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尾道滞在-2021/06/12

正直に書くと、この日は記録がない。

いつも日記を三日坊主で終わらせるわたしが、例のごとく力尽きたようだ。写真やSNSでの投稿があれば思い出せるが、それもない。

この機会に、apandaにお渡しした本の話をしようと思う。

apandaに滞在する条件の中で「作家自身が影響を受けた本を一冊寄贈する」というのがある。わたしは佐藤多佳子 著「黄色い目の魚」を持っていった。

https://www.shinchosha.co.jp/book/123734/

確か家の近所の天牛書店で、安価な小説をまとめて買った際に出会った本だと思う。佐藤多佳子は「一瞬の風になれ」が有名で、ご存知の方も多いかもしれない。内容問わず文章が全体的に爽やかで好きな作家だ。

「黄色い目の魚」は美術の話なので、作家がこれを選ぶのは安直な気がしてしまう(漫画家が漫画の話を描くようなのが苦手なタイプである)が、今までで一番読み返した小説なので仕方がない。木島の「絵のことだけを考えていられる四年間」という言葉をきっかけに大学で絵を学ぶことを決めたので、影響を受けた本といえばこれだった。

内容としては、ゲージュツがどうのこうのより心理描写が主である。高校生の頃は木島に感情移入し、社会人になってからはみのりに共感した。似鳥ちゃんや通ちゃんの気持ちはまだ分かりきれない。

apandaへの寄贈は古新どちらでも良いとのことで、これを機に新本と交換するか迷ったが、わたしが何度も読み返したのは古本の方なので、新本をお渡しすることにした。差し上げるものだし、この選択は正解だったと思う。

大学生の頃から、教養不足を補完しようと文学史に出てくるような本ばかり読んでいるので、そろそろ現代小説を思いっきり読みたい。乾いた喉に、冷たい水を一気に流し込みたい気分だ。「読む」と「飲む」は、音も感覚も似ている。

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