生まれてはじめての入院がこれ〜移住日記11闘病編
入院初日、奥さんの運転する車で病院まで送ってもらう。
自家用車は居眠り運転で全損事故を起こし廃車になっていたし、頭の自分は眠れないのとうつ状態がひどいので運転がかなり困難な状態であった。
入院の同意書と家族のサインを書いて自分ひとり病練に通されると入院の説明を聞きながら遅めの昼食、メニューはオムライスだった。味はわからん。味が薄めだったのか味覚が死んでいたのか、今でもどっちなのかわからない。
食べ終わると手荷物のチェック。空港かな?って感じのチェックで、まず鉛筆やボールペンなどのペン類は持ち込みできない。単純に刺したりできるので危険物ということらしい。ズボンのベルトやヒモ類もダメでヒモでウエストをしめるタイプのジャージを着ていたのでヒモをとられて非常に頼りない感じになってしまった。これも首を吊ったりする恐れがあるためである。
携帯電話、髭剃り、シャンプーリンスなどはナースステーションの金庫の中に預かりとなる。必要なときは出してもらえるらしい。携帯電話は上司からの着信が5件くらい入っていたので喜んで預けることにする。
病練の入り口は巨大な金属の扉があり、廊下がありまた金属の扉、その向こうに玄関っぽい扉の三重構造で全部に鍵がかかっている。なかなか物々しい。これくらいしないと脱走しちゃうよね、と中で生活してみるとよくわかる。そして中の状態の悪い人たちは脱出してしまったらもう事故だよな、と思うくらいなので厳重なのは仕方ない。
ちなみに面会の時はインターフォンで職員を呼んで病室ではなく職員立ち会いで別室で会う。羊たちの沈黙のレクター博士の面会ほどではないがあれに近い空気感はある。
コップを持ってくるように言われていたのだが、ステンレスのアウトドアで使うコップは武器になりかねないという理由で却下され、改めて100均の軽いプラのコップを買ってきてもらうことにした。
初日はナースステーションの横の個室に入ることになって夕食まで病室にいた。ドアはなるべく開けておくように言われていたので開けておいたのだがパタパタと走り回る看護師さんが見えてよく働くなあと思ったりもして、それでいて自分は働かないなあと思ったりもした。部屋にあるカメラですら働いているのに働かないでいいのだろうか、なんて思っていた。らしい。病気だね。
昼は長く、夕食後も長く、ほんの少ししか開かない窓と木目調に偽装されたコンクリート製の頑丈な建物は夜になるととても冷えた。睡眠薬をもらったが寝付けず、たまに聞こえる奇声と巡回の看護師さんの照らす懐中電灯に照らされながら、こうして入院生活がはじまった。