オンライン体験学習の卒業式
【オンライン学習支援校プロジェクト50】
令和3年度末3月18日、オンライン体験学習の卒業式を行いました。半年間のオンライン学習最後の日の最後の学習(じゅぎょう)が終わった後に、修了式と合わせて15分ほど時間をとってオンライン上で行いました。登録者の2割程度の参加でした。それでも心に残る場となりました。
もともとは卒業式や修了式という儀式をする予定はありませんでした。オンラインスクールではそもそも学校行事などありません。学習も個人のペースで進め、参加も自分の選択で自由にやってくる、体験学習の場なのですから。学習以外でお互いが関わり合う、しかも練習や準備が必要な行事の形に、私たちオンライン小学校担当者2人は否定的でした。そのようなスタイルに居づらさを感じる子どもがいるとわかっていたからです。
しかし一人の子どもの言葉で、私たちはそのことを考え直す機会を得ました。それは次のような朝の出席カードに書かれた文章です。
「提案なんですけど、オンライン卒業式やりたいです。私(学校の卒業式に)出れなくて。無理なら大丈夫です。頭の片隅にでも置いてくれたら嬉しいです」
これまで「学習でやりたいことがあったら言ってね。無理なことはできないけど、できそうなことはどうやったらできるか考えてみるから」と言ってきたから、この子どもの提案を当然担当者で協議することにしました。
そして結論として「オンライン卒業式をしよう」となりました。
ただし学校でやるような卒業式とは異なり、オンライン上でできる範囲で無理なくするということ、名前を呼ぶことはしないこと、参加も自由であること(つまり出たくないなら堂々と出なくて良い)、時間もジャーネタイムでできるような短時間ですること。
そのような条件を明確にし、具体的な内容は提案した子どもと私たちで考えていくことにしました。
そして決まった内容は以下。
1 6年生一人ひとりに「卒業カード」を送る(担当者のTたちから6年生へ)
2 Tたちから卒業生へオンライン画面で「贈る言葉」を話す
3 卒業生から(提案した子どもが代表として)メッセージや思いをオンライン上で伝える
また5年生以下へのオンライン修了式も同時に行い、5年以下の参加もOK.
最後のオンライン体験学習日の12時、6年生11人中3人が参加しました。また、5年生以下も数名参加しました。その中で驚いたのは、卒業生からのメッセージを提案した子どもが「声を出して」読んだことでした。カードを送ってくれたらみんなに見せるよ、と伝えていたのですが「マイクオンにして読みます」と言っていました。こちらもドキドキしていましたが、本当にその子は読みました。オンライン上で聴く初めての声です。
事前に原稿を送ってきて「これでいいだろうか」と校正をお願いされました。でも基本的に文章はある程度できていたので、わずかに書き直しをして返しました。それを推敲し、何度も読む練習したのでしょう。はっきりとした声で、淀みなく読みました。私たちは聴いていて胸にこみ上げるものがありました。参加者の心にも響いたことでしょう。こうやって令和3年度のオンライン体験学習は修了しました。3ヶ月経ち、ようやくこの日のことを伝えることができました。
ここにくる子どもたちは、かなり一人一人の実態が違います。そして、学校生活(学習)中に、苦手な部分、学びづらいきっかけとなっていることがあります。それらを無理に設定したり強制したりすることをしないのが、私たちの基本姿勢です。しかし、ある出来事や場所に一歩踏み出したい、チャレンジしたいという子どもがいた時、そのような子どもと一緒になって考え、新たな世界として、その扉を開けることは決して無駄じゃないな、いやむしろ必要なことかもしれない、そう思いました。それを気付かせてくれた子どもに感謝します。
ただ大切なことは「子どもが自ら考え、選択し、決定すること」。それはこれからも、忘れないようにしたいです。