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緑青が有毒だという根拠は? 厚生労働省の書類を文字起こし(抜粋)しておく。

#先日の余談

昔、“ 銅がサビると青くなって、それは毒だから舐めたらアカンよ。”
って話を耳にすることがとても多かった。(青サビ)

まず、結論を述べておく

緑青(ろくしょう)は「毒ではない」。
ただ、「大量に銅イオンを摂取すると食中毒を起こすかもしれない」。
(まだはっきりしていないみたいですが、過剰摂取は何であれアカン!)

そもそも、調理器具はアルミニウム、鉄、ステンレス、銅、銀など多くの金属が使われている。人体への安全性や、どのような影響をもたらすのか、いろいろな見解が公開されており見聞することができる。

それぞれの金属には研究機関として組織があるようで、例えば銅だと「一般社団法人 日本銅センター」「日本伸銅協会」などが見つかる。情報を疑うわけではないが我が身は大事ということもあるかも知れないので、おそらく中立であろう「厚生労働省」の見解を調べてみたんだけど、半世紀以上前(戦後の混乱期)に定めた基準(食品・添加物等の規格基準)が運用されている。

その後、公(厚生労働省下)の研究報告として当時の環境を踏まえた見解も発表されているが、基準の改定には至っていない。(どういうことやろか?)

「銅」は10円硬貨(宇治・平等院の図案)をはじめ、アロマやスピリッツなどの蒸留窯、銅葺きの屋根、水道管など比較的多く利用されている。抗菌効果・熱伝導率の高さから調理器具にも使用されているが、緑青への懸念だろうか内側に錫メッキ(錫引きとも言われる技法)を施されたものがある。以下に述べる情報から考慮するとアンティークの調理器具はインテリアを飾るのに留め、実際に調理で使うには新しいものが安全というのはわかった♪


厚生労働省の見解 (いろいろ抜粋)

昭和34年(1959年):東京オリンピック(第18回大会)の5年前...

食品、添加物等の規格基準(厚生省告示第370号 昭和34年12月28日)より抜粋>
F 器具及び容器包装の製造基準
1 銅製又は銅合金製の器具及び容器包装は,その食品に接触する部分を全面スズメッキ又は銀メッキその他衛生上危害を生ずるおそれのない処置を施さなければならない。ただし,固有の光沢を有し,かつ,さびを有しないものは,この限りでない。

昭和59年8月(1984年):ロサンゼルスオリンピック(第23回大会)が開催された年。(僕は中学生の頃だな、少し記憶がある)

厚生省(現:厚生労働省)は、1981年から3年間研究した結果、「緑青猛毒説は誤りである」と新聞やNHKなどマスメディアを用いて発表。(当時、発表した資料は新聞などの画像が見つかる程度、下記報告書内でも記載が確認できる)

平成19年(2007年):初代iPhoneが発売された年だ!

厚生労働省の管理下の研究報告書として「食品用器具・容器包装及び乳幼児用玩具の 安全性確保に関する研究 総括・分担研究報告書(平成19(2007)年4月)」がある。

ただ、あくまでも「研究報告」の位置付けのようで、昭和34年に告示された基準を改定するに至っていないのが現状である。

... 2007年の報告書よりも最新のものが見つからなかった ...
(見つかれば更新します、誰か教えてください♪)

余談:とある金属工芸品店で実施されている錫製酒器の製造工程における溶接は、ハンダを使わずに地金である錫を部分的に溶かして接着されているのだけれど、国際基準を見据えたの自社努力なのだろう。(流石だ♪)


。。。。。。。。


銅製または銅合金製器具・容器包装の項目の抜粋

ひとつの判断基準になるかと思うし、銅製または銅合金製器具・容器包装の項目があるので、抜粋して噛み砕いておく。

健康被害が確認される工業製品としては、「鉛」や「アンチモン」が毒性を持つと定められ、使用用途によって含有率の規定(当ページ末参照)が設けられた。特に食品に接触する物質中の「鉛」の使用は取り止めるか避けるべきとなる。

その流れで、

錫(スズ)メッキに関する項目
(錫引きとも言われるメッキ技術の発展)

また、かつては技術上の問題で鉛を含有したスズを用いないとメッキができなかった。そのため、現行法では「メッキ用スズは鉛を5%以上含有してはならない」と規定して鉛の混合割合を制限してきた。しかし近年の技術の向上により、鉛を含有しない純スズを用いてもメッキが可能となった。そのため、現在では、金属製器具及び容器包装のメッキには「鉛」を配合していない純スズが使用される

銅製または銅合金製器具・容器包装の項目
(緑青の有毒性を確認するために行われた実験と結果)

4)銅製または銅合金製器具・容器包装
銅製または銅合金製器具・容器包装については、「器具・容器包装の規格基準 F 製造基準 I 」において、「その食品に接触する部分を全面スズメッキ又は銀メッキその他衛生上危害を生ずるおそれのない処置を施さなければならない。ただし、固有の光沢を有し、かつ、さびを有しないものはこの限りではない」と規定されている。
 この基準は、銅の酸化によって生じる緑青が有毒であると考えられていたため、銅または銅合金の表面に緑青が生じないように定めたものである。
 その後、銅の安全性に関する研究として、青銅及び緑青を動物に投与する急性及び慢性毒性試験、並びに天然緑青(塩基性炭酸銅、硫酸銅)を用いた経口投与による実験が行われた。いずれの実験も成長率、生存率、妊娠、出産などへの作用は見られず従来考えられていた猛毒はまちがいであるとの結論が出された。
 厚生省(当時)でも昭和56年から3年間「銅酸化物の生体におよぼす影響に関する研究」を行ない、急性経口毒性(LD50値)は塩基性炭酸銅で540mg/kgと弱く、慢性毒性試験においても成長率、生存率への影響、催奇形性、発ガン性等の所見は見られず、過去の研究結果と一致した。そこで、昭和59年、厚生省は緑青猛毒説は誤りであると発表したが、上記製造基準については見直しが行われないまま現在に至っている。

銅と錫(スズ)メッキとの関連性とその見解
(錫はもともと柔らかく融点も231.9°Cと低いことを考慮してね♪という話。ちなみに銀は961.8°C、銅は1,085°C、鉄は1,538°C)

 銅製器具については、食品衛生法によりスズまたは銀メッキが義務づけられているが、高温で使用する銅板やたこ焼き器などでは、銅表面が極度に高熱化してメッキが剥がれ易くなり、剥がれたスズが食品に混入する可能性がある。そのため、用途によっては、メッキ処理を行っていないほうが安全性が高いといえる。
 ただし、銅製品についてはまれに吐き気、嘔吐、下痢等の食中毒が報告されている。内面の損傷等がある銅製器具を用いて、カレー等の食品を長時間保存したり、焼きそばなどで酸性のソースを使用したり、また洗浄後の水切りが不十分で水が溜まっていたなどにより、大量の銅イオンが溶出して食品へ移行し発症したものと推定されている。
 そのため、水分を多く含んだ食品と比較的長い時間接触する鍋類等では、器具類の取扱いが適切でなかった場合を想定すれば、メッキ処理は必要と考えられる。しかし、すべての銅製及び銅合金製器具。容器包装にメッキを課すのでなく、高温で剥離し易い用途ではメッキをしないなど、用途に応じて使い分けることが望まれる。

銅製器具・容器包装の製造者は、銅製器具による中毒事故を防止するため、銅の中に長時間食品を保存しない、炒め物には使用しない、酸性又はアルカリ製の食品の使用を避ける、使用後はよく洗浄して乾燥させるなど銅の特性を踏まえた正しい使用方法をさらに周知徹底させる必要があろう。


改めて、今回引用した資料(厚生労働省)

食品、添加物等の規格基準(厚生省告示第370号 昭和34年12月28日)
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kigu/dl/4.pdf

食品用器具・容器包装及び乳幼児用玩具の 安全性確保に関する研究 総括・分担研究報告書(平成19(2007)年4月)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/10/dl/s1004-8p.pdf

主任研究者 河村 葉子 国立医薬品食品衛生研究所
分担研究者 小川 正  (財) 日本文化用品安全試験所
分担研究者 松崎 克彦 日本製缶協会
分担研究者 森田 邦雄 (社) 日本乳業協会
分担研究者 伊藤 弘一 東京健康安全研究センター
分担研究者 高野 忠夫 (財) 化学技術戦略推進機構

参考までに同研究報告の「結論項目」

 食品衛生法の金属製器具・容器包装に関わる規格基準についていくつかの問題が指摘されてきた。そこで、平成17及び18年度の本研究において、金属製器具・容器包装に関わる業界団体の自主基準及び使用される金属材料のJIS規格、海外における規制及び勧告、流通する金属製品の表面組織、材質試験、溶出試験などを実施した。
 それらをもとに現行の規格基準の検討を行い、鉛含有量の規格値をメッキ用スズ及び器具・容器包装の製造又は修理に用いる金属については0.1%未満、ハンダについては0.2%未満と、現行より大幅に引き下げることが適当であり、また銅または銅合金製品のメッキについては高温で使用する製品に強制することは必ずしも適当でないと結論した。
 そこでこれらに基づき、規格基準の改正原案を作成し、その新旧対照表を表6に示した。今後、これらの改正原案をもとに金属製器具・容器梱包に関わる規格基準に改正が検討され、すみやかに実施されることを期待する。

上記結論で示されている改正原案の一部を「表6 食品衛生法:第3 器具及び容器包装の規格基準・新旧対照表」より抜粋しておく。あくまでも案であって改正には至っていない

【現行】
F 器具及び容器包装の製造基準
1 銅製又は銅合金製の器具及び容器包装は,その食品に接触する部分を全面スズメッキ又は銀メッキその他衛生上危害を生ずるおそれのない処置を施さなければならない。ただし,固有の光沢を有し,かつ,さびを有しないものは,この限りでない。

【改正(案)】
F 器具及び容器包装の製造基準
1 銅製または銅合金製の器具及び容器包装は、その食品に接触する部分を全面スズメッキ又は銀メッキなどの処置を施さねばならない。ただし、固有の光沢を有するもの、又は高温で使用するものは除く。


平成20年(2008年):食品、添加物等の規格基準の一部改定(鉛の含有量)。

【改定前】
2 メッキ用スズは,鉛を5%以上含有してはならない。
3 鉛を10%以上又はアンチモンを5%以上含む金属をもつて器具及び容器包装を製造又は修理してはならない。
4 器具若しくは容器包装の製造又は修理に用いるハンダは,鉛を20%以上含有してはならない。ただし,缶詰用の缶の外部に用いるハンダについては,サニタリー缶にあつては鉛を98%,サニタリー缶以外の缶にあつては鉛を60%まで含有することは差し支えない。

【改定後】
2 食品に接触する部分に使用するメッキ用スズは,鉛を0.1%を超えて含有してはならない。
3 鉛を0.1%を超えて又はアンチモンを5%以上含む金属をもつて器具及び容器包装の食品に接触する部分を製造又は修理してはならない。
4 器具若しくは容器包装の食品に接触する部分の製造又は修理に用いるハンダは,鉛を0.2%を超えて含有してはならない。

「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件」(平成20年厚生労働省告示第 416 号) (日程:平成20年7月31日)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/080731-1_1.pdf

食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件新旧対照条文(→日程不明
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kigu/dl/17.pdf


その他

・薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会 議事録(平成20(2008)年1月18日)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/01/txt/s0118-2.txt


余談:金属のイオン化傾向

金属のイオン化傾向(水溶液中で陽イオンになりやすい順)。言い換えると変化しやすい順なんだけれど、錆易いという表現はすべてに当てはまらないな。銅(Cu)はかなり変化し難い金属に位置している。

Li > K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > (H2) > Cu > Hg > Ag > Pt > Au


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