取材◆八尾②-2024/5/22
今日は、八尾のLINOASで今後仕事で描くシーズンビジュアルについて打ち合わせをする日だ。
11:00に近鉄八尾駅 集合だったので、合わせて家を出る。
今日の近鉄は学生で混み合っていた。長瀬駅で大半が降りたので、近大生だろうか。通り過ぎる駅は、大和朝倉、弥刀など"奈良っぽい"駅名が多い。
駅に着き、クライアントからLINEがきたのでLINOASへ向かうと、前からサングラスにロン毛でMacBookをかかえた爆イケのお兄さんが現れた。声をかけられて初めて、今回ディレクションでお世話になる株式会社ミライズのかただと気づく。彼とは事前の打ち合わせで一度会っているのだが、前回よりも爆イケ度が増していて気づかなかった。
一緒に館内へ入り、LINOASの会議室で打ち合わせが始まった。
参加メンバーは、今回私の直接の取引先であり先ほどの爆イケお兄さんが所属している株式会社ミライズ(ディレクション担当)の方々、LINOASを運営する会社の方などで、思いのほかたくさんの人が参加しており、緊張で滴るほど汗をかいた。どの方も大変優しくしてくださり、嬉しくなればなるほど、ここにいる人々の幸福度が自分の仕事の出来によって上がり下がりするのだと思うとプレッシャーが大きい。
打ち合わせは終始穏やかな空気で、八尾出身であるLINOASの方が八尾の色んな名所を教えてくださり、シーズンビジュアルで描く場所のピックアップができた。
その後、スケジュールや流れを確認し、解散。
一人になったので、八尾探検の続きをすべく「八尾市立図書館」へ行くことにした。
道中、図書館でお腹が鳴ると恥ずかしいし、先にご飯を食べたほうがいいかもしれないと気づいた。前回はチェーン店に入ってしまったので、今度こそ地元ならではの飲食店に入ろうと、店を探して歩く。前回は気づかなかったが、路上ゴミがあまりない街だ。ごちゃごちゃしているのに街が綺麗なのは、歩いていて嬉しい。
図書館方面へ向かう歓楽街を抜けると、由緒のありそうな大きな和風の家々が現れた。このゾーンだけ、雰囲気がどっしりしていて優雅だ。綿や作物を玄関先で販売しているお家がある。古民家の続く道沿いに、手書きのランチの看板を見つけた。しばし考えて、中へ。
「cafe KUKURU」というらしい。
入り口は小さいが、中へ入ると大きな空間が広がっていた。
天井が吹き抜けで開放感があり、調度品も重厚感がある。カウンターの奥のちんまりとしたテーブル席に座った。雰囲気があまりに素敵で速攻店内撮影の許可を尋ねそうになるが、まだ注文してもいないので、気持ちを抑えつつメニューを見る。
キーマカレーがあり、長崎の燈家のカレーを思い出して食べたくなった。辛いかどうか訊くと、「多分大丈夫」とのことだったので注文。少し時間がかかりますが良いですか?と聞かれ、はいと答える。素敵な空間で長居できるのは、むしろありがたい。
長い木製の棚に八尾百景というタイトルの本が置いてあり、古い家具の上は八尾にまつわる人々のDM置き場になっていたりなど、八尾らしさが詰まっている。前回とは打って変わって、今回は八尾ならではのお店に入ることができた。「植田正治のつくりかた」という本があって読みたくなる。絵本会のフライヤーも置いてあり、多分、ここは文化的なお店だ、と思った。
あちこちに、八尾名産であるフエキノリのケースが並んでいる。
店内は穏やかで、座っているテーブル席はカウンターから離れた端っこから空間をながめられる心地よさがあり、隅で小さくいるのが好きな自分にとっては、行きつけにしたい雰囲気のお店だ。長崎にも尾道にも八尾にも行きつけにしたいお店があるが、なかなか地元で見つけられない(そもそも理由がないと一人で外食をしないタイプである)。
店内BGMは、わかりやすく言えば「無印良品の曲」。in livingさんのBGMでもあり、haruka nakamuraでもある。どれもわたしのお気に入りだ。
しばらくして、キーマカレーが来た。おいしい!覚悟していたよりもマイルドな辛さだ。とろけたチーズと、つぶつぶしたカレーのスパイスが心地よい。ごはんとルーの間に焼き卵が挟んであり、辛さを緩和してくれる。食べ終わった頃には、暑くないのにさらさらの汗が流れていた。
note用に店内撮影の許可を取りたいが、なかなかタイミングが掴めない。しばらくピクミンブルームでピクミンに餌をやっていると、お盆を下げにきてくださり、そのタイミングで訊くことができた。ありがたく撮影させてもらい、レジに向かいがてら店内のテイクフリーのフライヤーを何枚かもらった。お支払いは現金のみで、ギリギリ払えてホッとする。さいこうなランチタイムであった。
満たされたお腹と共に、図書館へ向かう。
途中で面白い形のガラスがはまった建物があった。
道なりに行くと、工事中の「八尾市役所」や、「八尾市市民活動支援ネットワークセンターつどい」があり、ネパール語を習える講座のポスターなどが掲示されていて興味が湧いた。貼られているポスターで、今から行く八尾市立図書館の3Fに今東光資料館があるのを知る。
八尾市立図書館へ到着。
中へ入り、しばらく探検する。
大活字本のコーナーがあった。記憶にないだけかもしれないが、おそらく初めて見る気がする。文学史にのっているような古い作品だけかと思いきや、西加奈子など近年の作家の本もあり驚いた。20代の健康体である私でも文字は大きい方が読みやすいし、さまざまな人が本を楽しめる配慮があるのは素敵だと思う。
単行本も充実していて、芸術本も新しいものがそこそこある(木内達朗の画集があった)。八尾のフリーペーパーも置いてあり、しばし楽しんだ。
ちゃっかり自分が装画を担当した本を探してみたりする。図書館で自分の絵を見るなんて、不思議な気持ちだ。
2Fに八尾についてのコーナーがあり、そこから本を3冊取って読む。
小学校3・4年生向けの教科書が、わかりやすくて良かった。
地元の消防署で防災を、警察署で交通安全を学ぶ。八尾の農家や工場、ゴミ収集車の人のインタビューから、どんなしくみで街が動いているのか勉強でき、同時に八尾の特徴も知ることができる。とても良いアプローチだと思った。
小学生向けなので、掲載されているインタビューも「出荷日」が「お約束した日」と言い換えられていて、なんとも上品だ。高安山や玉串川の桜、河内音頭祭りのギネス登録など、直前の打ち合わせで八尾出身の社員さんに教えてもらった場所が続々と登場し楽しい。
氾濫を繰り返した大和川の、1704年の付け替えに関しての記述もあった。川の移動には反対も多数あったようだが、賛成と反対の意見が小学生用に丁寧に噛み砕かれ、"です・ます調"で理路整然と書かれてあり、日々ネットの政治的な罵詈雑言を目にする身にはたいへん美しいディベートに映った。川の移動は全て人の手で、7ヶ月で終えられたとのこと。
16:00ごろ、3Fの「今東光資料館」へ。
今東光は直木賞作家かつ住職で、八尾や河内にまつわる話を多く書いている。菊池寛、横光利一、谷崎潤一郎などとも交流があったようだ。
個人的に、行政が運営する展示はそこまで手をかけられていないイメージがあったのだが、思いのほか気合が入っていてびっくりする。アクリル板に名言が印刷され、本が魅力的に陳列されており、棚には埃がなく、パネルも角が折れておらず、全てがしゃんとして垢抜けた清潔感が漂っていた。すごい!
展示室は一つだけだが、彼の生涯や著書、それをもとにした実写映画のポスターなど情報が詰まっていて、じっくり観ることができた。
図書館に数時間滞在し、そろそろ帰宅することに。
帰り道で、金色のポストや八尾デザインのマンホールを見つけた。
社会人として信用を失いそうなエピソードだが、帰りはまた電車に手こずった(打ち合わせの時は気を確かに保っているのである!ほんとうである)。
言い訳をするなら、仕事で返信に迷うメールを打っており、気づくと乗り過ごして近鉄 布施駅まで来ていた。
すでにドアが開いていて、車内はたくさんの近大生で詰まっている。慌てていない振りをしながら降りようとドアへ向かった瞬間、扉が閉まった。大学生群の前でしっかりと「降りれなかった人」になり、車内で恥ずかしさをこらえる。
次の今里駅で下車。何も考えず、今里駅で反対側のホームに上がる。
と、そこは戻ろうとしている河内国分方面ではなく、奈良へ行く電車のホームだった。なんなんだこの駅は(なんなんだわたしは?)。
やたらと階段を上り下りし、ようやく河内国分行きのホームに辿り着き、無事に乗り換え、家に到着。
今日はビールを飲む。絶対にのむぞ。