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■2022年上半期■大好きなほんを探して⑬(2022.6)

(★は特にだいぶよかったやつ)

1月
・マロウン死す サミュエル・ベケット 宇野邦一訳
・アフター・クロード アイリス・オーウェンス 渡辺佐智江訳
・愛についてのデッサン 野呂邦暢 岡崎武志編
・名づけられないもの サミュエル・ベケット 宇野邦一訳
・教育 遠野遥
・オン・ザ・プラネット 島口大樹

→野呂邦暢は話題になってて読んだ。びっくりするほど直球ミステリーで、正直単純だったけど、古書店ミステリーっていう雰囲気はここにしかない感じで、楽しかった。
 遠野遥と島口大樹を続けて読んだ。遠野遥はすごく構築されてるっていう印象で、まとまってる。島口大樹はもっとふらふら進んでいく印象。でも最後を見ると、島口大樹はすごく計算高い。
 どっちも最近の男性作家で好きだけど、個人的な好みには島口大樹のほうがぐっと近い。保坂和志イズムみたいなのがあるけど、ネタがテン年代のカラーが強くて、なじみやすい。『オン・ザ・プラネット』で芥川賞とって、もっと流行ってほしかったな。

2月
・太宰治全集1 太宰治
・新訳ベケット戯曲全集3  フィルム
・流刑地にて カフカ 池内紀訳
・あなたを閉じ込めるずるい言葉 森山至貴
・天才たちの日課 メイソン・カリー 石田文子・金原瑞人 訳
・新訳ベケット戯曲全集1 ゴドーを待ちながら・エンドゲーム

→ベケットをしっかり読み始める。なんでだか、「ゴドーを待ちながら」が一番いいだろう、と期待していた割にそこまで来てくれない。「フィルム」の中に入ってるへんてこな話の方が印象に残る。滑稽で、底なし。
 三鷹の水中書店で買った太宰全集は、一巻読んだだけなのにすごく長かった。なんでだろ。

3月
・零度のエクリチュール ロラン・バルト(旧訳)
・タゴール・ソングス 佐々木美佳
・吠える その他の詩 アレン・ギンズバーグ 柴田元幸訳
・断食芸人 カフカ 池内紀訳
・かもめ・ワーニャ伯父さん チェーホフ 神西清訳
・失踪者 カフカ 池内紀訳
・舟を編む 三浦しをん
・編集者とタブレット ポール・フルネル 高橋啓訳
・女たちよ! 伊丹十三
・二十世紀:ある小路にて シャイレンドラ・サーカル カシナート・タモト編 三枝礼子、寺田鎮子訳 ★

→いろいろ読んだけどネパール女性作家選がよかったな。短調で、分量も短いものが多かったけど、文の節々になんかこもっててよかった。短編の、短編らしいよさ。
 カフカの「失踪者」はカフカの中でいちばん好きかも。「ワーニャ伯父さん」も「ドライブ・マイ・カー」の影響で読んだけど、話の筋の込み入り具合の割に、話としてシンプルなよさがあって、ああ、こういうのが名作なんだな、という感じ。

4月
・マイトレイ ミルチャ・エリアーデ 住谷春也訳 ★
・こころの旅 神谷美恵子
・「書き出し」で釣り上げろ レス・エジャートン著 倉科顕司、佐藤弥生、茂木靖枝 訳
・ショート・ショート・ヘアー 水野葵衣
・ワット サミュエル・ベケット 高橋康也訳

→「マイトレイ」がとてつもなかったな。河出の世界文学全集にはいるのもうなずけるけど、こういう作品に光が当たるのはすごくいいことだと思う。男性目線、オリエンタリズム、名前をつけることはいくらでもできるけど、この小説で語られてることはそういうことではなくて、本当は「誰にでも起こりうること」、普遍的なラブストーリーだと信じたい。私小説的な意味合いを超えてる気がする。
あとはベケット狂いを続けた。ワットはまだ読めた方だった。「読めない」「掴めない」「意味がわからない」の、病みつきな心地よさ。

5月
・ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観  ダニエル・L・エヴェレット 屋代通子訳
・個人的な体験 大江健三郎
・映画を早送りで観る人たち 稲田豊史
・百年泥 石井遊佳 ★
・生きがいについて 神谷美恵子
・弱いつながり 東浩紀 ★

→今池のシマウマ書房で買った「百年泥」がすごくよかった。記憶を繋ぐ。斜め上の場所から繋ぐ。読書でしか味わえない、映像にしてしまっては面白みが激減する、文章の魅力がすごく引き出されていた小説。
大江健三郎もやっぱり大好きだし、初めて読んだ東浩紀もよかった。東浩紀は短すぎたけど。
場所が思考をかえる、って本当にそうだと思う。実家の机じゃないと書けない文書ってあるし。

6月
・審判 カフカ 池内紀訳
・地方で働き、地方で生きるという選択 森康彰
・ザボンの花 庄野潤三
・事の次第 サミュエル・ベケット 片山昇訳
・往復書簡 ひとりになること 花をおくるよ 植本一子 滝口悠生
・聖なるズー 濱野ちひろ ★
・ポロポロ 田中小実昌

→庄野潤三がよかった。あとは「聖なるズー」、これを書くというのはほんとうに、ボンジョヴィがひと晩でハゲるぐらいのストレス、それに見合う闘いがあったんだろうと思った。それをしっかり受け止めたいと思って読んだ。
地方移住を勧めてた幻冬舎の本は、はっきり言ってすごく残念で、この数年で読んだ本の中でいちばんひどくて、頭にきた。地方で暮らす肌感がまったくない上に、「京セラフィロソフィ」の広告みたいな内容だなんて、何を思って編集したのか? と言いたい気持ちを抑えられない。
田中小実昌の軽妙な語り口×凄絶な経験、という戦争小説群にはビビる。


ほそぼそと読んだ記録だけとってました。
だいたい会社の行き帰りによむ。家で1人で暇な日も読む。でもプロ野球がやってたらそっちを最近は観る。
来週は鎌倉殿の13人がないので、日曜の夜に何をしたらいいのかわからない。

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