天邪鬼
髪を切った。ブリーチをしてボロボロになったこの一年分くらいの毛先と付けたばかりのエクステとお別れをした。
母親は私を髪が長くて綺麗な色白の女の子に育てたかったのだと思う。夏は日焼け止めを欠かさせず、小学生の途中まで毎朝髪を結ってくれる人だった。
数日前の日曜日、思い立ったが吉日だと小学生の頃並みのショートカットにした。
そのせいで、ふとあの時あんなに大事に伸ばしてくれていた髪の毛を自ら切りたいと言ったのかを考える羽目になった。
プリキュアだってアイドルだって好きになるのは髪が長くてお淑やかな儚い女の子の方で、短髪だったり活発な女の子は好きじゃなかった。でも、かっこいいと思うのはいつも後者で。好きなものとなりたいものが相反してる私はいつも中途半端だった。
目立つことは怖い。期待をされたり愛されたりするといつ失望されてしまうんだろうと、周りに鉄格子を置かれたように思う。
好きだった人がショートカットの女性が好きだと言っていた。それを聞いた時は染まるのなんか嫌だなと無かったことにしていたけど、失恋して終わってみたら無性にあの子の好きな女の子になってみたくなった。
そうじゃないと、伝えもしなかった気持ちごと無くなっちゃう気がして、それは本当にさみしいことだなと思ったから。
いろんな人から急にどうして切ったの?と聞かれる生活が数日、飽きることなく「失恋したからです」と答えては「絶対嘘でしょ」と笑ってもらえる。それだけで本当に少しずつ救われていく。
次誰かを好きになったら次こそはちゃんと大事にしてせめて叶わなくても伝えようと思って、もう何度も自分の手でぐちゃぐちゃにして、私はいつまで私の気持ちを踏み躙れば気が済むんだろう。
あと何回、何年、悲劇のヒロインみたく不貞腐れて生きていく気なの?
ぼくを嫌いな人たちの言葉ばかりを信じて、大事にしてくれる人たちの言葉には耳を塞いで、そんなのもうやめようよって。私はとっくに限界だった。
不幸になるために生まれてきたわけじゃないと口では言うくせに心の奥底ではそうなのかもしれないと思って生きてるダサい自分がもう嫌で嫌で悔しくて泣きたくなるほど嫌いだ。
だから、もう終わりにしようと思って髪を切った。よく嘘みたいな軽さで褒めてくれたあの子が見たらきっとまた思ってもないくせに良いねって言ってくれるだろうなって毎日思えるように。
言葉を綴ることはお祈りだ。書きながら泣いてしまう私はこれからも何度だって失敗するし上手くなんか生きていけないと思う。
でも、明日から、今日から、もうちょっとだけ素直に生きてみようと思うんだ。正論がすべてじゃないと信じたいのに信じられないから、それなら自分が作るしかないだろう。
めちゃくちゃでいいし、頭が良いなんて思われなくていいし、と口だけで言ってきたことを自分のものにしていくんだ。私は私だけのものなんだから。
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