空飛ぶ仕事を辞めて
2023年3月13日、私はCAとしてのキャリアに幕を閉じた。
自分の人生における大きな分岐点になるであろうこの決断について、このnoteに言葉を綴りたいと思う。
ラストフライトは最後に相応しいハッピーフライトだった。
お客さんが「Thank you!」「Nice flight!」と笑顔で降りていくその姿を見て、なぜだかこみあげてきた涙を必死にこらえたのを覚えている。
努力をして、たーーーくさんの人に応援してもらって就くことができた客室乗務員という仕事。
「せっかくなれたのに辞めるなんてもったいない!」と何度言われたことだろう。
結婚で遠くに引っ越さなくてはならないから辞めた、と言ってしまえば聞こえはいいのだが、辞めた理由はそれだけではなかった。
「私のなかで大切なことが変化したから」というのが大きかった。
想像できると思うがCAの仕事はとっても不規則だ。
3時起きの日もあるし、日本時間で深夜から朝方にかけてのフライトもある。
家に着いたら0時を超えることもある。
おまけに国際線を飛び始めたら時差との戦いもあって、常に体内時計がぐるんぐるんしている、そんな感じだった。
早起き得意!体力あるし余裕!と思っていたし、実際最初はそんなに苦ではなかった。
でも徐々に、この勤務体系や働き方に対して違和感を感じるようになった。
きっかけはコロナだった。
コロナは、私たちCAから色々なものを奪っていった。社会人とは思えない給料になったし、ボーナスもちーーーん。貯金なんてできたもんじゃなかった。
その一方で、私にとってはなくてはならない時間だった。
出向でCA以外の仕事も経験することができた。
仕事がなくて心と時間に余裕ができ、ご縁あって今の夫にも出会うことができた。
お金はなかったけれど心は幸せな、そんな期間だった。
そんななか、改めて自分の心に正直に問いかけた。
「私にとっての幸せってなんだろう?」
「一度しかない人生で大切にしたいものってなんだろう…」
友達と時間を忘れて語る時間。
家族とゆっくり笑って食卓を囲む時間。
彼と将来の話をして夢が膨らむ時間。
私にとっての “幸せ”や“大切にしたいもの”は、大切な人とゆっくり過ごす何気ない日常なのだと気づいた。
そして、CAを続けていたら私にとっての幸せな時間は削られていく一方であることは明らかだった。
CAを辞める直前は、人員不足という理由で有給も取得できない状況が続いていた。
離れて暮らす家族や友だち、遠距離してた彼との大事な予定が、仕事のせいで台無しになったことも沢山あった。もともとお休み予定だった両家顔合わせの日にフライトをぶっ込まれたこともあった。
それに、元々CAという仕事は、フライト前に事前に調べておかなければいけない事が多く、仕事の後最低限の睡眠をとって友達や彼に会いに行く傍らで、大量のサービス残業をこなす必要があった。常に脳内は次の仕事のためのToDoが占領していて、仕事のことを何も考えずにオフを満喫する事は不可能だった。
でも実は、自律神経が乱れる勤務体系や時代遅れな働き方そのものに対しての違和感より、大きかったのは現場の意見を聞こうともせず、改善する気のない会社に対する憤りのない怒りだったのかもしれない。
モヤモヤとイライラだらけの心で多忙なフライト生活を続けていたある日、
仕事前何でか分からないけど涙が止まらなかった日があった。
“勇気を出してこの仕事を手放すべきだ”
強く決意した瞬間だった。
人生一度きりなんだから、仕事にコントロールされながら過ごす人生なんて嫌だ。
だから、私は新しい道を歩むことにした。
CAにならなかったら……
出会えなかった人がたくさんいた。
行けなかった場所もたくさんあった。
知らなかった文化や価値観があった。
20代前半でこの仕事に就くことができて、本当に充実していたなぁと思う。
でも私は自分の大切にしたい軸に沿って生きていく道を選んだ。
小さな違和感を見逃さず、時には手放す強さも持たなくてはいけないことがある。
これからの私は、大切な人との時間一瞬一瞬を大事にしながら生きていく。
さほ
終わりに
長い文章を最後まで読んで下さりありがとうございました。
「客室乗務員」という仕事について皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。色んな国に行けていいな・合コン多そう(笑)・プライド高そう・美人がいっぱいいる…etc きっとその他にも色々あると思いますが、どちらかといえばポジティブなイメージだと思います。しかし、実際には文中で紹介したこと以外にも、睡眠薬やサプリを飲みながらフライトしてる人がいたり、さまざまな理由で体や心を壊してしまい休職せざるを得ない仲間がいたり…………。
内部で起こっていることは決していいことばかりではありませんでした。
どんな仕事・会社にも表と裏があります。いい面もあれば悪い面もある。
そのことを伝えるために、私は今日この文章を皆さんに届けました。私の文章を読んで、少しでもCAという仕事の違う面を知っていただけたのなら、とても嬉しく思います。
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