氏を揶揄する歌を流しながら黒川氏の選挙カーが警察署前に現れたのは、党事務局次長を名乗る人物がXにて告知した時間(34)から15分ほど遅れてである。そして4~5名の陣営スタッフが停車した車から降り、開始予定時刻の5分前から待機していた警察署員4名に睨まれながら演説を開始した。
とはいっても、それは拘留されている容疑者に「頑張って下さい」と呼びかけ、警察に「やりすぎだと思います」と弱々しく抗議をする程度のものであった。しかも彼らは各々短い演説しか行わず、結局合計10分ほどで街宣を終えてそそくさと警察署前を後にしたのである。
私は問題の衆院補選についても見物をしており(35) 、黒川氏らが他の候補者の街宣を激しく妨害する不愉快な様子を間近で見ていた。だからこそ、都知事選における黒川氏陣営の補選とうってかわった弱々しい様子に、私は大いに呆れ果ててしまった。
そしてスケジュールを告知しながらも聴衆が警察署員(と私)だけという惨状を見て、私は「つばさの党は終わった」と感じたのである。
3.5. AIメイヤー氏(新・AI党)
本稿の構成上、ここで実業家のAIメイヤー氏を取り上げるのだが、本節の真の主役は「ジョーカー議員と投票率を上げる会」新人の元草加市議、河合悠祐氏である。
河合氏は選挙戦において「ほぼ裸」のポスターを掲示したとして警視庁から都の迷惑防止条例に抵触すると警告を受けた候補者である(36) 。
さて、AIメイヤー氏は今回の選挙戦にあたり、以前から面識のあった河合氏と「河合氏が足立区でAIメイヤー氏のポスターを貼る代わりに、AIメイヤー氏が立川市で河合氏のポスターを貼る」との約束をしていたとのことである。
今回の見物で私はAIメイヤー氏に直接お会いすることはできなかったため、彼について詳しくは取り上げられない。だが彼からは21日にXのDMを通じて、本件の経緯の一部を伺うことができた。
そこで以下の通りその内容を紹介したい。
この説明から、AIメイヤー氏が少なくともこのポスターのデザインを知った上で、それらを喜び勇んで貼ったというわけではない、ということは読み取れるだろう。
では「件の河合氏のポスター」及び「それを全て剥がすことに至ったこと」についてAIメイヤー氏自身はどう考えているのか。これを尋ねたところ以下の回答をいただいた。
「すべての候補者が適切な選挙活動を行うこと」は私も大いに望むものである。今回の選挙では本件を含め「不適切な選挙活動」がいくつも行われたが、今後はAIメイヤー氏のこの希望が叶うことを強く願いたい。
4. 個性豊かな「独立候補」 〜「武将系」と「ラブ&ピース」
4.1. 澤 繁実氏(新・無所属)
さて、都知事選は毎回ユニークな候補者が多数出馬する点が注目されているが、今回の特徴の1つは「武将」を自称している候補者が複数名いた点であろう(38) 。そしてその1人が、元陸上自衛官の澤繁実氏である。
澤氏は和服を着て「現役の織田信長」を名乗り、同郷の友人を含む3名ほどのスタッフと共に都内各所で忙しく街宣をしていた模様である。
演説では時折コミカルな声を出しながら政策を力強く語っており、その様子からは「自分の話を皆に聞いてもらおう」という彼の意思が十分に感じられた。また自分の名前や後述の「新東京経済圏構想」の名称を連呼して有権者にそれらを覚えてもらおうとするという、珍しい服装とは対照的にオーソドックスな演説手法をとっていたのである。
澤氏は現代の経済の基盤である資本主義のことを「既得権益に金を集中させ続け、我々にやりたくないことをさせ続ける『金銭的奴隷制度』」と批判し、次のイデオロギーへの転換を訴える。
そして彼が提唱する新しいシステムが「新東京経済圏構想」である。
彼はこの制度の導入を含むいわば「バラマキ政策」をもって、都が主導して金が循環するシステムを創ろうと訴えるのである。なかなか独創的な政策ではないだろうか。
澤氏の他の政策も、「ギフテッドの子ども達を『将来のリーダー』として無料で育てる学校を設置する」「江戸城を民間の力で再建し観光資源にする」といずれも興味深いものである。特に前者については、
と著しく感情を込めて訴えており、彼がギフテッドに対し何らかの拘りがあるように感じられた。
私としては、彼の政策が実現できるのか、或いは実現したとして効果があるのかについては確証が持てない。しかし澤氏がしっかりとした世界観を持った上で、現在の社会の課題とその解決策を訴えるという、まさに「理想の候補者」であったということは断言しておきたい。
なお、私は街宣の最後に1名だけに与えられる質問タイムを利用し、今回の選挙戦で図らずも注目された「ポスター掲示板のあり方」について澤氏の見解を尋ねたところ、以下の回答をいただいた。
実のところ「独立候補」である澤氏としては全く当然の回答である。私はポスター掲示板は必要と考えているが、彼の意見もまた的を射ているであろう。
そしてこのような不利な立場に置かれ、更に「恥ずかしげもなく後ろ指刺されようが吠えまくっている」ことを自覚しながらも、なおも愚直に自身の政策を訴えている澤氏には、改めて最大限の敬意を表したい。
4.2. アキノリ将軍未満氏(新・ネオ幕府アキノリ党)
ハチ公前広場付近にてこの爆笑ものの街頭演説を行っていたのが、もう一人の「武将系候補」である「仮幕府/共栄圏・対抗政府検討評議祭 アキノリ党」 (40)のアキノリ将軍未満氏である。
彼は政治思想や哲学をアマチュアとして10年以上学んでおり、そのためか会話の中でもそれらの専門用語をごく当たり前のように使える人物である。また彼が「昔の『泡沫候補』であり、僕のお師匠様」と呼ぶ外山恒一氏の理論には、特に感銘を受けたとのことである。
なお今回の活動のきっかけを聞いたところ、
とのことであった。
アキノリ将軍未満氏が抱いているのは「現在の選挙制度や民主主義そのものがシステム的に無理なんじゃないか」という考えである。
そう語る彼は、こうったシステムによって「どんどん自律的に自分達のことを締め付けていくような流れにある」今の社会に危機感を覚えており、「僕らはちょっと自由を求めていかなきゃいけない」と訴える。
そして、こう考えるアキノリ将軍未満氏が提唱する「議会政治でない新しいシステム」とは、「武士(=ノイジー・マイノリティー)による独裁」である。
彼は「武士」、或いは「将軍未満」を「『俺は武士だ』という文学的な『バイブス』 (ノリ)を高めた人物」、分かりやすく言えば「『ノリ』や『盛り上がり』に乗りきれる能力を持つ者」と位置付けた上で、以下の通り主張する。
さて、ここまで「取材」の文字起こしをしたものの、はっきり言って私としては未だにアキノリ将軍未満氏の世界観の全容が残念ながらつかめていない。したがって、ここではフリーランスライターの宮原ジェフリー氏の「音楽や芸術界隈のクリエイターらを惹きつける”バイブス”によるムーブメント」 (41)という認識を引用して、お茶を濁させていただきたい。
だが唯一確信的に言えることは、アキノリ将軍未満氏の「民主主義の機能不全」や「自由の必要性」等についての指摘には私も全く同感である、ということである。
これらの諸問題を解決しなければ、やがて彼が目指すところの「ネオ戦国時代」が到来してしまうのではないだろうか。民主主義者である私としては、それを防ぐためにも我々主権者が知恵を絞るべきだ、と主張したい。
なお、アキノリ将軍未満氏について私がどうしても気になったことがある。それは「兜を被っていて恥ずかしくはないのか」ということである。そしてその答えは以下の通りである。
認めよう。アキノリ将軍未満氏は正真正銘の「武士」である。そして「兜を被った珍妙な男性と彼に録音機を突き付ける不審者を見て、こちらの方向に歩いてきたカップルが踵を返した姿」にいたたまれなくなった私としては、是非とも彼を見習いたいものである。
4.3. 後藤 輝樹氏(新・ラブ&ピース党)
選挙期間中、都内の区民センターにて国歌と「大祓詞」、「般若心経」が流れた時間があった。「保守」系団体の集会や宗教行事ではない。自営業の後藤輝樹氏の個人演説会である(42) 。
後藤氏は「世界政府大統領」を目指すと共に、2011年以来17件の選挙に出馬し全て落選したという、本人曰く「捨て身で生きている」人物である。特に2016年の都知事選での政見放送では放送禁止用語を連発し(43) 、2021年の千葉県知事選でのそれでは彼女に公開プロポーズをして後に結婚したりと(44) 、その奇抜な活動がしばしば話題に上っている。
さて、後藤氏は前回の都知事選への立候補から今日までに「壮絶なアップダウンがあった」とのことである。
前述の通り彼は3年ほど前に結婚に至っている。本人としては「選挙を引退して妻に愛を捧げ、家族を幸せにしてその幸せを周りを伝播していきかった」とのことだが、残念ながら彼の「人間力のなさ」が原因で離婚したとのことである。
そして挫折した後藤氏に残されていたのは、彼を成長させてきた「選挙」だけであった。即ち彼は都知事選を通して「4年間の自分の総決算」を行い、結婚・離婚を経て得たものを有権者に伝えようとしたのである。
今回後藤氏が掲げたスローガンは「ラブ&ピース」である。彼によればこれは「非暴力、不服従」を意味するとのことである。
そして後藤氏はこのスローガンを掲げるだけでなく実践してみせた。
彼は個人演説会の参加者のうち希望する20名ほどに自分の選挙ポスター等を渡し、掲示を手伝ってもらおうとしたのだが、後藤氏はそれらを渡した際は一人ひとりに対しハグをした上で「ありがとうございます。愛しています」と語りかけたのである。
少なくとも私なら、その日初めて会った人物に愛を伝えるなど絶対にできない。この行動から、私は彼のスローガンが単なるお題目でないことを理解したのである。
また、彼は2021年の都議選を含め何年も前から「ゴミ拾い」を行っているが(45) 、それについては以下の通り語っている。
演説の端々から読み取れる通り、おそらく後藤氏は「保守」的な思想を抱いているのだろう。だが「ゴミ拾いは国防です」と語る彼からは、本稿でこれまで触れてきた田母神、内海、桜井の各氏という「保守」系候補から感じた「敵対者への苛烈な憎悪」とは異なる、「自国への素朴な愛」を感じることができたのである。
そして後藤氏は以下の通り決意を表明した。
正直に申し上げると、私は後藤氏に対し「エキセントリックな人物」との先入観を抱いていた。それ故、彼がこのような穏やかかつ誠実な理念を語ったことに対し少なからぬ驚きを覚えてしまった。
しかし今回後藤氏の個人演説会に参加したことで、私は彼が本気で有権者に「愛」や「公共心」等を伝えようとしているということを十分に感じることができた。そして我々有権者は今後、彼が理想とする「ラブ&ピース」の社会を実現すべく行動するべきであると、強く思ったのである。
5. 「有力な候補者」の選挙戦 〜その勢いの歴然たる差〜
5.1. 清水 国明氏(新・清水国明と東京都の安全な未来をつくる会)
清水国明氏はタレントであるが、阪神淡路大震災といった災害の発生時には自ら被災地に足を運んで支援活動を行い、能登半島の地震後もすぐに支援を実施した、という実績を持つ。そして「東京で、このままの状況で災害が発生すると、たくさんの犠牲者が出る」という危機感から、今回の選挙に立候補したとのことである(46) 。
なお私は、残念ながら彼とはスケジュールが合わず踏み込んだ見物ができなかったため、他の候補者以上に大雑把な感想しか述べられない点はお許しいただきたい。
私はNHKの取材に便乗する形で清水氏の訴えを聴くことができた。彼はそこで「災害対策の体制作り」や「情報の公開」、「バリアフリーの推進」等を主な政策としたが、本人曰く「『こんなことをやりますから!』っていうのは他の候補さんのようには持ってない…。言おうと思えばなんぼでも言えますけども」とのことである。
そのような清水氏は選挙戦において、他の候補者のような街頭演説だけではなく、例えば都内の商店街を練り歩き、有権者が「何を望んでいるのか」を1人ずつ聞こうとしていた。また「WON'T BE LONG」を披露したブラザー・コーン氏のように(47) 、知り合いの芸能人が政策ではなく「人間的な応援」を行っていた点も注目できよう。
他に清水氏陣営は、SNSでエゴサーチ等を行って支持者の投稿に積極的に反応しようとする等、「ネットでの活動」も通じて自身の宣伝を行っていた模様である。
陣営スタッフについて、清水氏は「2~30代が多く、プロはいない」と語っていたが、ハチ公前広場での街宣では多数のスタッフがお揃いのポロシャツを着用し、幟を複数本立ててビラを配るというオーソドックスで目立つ運動を展開していた。
もっとも、商店街での練り歩きは対照的に、名前の連呼をあまりせずに5~6名のスタッフと幟を1本立てて歩くだけという地味なものにとどまっていたのだが、これは「プロの不在」の影響だったのかもしれない。
しかしNHKの取材に対し「テレビで自身のことが報じられず、めげそうになった」と語っていたように、清水氏はその知名度にもかかわらず「独立候補」と同様の苦しみを感じていた。
彼としてもこれを打破しようとしたのか、選挙戦の後半では東京を離れて復興支援のために能登半島へと向かったり、対立候補との合同街頭演説会を実施するといった異例の選挙運動を行い(48) 、自身の活動を有権者にとって少しでも意義のあるものにしようとしていた模様である。
清水氏のような知名度と実績を兼ねそろえた候補者ですら、マスコミに「黙殺」されれば、得票の増加に即座につながるわけでもない選挙運動を行わざるを得なくなる。これらの運動自体は良いものであったと思いつつも、私は今回ほど「選挙に対するマスコミの影響の強さ」を実感したことはない。
マスコミ各社におかれては、今後は選挙の候補者の活動が十分に有権者に伝わるよう、報道の仕方を見直していただきたいものである。
5.2. 石丸 伸二氏(新・無所属)
今回の選挙において一躍知名度を上げた候補者は石丸伸二氏であろう。
彼は2020年に安芸高田市長に就任し、議会や記者会見での発言が動画サイトで拡散した結果、都知事選以前から全国からの関心を呼び込んでいた(49) 。 一方で、任期中は議会や地元紙と激しく対立し、更に「『市議からの恫喝』のでっち上げ」や「市長選でのポスター制作費の踏み倒し」に関する訴訟で敗訴する等(50) 、重大なトラブルの絶えない人物でもある。
石丸氏は銀行員や首長を経験した人物として「行政と経済を知る初の都知事」となることをアピールポイントとした。そして政策として取り上げたのは「学校環境の整備」である。
彼はこう謳い、例えとして「教職員の残業時間を減らす取り組み」の実施を主張する。そしてこれは安芸高田市で実現させたことだと言い、自身に実績があることをアピールしようとしていたのである。
だがこの注目すべき理念と実績を強調しながらも、必要となる財源について「何としても捻出するとお約束します」と、確保の見通しを明確に示さなかったことは批判されるべき点であろう。
石丸氏について注目すべきなのは演説の内容よりも選挙運動の展開である。
選挙期間中、彼は短時間の街宣を1日に10か所以上で行い精力的に活動していた。またその15分程度の演説は更に「自己紹介」「政策」「聴衆への一言」に分けられ、司会者に都度仕切りを入れさせていたのである。
これは長時間の演説で聴衆を疲れさせないことと共に、聴衆が彼の街宣をYouTube等に投稿する際にいわゆる「切り抜き編集」をしやすくする目的があったのではないだろうか。彼の演説手法が短いフレーズを連発するものであったことや、聴衆の中にYouTuberらしき者が少なからず確認できたことも、この見立てに説得力を与えるものであろう。
また陣営のスローガンは「#東京を動かそう」という、そのままSNSのハッシュタグに転用可能なものであった他、Xでの彼の後援会のアカウントは石丸氏の支持者の投稿を、しばしば「#ナイス投票」のハッシュタグと共に引用リツイートしていた。こうしたハッシュタグは支持者間のつながりを強め、SNSでの運動を盛り上げることに役立ったであろう。
加えて事務所に「ほぼ等身大 石丸伸二と共に写真を撮ろう!ネット投稿OK」と書かれた石丸氏のパネルが置かれていた点を見ても、石丸氏陣営としては支持者が彼のことをネットで拡散することを望んでいたように思える。
これらを総合すると、選挙後に各種報道が指摘するように(51) 、石丸氏はやはりネットを通じて名前の浸透を図る戦略をとっていたのであろう。
なお、私が石丸氏の演説で注目した表現がある。それは「支持者への『選挙運動への主体的な参加』の呼びかけ」である。
読者諸氏にはお分かりだろうが、この表現は神谷代表ら参政党員がしばしば演説で使用する言い回しに酷似している。
「参政党ウォッチャー」としての管見によれば、支持者に対しこのような「『歴史的な運動』に参加しようとする者」というアイデンティティを付与することは、彼らの「この誇り高き運動に自発的に関わっている」ことへの自尊心を喚起し、そしてこのアイデンティティの再確認を求めてより積極的に運動に参加しようとさせる効果がある。
参政党は支持者に「新しい政治の仕組み作りへの参加」をアピールすることで(52) 、活動熱心な党員を獲得することに成功したと思われるが、実は石丸氏にも同党と同じ狙いがあったのではないだろうか(53) 。
付言するならば、石丸氏はしばしば「子ども達への責任」を強調していたのだが、これも参政党員の演説と共通する点である。そしてこの表現は、支持者の活動(=石丸氏の選挙運動)に「次世代のため」との大義名分を与えてそれを肯定すると同時に、彼らに「運動に参加することへの義務感」を感じさせる効果があると考えられるのである。
まとめると、石丸氏は「街頭での活動」や「ネットでの宣伝」を駆使すると同時に、参政党と同様の手法によって支持者を選挙運動に積極的に巻き込み、大きな「ブーム」を起こす戦略をとっていたと考えられる。彼の下に約5,000人ものボランティアが集まり、1日15万枚のビラを配る態勢が構築されたのも(54) 、この戦略が効果を発揮した結果と言えるのではないだろうか。
そして東京に何の地盤も持たないにもかかわらず、選挙戦3日目の時点で少なからぬ若者を含む100名近い聴衆を集めた石丸氏を見て、私は彼から明確な「勢い」を感じたのである。
5.3. 蓮舫氏(新・無(立憲系))
今回の選挙戦で小池氏への対抗馬と当初目されていた候補者は、前参院議員の蓮舫氏であろう。
彼女は選挙にあたり所属していた立憲民主党を離党し無所属で出馬したが(55) 、選挙戦では立憲に加え共産党、社民党、新社会党、緑の党グリーンズジャパン、東京・生活者ネットワークの支援を受けた(56) 、いわば「左派統一候補」として小池氏に挑むこととなったのである。
蓮舫氏は演説において終始「真剣さ」を感じさせるような大声を出し、また「多くの聴衆が集まったことへの感動」や「誤った都政への怒り」に対し感情をあらわにする手法をとった。
また、「この8年間で東京都はどうなりましたか?良くなりましたか?何が変わりましたか?」という言い回しのように、聴衆に問いかけたり、同じフレーズや音を繰り返すといった修辞を多用することで、演説が聴衆の耳に残りやすくなるように工夫もしていた。それ故私は彼女の街頭演説を、実際に聴くことのできた候補者の演説の中では弁論術の観点において最高水準のものである、と感じたのである。
政策としては「徹底した若者支援」を掲げ、「都が契約する企業で働く労働者の報酬下限額の設定」「DX導入による教育環境の改善」「福祉の現場等で働く若者の奨学金返済の支援」をその具体例とした。
彼女としては、これらの政策をアピールすることで若者からの支持を取り付け、同時に「若者が自由に使えるお金が増えれば、それは税金と社会保障の負担も増えていくことになり、シニアの安心につながる」と、中高年層への配慮を示すことで彼らからの支持もつなぎとめる、という戦略であったと思われる。
蓮舫氏の街宣では連日、立憲の議員らが応援演説を行っていた。
私が見物した街宣では都連の手塚仁雄幹事長をはじめとする同党の国会議員や都議らが、保坂展人・世田谷区長と共に小池都政を批判しつつ蓮舫氏を熱心に応援しており、まさに「立憲の総力戦」とも言える様相を示していた。しかも山口拓都議によれば、この街宣は共産党、生活者ネットワーク、市民団体等の協力を受けて実施したとのことであり、左派系団体がこぞって蓮舫氏を支援していることも読み取れた。
また100名を優に超えた聴衆を見てみると、彼らは演説中に激しい拍手や「そうだ!」の合いの手を積極的に放ち、街宣終了後には「れんほう!れんほう!」と熱狂的なコールすら起こしていた。最前列で見物していた私としてもこの聴衆の勢いには気圧されたのだが、この迫力から私はこの場における「蓮舫ブーム」の存在を感じることができたのである。
もっとも、蓮舫氏陣営に属さない私としては、彼女の戦略に「危うさ」も感じた。
まず前述の通り、蓮舫氏の街宣は「 (ビジョンと共に)現都政を徹底的に糾弾する蓮舫氏」と「それに煽られる聴衆の反応」で構成されていた。だが後日街宣の録音を冷静に聴いた際、私は「蓮舫氏の怒りの声」と「支持者の熱狂」に対し「怖い」と感じたのである。
彼女の訴えのかなりの部分に共感した私でさえ後にこう感じたのだから、ましてや支持者以外の都民、特に普段政治について真剣に考えない大半の有権者なら、彼女の街宣にはマイナスの印象を抱くのではないだろうか。
また蓮舫氏は、「裏金を貯め、『なんちゃって改革』で終わらせようとする自民党が応援する現職には、どうしても負けられない!」と小池氏を自民党に関連付け、国政に対する有権者の怒りを彼女にも向けさせようとしていた。
だが今回自民党が小池氏への支援を水面下でのものにとどめていたこと(57) から、特に政治に詳しくない有権者が「無所属の小池氏を自民党が自主支援している」との構図を認識できたとは考えづらいであろう。したがってこの戦略は、そもそも小池氏への有効な批判として成立するかが非常に疑わしかったように思える。
更に街宣のスケジュールを見ると、蓮舫氏は大規模な街宣を1日に1~2回程度行うのみであり、有権者への露出が少ないように思えた(58) 。
確かに彼女は東京で長く活動している、すでに知名度の高い人物であり、それ故他の候補者ほどの運動量は不要だと考えたのかもしれない。またあえて街宣の回数を絞ることで1回あたりの参加者を集中させ、より熱狂的な場を作り出すことができたとも考えられよう。
だが連日の公務を通じて自身の宣伝を行った小池氏、或いは前述の通り1日に何度も街宣を行った石丸氏と比べた際、この活動量では有権者に自身の存在感を示すことができなかったのではないだろうか。
結論を述べるのならば、蓮舫氏は確かに候補者、特に左派系勢力の候補者としては強力な人物であったかもしれない。だが私にはその選挙戦略のいくつかの部分が、特に支持者以外からの支持の獲得に不安を残しうるものに見えたのである。
したがって彼女の当選は、前述の「蓮舫ブーム」を、支持者を超えて有権者全体に広げられるかどうかにかかっていたのではないだろうか。
5.4. 安野 貴博氏(新・無所属)
さて、本章で最後に取り上げたい候補者は、ソフトエンジニア・起業家・SF作家である安野貴博氏である。
彼は政治家としてはほぼ無名の人物であったが、台湾のオードリー・タン元デジタル相と連絡を取り合い、政策を評価されたということから(59) 、ごく一部から注目されていた候補者である。
まず安野氏はこの都知事選を「政局ばかりでビジョンがない。政局より政策を」と、政局好きの私にとって耳の痛い訴えから始める。ではそう述べる彼の政策は何かというと、「①暮らし、②経済、③政治をアップデートする」である。
こう謳う安野氏は、具体的には①各病院への医者の最適配分の決定、マイノリティの生活の向上、②技術者を集め、新産業を創ることによる経済活性化、③ネット選挙の導入、行政でのDXの推進、等を訴えるのである。
特に彼は①や③の政策の実施にあたっては「都知事がトップダウンで実行すべき」と主張しており、「なぜ自分は国政選挙や都議選等ではなく都知事選に出馬したのか」という点を明らかにしていた。また「大企業に対しDXのプロジェクトをやってきた」という実績を強調することで、自身がこれらを実施することは可能だとアピールしていたのである。
加えて安野氏が示したものは「デジタル民主主義」というビジョンである。
ここにはテクノロジーが専門家の独占物となっている社会の現状に対する、安野氏の問題意識が感じられる。そしてこれを「デジタル民主主義」という選挙と関係のある思想で解決しようとしている点は、実に興味深いものである。
また見方を変えれば、彼はただ現在の都政を否定するだけではなく、「デジタル民主主義」という「現都政に代わる、新しく魅力的な政策ビジョン」を提示した。これはより良い政治を求める有権者からの期待を集めることに大きな効果を発揮したであろう。
安野氏は石丸氏と同様、都内各地で短時間の街宣を小まめに実施するスタイルをとった。その際は若いスタッフ3~4名が精力的にビラ配りを行っており、また後藤氏と同じくその場で希望者にポスターを渡し、少しでも多くのポスターを貼ろうとしていたのである。
だがこういった選挙戦術以上に注目すべきなのは、安野氏本人から凄まじいまでの真剣さが伝わって来たことである。街宣で司会を務めた彼の妻からも必死さが感じられ、基本的に冷めた目で選挙を眺めている私ですら彼らの演説に自然と引き付けられたのである。
そしてこれらの熱心な選挙運動が功を奏したのか、ほぼ無名の候補にもかかわらず街宣に20名ほどの聴衆が集まり、その多数が若者であったことは特筆ものであろう。
因みに、私は「ネット選挙」等を訴える安野氏がポスター掲示板についてどう考えているのか気になったため、彼にこれの見解を街宣後に尋ねたところ、以下の回答を得られた。
実は同様の「デジタル掲示板」についてはすでに畠山氏が提案しており(60) 、私も概ね賛同している。それでも、安野氏が掲示板の有効性を認めた上でその欠点をテクノロジーで解決しようとしていることが分かったことは、私にとって大きな収穫であった。
結論を述べよう。「今の政治への明確な問題意識」「新しく魅力的なビジョン」「問題解決のための具体的な、かつ都知事でなければできない政策」「活発な選挙スタッフ」そしてなにより「真剣さ」。安野氏はこれらを兼ね備えた、まさに「理想の候補者」であった。
それ故、安野氏の活動がここで終わってしまうことは実にもったいない。私としては安野氏が再び公職を目指すことを希望すると同時に、彼に影響を受けた政治家が彼の「デジタル民主主義」を採用し、あるいは被選挙権を持つ者が選挙でそれを訴えることを強く求めたいものである。
6. 選挙結果と総括
今回の選挙の結果として、まず投票率が前回を5.62ポイント上回る60.62%になったことには注目すべきである。無論選挙に関心を持った有権者が増えることは本来喜ばしいものなのだろうが、彼らは具体的に何に関心を持ったのか、そしてその関心の持ち方は主権者として望ましいのか。この点は今後検証されるべきであろう。
そして開票結果は小池氏がいわゆる「ゼロ打ち」で3選を決めるという、至極順当なものに終わった。もっとも今回は当落以上に、石丸伸二氏が蓮舫氏を上回って次点となったこと、都知事選に立候補経験のある田母神氏や桜井氏が得票を大幅に減らし、また一定の知名度を持つ清水氏が10万票も獲得できずと惨敗したこと、及び初挑戦の安野氏や内海氏、作家のひまそらあかね氏が10万票以上を得て健闘したことに注目すべきであろう。
6.1. 「主要な候補者」についての簡単な考察 ~出口調査と見物を基に~
さて、私は今回の見物にて「可能な限り多くの候補者に会うこと」を基本方針とした結果、各候補者について踏み込んだ見物ができなかった。
そこで、すでに選挙結果についてマスコミや専門家が多数の分析を発表していることも踏まえ、本節ではまず多くのマスコミが「主要な候補者」とみなした4名(61)のうち、実際に会うことのできた石丸、蓮舫、田母神の各氏の結果については、出口調査の結果を私の見物と照らし合わせながら簡単な考察を試みるのみとさせていただきたい。
まずNHKの出口調査(62)を見ると、大票田である無党派層からの支持において、蓮舫氏が石丸氏の後塵を拝した点が注目できよう。
ここからは、蓮舫氏がその戦略の影響で「ブーム」を無党派層にまで広げることができず、逆に街頭とネットの両方で「ブーム」を起こし無党派層から多くの支持を獲得できた石丸氏によってその存在感が霞んでしまった、という可能性が考えられるであろう。
またこの出口調査からは、田母神氏が無党派層からの支持を碌に獲得できなかったことも読み取れる。これは彼が終始「『保守』であること」という、多くの有権者が関心を持たないようなアピールしかできなかった結果ではないだろうか。
同時に保守政党である自民党の支持層からの票すらほとんど得られなかったのは、同党が小池氏を自主支援したことだけではなく、彼がすでに「保守」界隈での存在感を失っていたことも影響を与えた、と解釈可能であろう(63) 。
更にJNNの出口調査(64)では参政党支持層の投票先も示されているが、そこでは参政党が実質的に支援していた田母神氏に投票した者が、同党支持層の3割程度にとどまっていることが分かる。
これについては田母神氏の前述の存在感のなさに加え、「保守」色の強い彼を「自らを保守的だと思う者が必ずしも多くない」同党支持層(65)が敬遠したこと、また「自主投票」という党の公式の立場に党員が素直に従ったことから、彼らの票が参政党と酷似したメッセージを発した石丸氏や、(推測にとどまるが(66) )田母神氏よりも反ワクチン等の陰謀論色の強い内海氏に流れた、という仮説を立てられるであろう。
もっとも私は、選挙結果のポイントであろう蓮舫氏の陣営やその支持者らの「ひとり街宣」を含む選挙活動をほとんど見物できず、またそれ以上に肝心の小池氏に会うことが一度もできなかった。そのような私では彼らの分析に限界があるため、本節についてはここで終わりたい。
6.2. 賞賛されるべき「独立候補」 ~「『黙殺』すべき候補者」などいない~
今回の選挙において私が関心を持っていたのは、前述の「主要な候補者」ではなく、寧ろそれ以外の「独立候補」、俗に言う「泡沫候補」である。
畠山氏によれば、選挙においては立候補はしたものの、選挙報道される段階になると、あらかじめ切り捨てられて「黙殺」されてしまう人たちがいる。そして世間の人たちは、彼/彼女らを侮蔑のニュアンスを含めて「泡沫候補」と呼ぶのである(67) 。
今回選挙における報道について、私の感覚では専ら小池、蓮舫、石丸の各氏が報じられ、次点で田母神氏、更にごく一部で清水氏と安野氏が取り上げられていたように思える。そして彼らを除く50名の候補者はマスコミから、まるで「投票する価値のない人物」であるかのように「黙殺」され、大半の有権者はその基準を鵜呑みにしていたのであろう。
しかし畠山氏の影響を受けた私は選挙の前から考えていた。「この選挙において『黙殺』すべき候補者などいるのか」、と。そこで私はそれを検証すべく長時間かけて東京に向かい、3日間という短い期間ながら滞在して「『黙殺』すべき候補者」の有無を確認したのである。
さて、早速結論を述べよう。
例えば5位と大健闘した安野氏は前述の通り「最高水準の候補者」であったし、澤氏は「後ろ指刺され」ながらも真摯に街頭での訴えを続けた。彼らは今回独自の政策を提示したことで、「市民のための政策を練り上げる」という選挙の機能(68)の発揮に大いに貢献したであろう。
また清水氏は政策課題を異例の手法で提示し、後藤氏やAIメイヤー氏は政治に欠けてはならない考えを我々に率直に伝えた。これらは選挙の機能外の運動だったかもしれないが、「より良い政治」になくてはならない要素である。その点でこの3名は我が国の民主政治を更に発展させた、と言えよう。
更に「自分は民主主義者ではない」というアキノリ将軍未満氏も、選挙戦を通じて「今の民主主義の課題」を発信したことで、これを解決して民主主義を守る必要性を有権者に実感させたのである。
この通り、私が直接会うことのできた「独立候補」の多くは選挙、或いは民主主義の趣旨に沿った、賞賛されるべき活動をしていたのである(69) 。
無論、中には内海氏や木宮氏という陰謀論を拡散し、民主政治の前提条件である「健全な世論形成」を妨げる候補者もいたが、彼らは選挙運動そのものは「言論」という民主主義に合致する手段を用いて行っていた。そうである以上我々は彼らの「選挙の立候補者」としての存在を否定してはならず、彼らの発信する誤情報は民主主義に基づいて言論、そして投票を通じて否定すべきである(内海氏については否定がなされたようには思えないが)。
またN国系の福原、松尾、内野の各氏ですら、ポスター等を本来の用途に反する目的で使用したものの、選挙期間中は各々が、有権者に訴えたいことを何らかの「言論」をもって発信をしていた。その点で、彼らは形式的な意味のみならず実質的な意味においても間違いなく「候補者」の1人であり、「ジャック作戦」とは別の文脈からも批評されるべきであろう。
結局今回の選挙戦において、少なくとも私が見た限りでは「『黙殺』すべき候補者」はほとんどいなかった。そして「黙殺」するか検討すべきであった者ですら、せいぜい選挙の妨害者や人種差別主義者、或いは候補者ではないものの候補者を利用して炎上商法をやらんとした輩のような、選挙を含む民主的な秩序を愚弄した「民主主義の敵」だけだったのである。
したがって私としては、大半の候補者を「黙殺」したマスコミ、そして彼らを「黙殺」した報道を鵜呑みにした有権者に対し、大いに猛省を促したいものである。
最後に、今回都知事選を見物した私から読者諸氏に伝えたいことがある。
候補者の中には周囲が「泡沫候補」として「黙殺」する者がいるかもしれない。だが彼らは「選挙に出馬する」というハードルの高い行為を行ってまで、社会に訴えたいことが何かしらあるはずであり、またそのような彼らの訴えはここまで私が指摘した通り、往々にして我が国の民主政治を守り育てるために活用することができるであろう。大体、候補者を「黙殺」するか否かの判断はマスコミではなく、有権者が主体的に行うべきである。
そしてマスコミに対し「真に公正な選挙報道」を期待できない現状としては、投票すべき候補者を比較するには有権者個々人が自分の目で彼らを比較するしかないのである。
日本の民主主義を機能させるのはマスコミではない。我々主権者自身である。
※謝辞など
今回の見物にあたり、対面での「取材」にご協力下さり、場合によっては原稿を事前に確認することもご希望下さった、
アキノリ将軍未満 様
安野 貴博 様
石川 新一郎 様
内野 愛里 様
澤 繁実 様
福原 志瑠美 様
電話での「取材」にご協力下さり、またXのDMでの問い合わせにご対応下さった、
松尾 芳治 様
XのDMでの「取材」にご協力下さり、また原稿を事前にご確認下さった、
AIメイヤー 様
写真の撮影にご協力下さった、
木宮 光喜 様
清水 国明 様
私の不徳から直接の「取材」には至れなかったものの、XのDMでの問い合わせにご対応下さり、また原稿を事前にご確認下さった、
後藤 輝樹 様
同じく「取材」には至れなかったものの、メール、又はXのリプライやDMでの問い合わせにご対応下さった、
向後 真徳 様
小林 弘 様
竹本 秀之 様
野間口 翔 様
福本 繁幸 様
前田 太一 様
三輪 陽一 様
山田 信一 様
大和 行男 様
メールでの問い合わせにご対応下さった、
参政党 事務局 様
同 東京都城西支部連合会 様
同 東京都城南支部連合会 事務局 様
この場を借りてお礼申し上げます。
またこれらの方々以外の候補者の皆様、特に本稿で取り上げた、
石丸 伸二 様
内海 聡 様
田母神 俊雄 様
蓮舫 様
選挙戦にあたり、連日のご奮闘、誠にお疲れ様でございました。
※註
(1) 東京都選挙管理委員会事務局 「東京都知事選挙(平成26年2月9日執行) 開票結果」
https://www.senkyo.metro.tokyo.lg.jp/election/tochiji-all/tochiji-sokuhou2014/result/(2024年7月20日閲覧)
(2) アメーバブログ 「日本のための選択肢(AfJ alternativeforjapan)」 2023月10月3日 「今すぐ「田母神俊雄東京都知事」実現に賛同してください!」
https://ameblo.jp/alternativeforjapan/entry-12822998529.html
(2024年7月3日閲覧)
(3) 参政党 公式HP 「メンバー紹介」
https://www.sanseito.jp/member/
(「Wayback Machine」 2021年6月20日アーカイブ分
https://web.archive.org/web/20210620194205/https://www.sanseito.jp/member/)(いずれのURLも2024年7月20日閲覧)
(4) なお、田母神氏の21日の上野駅前での街宣については、「黒猫ドラネコ【トンデモ観察記】」 2024年6月29日 「【都知事選】旧参政党勢とステルス参政党、そして新星…」でも取り上げられている。
https://kurodoraneko15.theletter.jp/posts/a49bbc10-343f-11ef-a91a-417dab141d78(2024年7月3日閲覧)
(5) もっとも、選挙ウォッチャーの栄光なきドン・キホーテ氏は、田母神氏の街宣を10年前のそれと比較して「だいぶ歳を取ったという印象。だいいち、呂律が全く回っていない」と酷評している。栄光なきドン・キホーテ 2024年7月17日 「2024年東京都知事選挙レポート」
https://note.com/donquixotes/n/n863050e0159a(2024年7月22日閲覧)
(6) YouTube 「田母神チャンネル(田母神事務所)公式」 2024年6月24日 「【告示前インタビュー】日本を変える為に保守がまとまるべき!◆#001-TAMOGAMI TALK◆」
https://www.youtube.com/watch?v=MC6U3rKwHPM(2024年7月15日閲覧)
(7) X(旧Twitter) 「古谷経衡(作家,評論家,社団法人令和政治社会問題研究所所長,株オフィス・トゥー・ワン所属)」(@aniotahosyu) 2024年5月28日午後0時12分の投稿
https://x.com/aniotahosyu/status/1795292155847827537(2024年7月13日閲覧)
(8) YouTube 「参政党」 2024年7月1日 「政治の破壊工作だ💢神谷宗幣❗❗都知事選を斬る👊👊👊 神谷宗幣 【赤坂ニュース 121】令和6年7月1日 参政党」 https://www.youtube.com/watch?v=Z2-2W_yvcMA (2024年7月3日閲覧)
なおこの動画は、参政党東京都城西支部連合会に同様の問い合わせをした際に、「 (我々は)城西8支部のみの連合会となりますので、回答は差し控えさせていただきます」との返信と共にご紹介いただいたものである。
(9) 神谷代表は6月14日の新橋SL広場での街頭演説にて、党員に対し田母神氏の応援を勧め、また自身や松田学前代表、衆院選立候補予定者の山中泉氏らが彼の応援に入る可能性にも言及していた。
(10) なお、黒猫ドラネコ氏も前掲記事にて、この街宣について「やはりここでも見事に参政党スタッフが運営し、なんなら党所属の区議らもチラシ配りに奔走していた」と指摘している。
(11) X 「神谷宗幣」(@jinkamiya) 2024年6月20日午前11時59分の投稿
https://x.com/jinkamiya/status/1803623776187515383(2024年7月13日閲覧)
(12) 雨宮純 2024年6月29日 「Mr.都市伝説関暁夫氏や徳政令候補に外山恒一氏も参戦〜都知事選の熱い夏〜」
https://note.com/caffelover/n/nfca9d786211b(2024年7月20日閲覧)
(13) X 「黒猫ドラネコ」(@kurodoraneko15) 2024年4月4日午後3時40分の投稿
https://twitter.com/kurodoraneko15/status/1775775401324978541(2024年7月20日閲覧)
(14) なお、私が見物した21日の調布駅前での街頭演説は急病人が発生したことから、内海氏曰く「本来の内容を大きく変えて医療の話を中心にした」「あまり盛り上げないようにした」とのことである。したがって、これが彼の他の街宣とはその内容を異にする可能性があることには留意いただきたい。
(15) 水島治郎 『ポピュリズムとは何か』(中公新書、2016)
(16) 同書
(17) 彼については拙稿「【選挙徘徊記】2024年 大阪府・熊取町長選 感想」にて触れている。
https://note.com/saiiki6111/n/nf7838debb3bc
(18) 窪田順生 「「ネサラゲサラ」都知事選で飛び出した謎の公約は陰謀論の一種?呪文のように人々の心に刺さったワケ」 「ダイヤモンド・オンライン」 2024年5月30日
https://diamond.jp/articles/-/344548(2024年7月3日閲覧)
(19) 辻隆太朗 『世界の陰謀論を読み解く ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ』(講談社、2012)
(20) 「参政党の世界観、その機能と「虚構性」 〜神谷宗幣編著 『参政党Q&Aブック 基礎編』を基に〜」
https://note.com/saiiki6111/n/n8ca3fa7a8744
(21) NHK選挙WEB 参院選 2019 「徳島 高知 選挙区」
https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/sangiin/2019/36/skh43426.html(2024年7月10日閲覧)
(22) 東京都選挙管理委員会事務局 「東京都知事選挙(令和2年7月5日執行) 開票結果」
https://www.senkyo.metro.tokyo.lg.jp/election/tochiji-all/tochiji-sokuhou2020/result/(2024年7月20日閲覧)
(23) なお、この様子は石橋氏が動画を撮影している。X 「石橋学」(@ishibs_kanagawa) 2024年6月29日午後1時36分の投稿
https://x.com/ishibs_kanagawa/status/1806909523619459293(2024年7月20日閲覧)
(24) 東京新聞 2024年6月19日 「NHK党のポスター枠「販売」いいの? 都知事選に大量擁立の立花孝志党首 法の抜け穴突く「荒稼ぎ作戦」」
(25) 「チダイズム」 2024年6月18日 「【選挙ウォッチャー】 東京都知事選のポスタージャックは許されるのか。」
https://note.com/chidaism/n/nb7f98afa8705(2024年7月14日閲覧)
(26) 畠山理仁 『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社、2019)
(27) 但しこれの実現の見通しについて尋ねたところ、「有本氏に連絡するルートはできたが、直接本人にお願いができている状態ではまだない」とのことであった。
(28) なお松尾氏のこの予想は、YouTube 「【公式】竹田恒泰チャンネル 2」 2024年6月27日 「6/27【前半】竹田恒泰の「日本のソボクなギモン」第589回||※後半は⇒https://youtube.com/live/_UlVJRdrpws」を基に示されたものである。
https://www.youtube.com/watch?v=vA-qYMHMF04(2024年6月30日閲覧)
(29) 因みに、この団体名について内野氏に確認したところ、「カワイイ」の形容詞は「私」と「政見放送」の両方の名詞にかかっているとのことである。
(30) なお供託金に限っては「スポンサー」が出したとのことである。
(31) 「集英社オンライン」 2024年7月1日 「〈カオスすぎる東京都知事選〉ついに脱ぐ女性候補まで現れた!「やりすぎでは?」「選挙をバカにしていませんか?」と本人を直撃「そもそも公約あるんですか?」と聞いてみると…」
https://shueisha.online/articles/-/250945(2024年7月4日閲覧)
(32) 東京新聞 2024年6月13日 「「凸はするかも」つばさの党代表が都知事選に出馬へ 勾留中の黒川敦彦被告の声明文を党関係者が発表」
(33) 衆院東京15区補選の立候補者であった根本良輔容疑者が拘留されている。
(34) X 「渓流」(@hcsvz1DlkZNeMog) 2024年6月23日午前8時30分の投稿
https://x.com/hcsvz1DlkZNeMog/status/1804658220956520749(2024年7月13日閲覧)
(35) 詳しくは拙稿 「【選挙徘徊記】2024年 衆議院・東京15区補選 感想」
https://note.com/saiiki6111/n/n451ce8ebd4d0
(36) 「文春オンライン」 2024年6月26日 「「裸ポスターを貼ったのは…」都知事選“ジョーカー候補”が初激白!「今回のポスターでも局部は隠した。そもそも…」「イメージはあの大物ハリウッド俳優」」
https://bunshun.jp/articles/-/71678(2024年7月14日閲覧)
(37) X 「AI メイヤー」(@tama_ai_mayor) 2024年6月20日午前10時32分の投稿
https://twitter.com/tama_ai_mayor/status/1803601733433852282(2024年8月1日閲覧)
(38) 宮原ジェフリー 「自称「現役の織田信長」、記者会見で「討ち入りじゃー!」と叫ぶ、「ネオ幕府」将軍…都知事選を騒がせる「武将系」3候補に直撃取材」 「現代ビジネス」 2024年7月6日
https://gendai.media/articles/-/133146(2024年7月14日閲覧)
(39) 東京都選挙管理委員会事務局 「東京都知事選挙 選挙公報」
https://www.senkyo.metro.tokyo.lg.jp/election/senkyo-kouhou/tochiji-kouhou/(2024年7月23日閲覧)
(40) アキノリ将軍未満氏の名刺より引用。
(41) 宮原、前掲記事
(42) なお、後藤氏の23日の牛込箪笥区民ホールでの個人演説会については、明治学院大4年の中村眞大氏も取材を行っている。YouTube 「中村眞大 /ドキュメンタリー取材する大学生」 2024年7月2日 「ゴトウテルキ候補 子ども・若者向け政策突撃取材【東京都知事選挙2024】」
https://www.youtube.com/watch?v=1z4oe3CZlYU (2024年7月20日閲覧)
(43) 畠山、前掲書
(44) 畠山 『コロナ時代の選挙漫遊記』(集英社、2021)
(45) 都議選について、詳細は同書。
(46) 朝日新聞デジタル 2024年5月30日 「清水国明氏が東京都知事選への立候補表明、「災害対策に力入れたい」」
https://www.asahi.com/articles/ASS5Z1V77S5ZOXIE01GM.html(2024年7月14日閲覧)
(47) なお、元東京地検特捜部検事の若狭勝弁護士によれば、本来有償で提供されるプロの歌を「候補者を当選させる目的で有権者にサービスとして無償提供していれば、公選法第221条で規定された買収及び利害誘導罪に該当する可能性があ」る、とのことである。「週刊文春」編集部 「松山千春のあの曲が……参院選自民候補の応援で公選法違反の疑い」 「文春オンライン」 2022年6月29日
https://bunshun.jp/articles/-/55571(2024年7月27日閲覧)
(48) NEWSポストセブン 2024年7月9日 「《東京都知事選ルポ》主要候補から外れた清水国明氏、柴又駅前でなぜ安野貴博氏と“共闘”したのか? その背景に他陣営がスルーした安野氏の“グループLINE”計画」
https://www.news-postseven.com/archives/20240709_1976398.html?DETAIL(2024年7月20日閲覧)
(49) 東京新聞 2024年5月17日 「石丸伸二・安芸高田市長「実行したいのは東京の発展、地方の発展、国の発展」 東京都知事選に出馬表明」
(50) 取材不足 「都知事選に出馬表明した安芸高田市・石丸伸二市長は「恫喝裁判」「73万円踏み倒し裁判」で相次ぎ敗訴…!それでもSNSで大絶賛される若きエリートの「実像」」 「現代ビジネス」 2024年6月6日
https://gendai.media/articles/-/131181?imp=0(2024年7月20日閲覧)
(51) 例えば東京新聞 2024年7月7日 「「石丸フィーバー」なぜ起きた? 「政治が面白い」「人柄を信じられる」と無党派層に言わせた独自の戦略」
(52) 例えば「NHK政治マガジン」 2022年7月10日 「新興勢力「参政党」国政政党目指す戦い 初の議席獲得」
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/85833.html(2024年7月30日閲覧)
(53) なお、作家・ジャーナリストの鈴木エイト氏は、石丸氏の手法を「目覚めた市民に選民思想を植え付けボランティアスタッフとして取り込み、やりがいを与えて、「信者」を増殖していく。ある意味、カルトや自己啓発セミナーなどの手法を採り入れているとも言える」と評している。「みんかぶマガジン」 2024年7月20日 「鈴木エイト氏、石丸伸二氏に「カルト問題取材者として一番危うさを感じた」…”反ワク票”が10万以上にも危機感「聴衆には幼い子も」」
https://mag.minkabu.jp/politics-economy/26878/(2024年7月20日閲覧)
(54) 読売新聞オンライン 2024年7月8日 「都知事選、SNS駆使の石丸伸二氏が善戦…「ネット選対」で支援拡大し若い無党派層の受け皿に」
https://www.yomiuri.co.jp/election/tochijisen/20240707-OYT1T50132/(2024年7月27日閲覧)
(55) 東京新聞 2024年6月12日 「蓮舫氏が立憲民主に離党届「都民のために無所属を選んだ」 小池百合子知事の3選出馬にぶつける」
(56) 新社会党 公式HP 2024年6月26日「やさしい東京を蓮舫知事で実現へ 都知事選告示」
https://www.sinsyakai.or.jp/board/detail.cgi?sheet=hp2&no=915(2024年7月14日閲覧)
(57) 産経新聞 2024年7月7日 「小池都知事が3選確実、逆風に苦しむ自民に朗報 「ステルス作戦」が奏功か」
(58) なお、週刊現代記者の小川匡則氏は選挙後に、「蓮舫陣営の最高責任者であった立憲の手塚仁雄都連幹事長は告示前の段階で、「本人は全力でやってしまうから、何箇所もやると喉がもたない」として、1日1、2箇所程度の演説にとどめる方針を示していた」と明かしている。小川 「「2位でもダメ」のまさかの歴史的惨敗…!蓮舫陣営の甘すぎた都知事選目算と5つの敗因」 「現代ビジネス」 2024年7月8日
https://gendai.media/articles/-/133377?imp=0(2024年7月20日閲覧)
(59) 東京新聞 2024年6月21日 「「東京の未来が見えますか?」 オードリー・タン氏も認めるAIエンジニア安野貴博氏が東京都知事選に挑む」
(60) 畠山、前掲書(2019)
(61) 本節で触れる3名と小池氏のことである。
(62) NHK 2024年7月7日 「都知事選 2024 開票結果 投票率は 小池都政への評価と今後 56人の得票は」
https://www.nhk.or.jp/shutoken/articles/101/008/00/(2024年7月27日閲覧)
(63) なお、ネット上では「参政党が実質的に支援したことがマイナスに働いたからだ」という意見があるが、私はこれが誤った分析であると考える。今回の選挙戦において「参政党」の名前が大っぴらに語られることはなく、またたとえ同党党員が田母神氏を個人的に応援していても、大半の有権者は彼/彼女が党員であることを知らないと考えられるからである。
(64) YouTube 「TBS NEWS DIG Powered by JNN」 2024年7月7日 「【LIVE】小池百合子氏が当選確実 東京都知事選挙2024 開票速報&“最速”データ分析【選挙DIG】」
https://www.youtube.com/watch?v=ByxqGQcVbL0(2024年7月27日閲覧)
(65) この点は拙稿 「参政党が失った「追い風」とは 〜三春充希 『【特集】第26回参院選(2022年)参政党』前半部分と、それへの感想を基に〜」にて触れている。
https://note.com/saiiki6111/n/n3d18ff312e44
(66) JNNの出口調査において、参政党支持層が他の政党の支持層等と比べると最も「その他の候補」に投票していること、及び内海氏が前述の通り参政党の離党者(≒参政党の理念やそれと類似する内海氏の主張に賛同できる者)からの応援を受けていることから、このように推測した。
(67) 畠山、前掲書(2019)
(68) 畠山、前掲書(2021)
(69) 無論、この結論はこれらの「独立候補」を無条件に礼賛するものではない。例えば見物後に知ったのだが、アキノリ将軍未満氏の「在特会の立ち上げに関わ」ったという経歴は看過してはならないものであろう。宮原、前掲記事。
※特記の無い写真は全て筆者撮影。