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複業マッチングプラットフォームとして目指すべき”理想のUX”についての考察

こんにちは。Another works CDOのKimです。
記事を書くのが苦手で筆も重かったのですが、デザイングループ(DesignDoorと言います)のメンバーも頑張っているので、僕も久しぶりに書いてみることにしました。今回は

  •  私たちの事業ドメインにおける「理想のUXデザイン」とはどんなものか

について書いてみようと思います。

採用 x マッチングプラットフォームというドメイン

プラットフォーム

分類するとすれば、私たちが運用する複業クラウドはプラットフォーム4類型における「仲介型プラットフォーム」に位置します。
オンラインプラットフォームという言葉はもはや当たり前すぎて死語のようなものですが(インターネットを介したサービス提供をしていれば誰しもがプラットフォーマーと名乗っていますね)、「仲介型」の特徴としては大きく2つがあります。

1. ユーザーには基本的にはゴールが存在する
2. プラットフォーマーは異なるニーズを持つユーザー同士を適切に繋ぎこむことを命題としている

例えば、「Uber」「DiDi」「Go」などのモビリティビジネスにおいては「快適に目的地に到着したい」ユーザー(Consumer)と「客を乗せて売上を上げたい」ユーザー(Driver)を繋ぎます。

例えば、「Airbnb」などのマーケットプレイスでは「良い宿泊施設・旅先体験を見つけたい」ユーザー(Consumer)と「宿泊場所を貸して収入を上げたい」ユーザー(Host)を繋ぎます。

大切なのはプラットフォームに「繋ぎこむ」という作用があるため、どちらか片方の体験価値が阻害されると、もう片方にもネガティブな影響が出るということです。

採用

複業クラウドというサービスは2019年9月にリリースされました。
UX的な特徴は、「採用」プラットフォームであること。そして直接契約型であることにあります。
採用プラットフォームは国内では早くは2009年にBizreach(Visional社)、2012年にWantedlyがサービスを開始しており、この十数年で大きく民主化・一般化されてきました。
「自分にとって良い仕事を探したい」というゴールを持つユーザー(求職者)と、「採用したい」というゴールを持つユーザー(採用者)、そして利用の型への認知がそれぞれ育まれて来たということです。
民主化された領域だからこそ「デザイン」が差別化要因になるフェーズであると考えます。
👉 民主化されたサービスでこそデザインが重要である話はこちら

また、「採用」サービスには見逃せない大きな特徴として、求職者 / 採用者、双方共にプロダクトへの接触時間が短いことがあります。隙間時間ずっと触り続けたり、秒あたりのアクティブ率が重要な指標となるプロダクト(toBサービスであれば例えばSlack)にはなり得ない、ということです。


理想のUX

私たちがサービスデザインを行う際、まず理想とする完璧な状態(=UX)を考えます。理想(未来)から現在を比較し、理が通るように現状を理想に近づけていくのですが、そのやり方はボトムアップでユーザーの声を丁寧に聞きながら理が通るように積み上げていきます。
理想からのトップダウンアプローチと、ユーザーの声や課題を丁寧に解決するボトムアップアプローチの間の葛藤を常に抱えながらプロダクト開発を行なっています。

では、本題である、採用プラットフォームドメインにおける「良いUXデザイン」とは何か・その延長線上にある「理想のUX」とは?
現フェーズにおける私たちなりの考えがあるとしたらそれは、

理想のUX
to C : 複業クラウドを使えば必ず1日以内に複業ができる
to B : 複業クラウドを使えば工数要らずで必ず採用ができる

まず目指すべきUX
to C : 複業クラウドを使えば必ず複業ができる
to B : 複業クラウドを使えば必ず採用ができる

だと考えています。とてもシンプル。

エンプティネスとシンプル

エンプティネス

原研哉氏がデザインやビジュアルコミュニケーションを行う際に重要視している考えに「エンプティネス」という言葉があります。
空洞・空っぽ、ということで、解釈の余地を多分に残している状態を指します。

これはシンプルとエンプティを説明する分かりやすい事例です。こちらはヘンケルの包丁。僕も台所で使っているものですが、すごくよくできています。グリップの位置がしっかりしているし、刃の微妙な反りもよくできていて自然に切れる。人間工学的にもきちんと考え抜かれてていますから、西洋流のシンプルのひとつの極点にあるような、いい仕事だと思います。
引用元:https://www.muji.net/lab/report/100203-03.html
一方、こちらの柳刃包丁はエンプティネスの典型。板前さんが刺身などをつくるわけですが、どちらの包丁がより高度な技術を受け入れるかというと、明らかにこっちの柳刃包丁のほうです。こちらにはグリップも何もなくプレーン。どこを持ってもいい。だから、薄造りの刺身をつくる時と、何かをみじん切りをするときとでは、たぶん持つところや持ち方が微妙に違うはずです。包丁を研ぐと、刃の長さが短くなりますから、また持つところも違ってくる。どこを持ってもかまわないということは、板さんの超絶技術をこのプレーンな柄で全て受けとめるということなんですね。これがエンプティです。
引用元:https://www.muji.net/lab/report/100203-03.html

エンプティネスはプロダクトにおいては、ホリスティック(全体・関連付け・つながり)的なアプローチと言い換えられるかもしれません。
エンプティネス≒ホリスティック的なアプローチのプロダクトで大きく価値をつけているプロダクトは多々あります。
古くはMicrosoft officeはもちろんのこと、数年前に参加したTrelloのトークイベントでは、CEOがユーザーに思いもよらない使い方をされることを称賛していました。その時は結婚式の準備とか、子供たちにその日やらなければならないことを説明するために使うとか、そういう開発者が思っていない使い方を受け入れていました。
その他にも、Notionはそもそもが万能で、あらゆる人物のあらゆるユースケースが生まれることにこそ価値がありますし、そのユースケースに耐えられる空洞(エンプティネス)的なデザインになっています。

シンプル

一方、現フェーズにおける複業クラウドの理想のUXはエンプティネスというよりはむしろシンプルの追求にあります。
なぜなら、本記事の冒頭部分に書いたように、仲介型プラットフォームのUXには漏れなく共通したゴールがあるからです。

マッチングというゴールは「より早く」「より確実であること」で価値が増します。タクシーアプリで配車注文したにも関わらずオーダーが全く決定されない場合や、直前で断られるケースなどは最悪です。
NotionやTrelloのような「空白さ」や「自由さ」は細部においては良しとしても、全体的なUXでその余地を残すとノイズになってしまいます。

Amazonや自動販売機のシンプリシティ

シンプルさ、の極地にいるサービスにAmazonがあると思います。
仲介型ではないため、相互ニーズがあるわけではありませんが、接触時間が少ない、という点において類似点があります。

AmazonのUX
購入する必要のを認知→Amazonで買う(Echoがあれば声ひとつで決済まで完了)→最短即日・しかも確実に家に届く(置き配もあり便利)

言うまでもなくこのシンプルさの裏に、オーダー管理・在庫管理・ロジスティクスなど非常に複雑なメカニズムが存在していますが、それらのことをユーザーは感じ取ることはありません。ただ、結果だけが残ります。

自動販売機も同様です。

自動販売機のUX
喉が渇いた→飲みたい飲料を選び、購入→目的の飲料が確実に出てくる

👇自動販売機の裏側の動画

こちらも裏では多くの複雑な機械部品が電子制御され、飲料を取り出し口まで運んでいるはずですが、そのことをユーザーは認識しないしする必要もありません。ただ、結果だけが残ります。

なんとシンプルで切れ味の鋭いUXでしょうか。
これらのUXはユーザーを選びません。
複業クラウドの目指す世界はこれをに近いと考えています。
「採用という結果を最短・確実で達成できるオートメーション」が理想です。

複業クラウドの目指すUX
複業(採用)をしたいと思う→自分(自社・プロジェクト)にとって素晴らしい仕事(人物)が見つかる→エントリーする(を受け付ける)→最短即日で面談→その日に採用

複業する/採用するという目的(=ゴール)はいささか複雑ですが、その裏にあるメカニズムをいかに意識させることなく、シンプルにそのゴールを達成させるためにサービスは機能すべきですし、設計されるべきであると考えています。

私たちは複業クラウドを使えば、複業をしたい個人(採用をしたい企業)が100%複業できる(採用できる)という状態を目指していますし、実現可能だと考えています。

理想のUXのその先

誰もが、自身の魅力や能力を発揮できる仕事があることを僕は信じています。その場所として、複業が必要です。
複業クラウドは仕事を見つける手順を。探しやすさを。仕事が見つかる確実さを。時間の短さを。採用の喜びを。
それら全体を通した体験に磨きをかけ、一本の刃のような解釈の入る余地のない切れ味のUXを目指しています。

ただ、それは現状のプロダクトにおけるゴール(採用)を前提としています。
採用完了のその先や採用以外のゴールを私たちが担う時、そこにはエンプティネスや新しい価値の源泉が生まれるかもしれません。

それらは常に検討のテーブルに上がっており、その時が来たら、複業クラウドの理想のUXは更新されることでしょう。

今はまず、私たちの信じる「シンプルさ」を究めていきます。

最後に

事業ドメインやプラットフォームの型によって理想のUXやユーザーの理想状態は全く違って、巷で言われる「良いUX」というものはなかなか直接当てはまることは少ないです。
それを、理想と仮説と情熱と鉄のロジック、そしてデザインへの信念を持って仲間と探しにいくことだけが正道だと思います。
この記事が良いUXデザインてなんぞや、と悩む誰かにとって少しでも面白いと思ってもらえれば嬉しいです。

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まだまだヨチヨチ歩きですがぜひ見てみてください!

ではでは👋

Another works 採用ページ


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