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【観劇記録】30-DELUX NAGOYA 「国性爺合戦―虎が目覚めし刻―」

2024年12月13日から15日名古屋市青少年文化センターアートピアホールにて上演された、30-DELUX NAGOYA The Fourth Live 「国性爺合戦―虎が目覚めし刻―」全4公演を観劇。

出典: 30-DELUX NAGOYA

「国性爺合戦」は人形浄瑠璃として近松門左衛門が江戸時代に執筆した作品。のちに歌舞伎版も上演されており、2016年には30-DELUXが「新版 国性爺合戦」とし、全国4都市で1万人を超える動員を記録した。
今回は、名古屋版として作・演出に刈馬カオス氏を迎え、氏のアレンジにより、分かりやすく、更にドラマティックにエンターテイメント性を高め、「笑って、泣けて、考えさせられて、カッコいい」という30-DELUXのテーマにぴったりな作品となっていた。

あらすじ
 時は17世紀。のどかな漁師町・平戸に老一官が暮らしている。かつては明国皇帝の側近だったが、皇帝の怒りを買い、祖国を追われ日本に辿り着くと、妻と結ばれて1人の息子に恵まれた。 息子の名は和藤内。明と日本の血を引く男は「運命の子」として剣術を仕込まれる。だが彼は、遠い国の会ったこともない人々に思いを馳せることができず、戦地に赴くことなく愛しき妻・小むつとの平和な日々が続くことを願っていた。 そんなある日、明国皇帝の妹・栴檀皇女が流れ着く。聞くと、家臣・李蹈天が隣国・韃靼に寝返り、明が滅亡したという。和藤内は母からの「困っている人を助ける」という教えを胸に、明の民を救うべく海を渡ることを決意した。 海を越え国境を越え、国を奪われし人々が、国を奪い返す壮大な物語が、今はじまる。

30-DELUX NAGOYA

祖国のため、家族のため、仲間のために命を懸けて戦いに挑んでいく姿や、さまざまな愛の形が描かれており、特に最初の見せ場となる思想列と華清夫人の話がとても印象的だった。

明の皇帝、思想烈(田中精)とその皇后、華清夫人(斎藤美七海)。
二人のストーリーは、敵国である韃靼國からの使者、梅勅(平野泰新)が来た日、臨月の華清夫人のお腹を撫でながら、生まれてくる子の性別を家臣の呉三桂(村井雅和)と李蹈天(名古屋虎三郎)に尋ねる思想烈のシーンから始まる。
刈馬氏の脚本では詳しく書かれていなかった部分に、田中精氏が考えたネタが随所に散りばめられたとても楽しい場面。
特に見事だったのは、追放した和藤内の父、鄭芝龍(杉本明朗)を華清夫人が渋くて好きだったと思っていたと聞いた思想烈があまりのショックに大の字に寝転がってしまうシーン。立ち上がれる一言を下さいと要求する思想烈に華清夫人と李蹈天が寸劇を行うのだが、これが毎回違うパターン。
(初日は、クララが立った!のアルプスの少女ハイジの名シーン。2日目マチネは、アンパンマンのマーチ。ソワレは、風の谷のナウシカの「その者、青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」のシーン(大ババは李蹈天役の名古屋虎三郎氏)。千秋楽は、ワンピースのOPナレーションからの「ウィーアー!」)
その後、李蹈天の裏切りにより韃靼国の兵に城が占拠されようとしてしまうのだが、思想烈は逃げずに最後まで民と国の為に戦う覚悟をする。
華清夫人との別れの時、優しく微笑む思想烈の顔は忘れられない。
そして、李蹈天に斬られた思想烈は玉座に倒れ込み絶命する。李蹈天は思想烈の亡骸を蹴り飛ばし、亡骸は階段を滑り落ちる。
思想烈の最期まで皇帝を全うした姿、李蹈天の残虐さと王座を奪うことを可視化したこのシーンは圧巻だった。
呉三桂と逃げた華清夫人は、敵の狙いは自分の中に宿る世継ぎ子だと気付き、呉三桂に腹を裂いて子を出して逃げよと懇願する。
優しい呉三桂はそんなことはできないと泣き崩れる。
華清夫人は、呉三桂の剣で自ら腹を切り裂き子供を取り出す。血濡れの我が子を抱きながら息絶える華清夫人の姿は神々しく、母の顔で我が子を抱き呉三桂に未来を託し逝った姿には涙が溢れた。
二人共、梅勅が来る時までのテキーラ観覧車したーい!などとパーティーピープルみたいなやりとりとその後の演技のギャップが凄かった。

物語は韃靼国から明を取り戻した和藤内(村瀬文宣)が日本へ帰り、小むつ(高畑結希)と海辺で寄り添い「あれは……戦争だった……」と小むつの胸で慟哭するシーンで終わる。
未来で起こる、終わらない戦争を示唆しながらハッピーエンドだけでは終わらないラストもよかった。

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