翻訳スクールの活用法(医薬翻訳)
40代後半で翻訳スクールのメディカルコースを受講した。通学で毎週土曜日に3時間、和訳+相互添削が半年、英訳+医学知識が半年。クラスメイトは6人、私以外はみんな30代。資料が多すぎて、リュックで通ってた。
薬事、ICH、毒性、論文、臨床試験、副作用報告、安全を守るための何重もの仕組み。医療機器、コーパス、site検索、統計、情報の取り方、定訳、臓器、疾患。変更履歴とコメントまみれの丁寧な添削。通勤中も昼休みも夜も週末も、調査と翻訳、復習と予習の1年。プロ翻訳者に質問し、訳文を添削にしてもらえるのがスクールの最大のメリット。
通学のもう一つのメリットがクラスメイト。メアドを交換し、LINEグループを作った。ZIPを作るのって?とか、変更履歴どうやってつけるの?って質問したり相談したり。講義の後にお茶やご飯にも行った。
経歴もバラバラ。社内翻訳者、医療機器の会社勤務、研究者、チェッカー(私ですわ)。英語力は、全員がTOEIC800点超だったと思う。講義の前に文法勉強会をしたり、集まってマクロの勉強をしたり。
バックグラウンドあり
背景知識のある人が、スクールで勉強すれば最短で翻訳者になれる。CRO勤務の2人は知識量が違い、授業の理解も早く、検索も外さない。日本語力が高かったので、どんどん訳がすっきりしていった。卒業後、推薦トライアルで1社ずつ合格。フリーランスとインハウスで活躍中。
背景知識がない人は、できれば就職して知識を得ることも検討してほしい。
英語力を自分で補強
研究者(理系だけど医薬ではなかった)は、英語が弱いことに気が付いて、英検の学習を続け準1級に合格。背景知識が足りないと気付いて、コース終了時にCROに転職(英検を活用!)。フリーランスを目指して毎日翻訳中。
マイナー分野(医療機器)
私と医療機器の会社に勤めていたもう一人は、医療機器の翻訳を目指していた。医療機器は他分野(IT、工業等)からの参入者も多く、マーケ案件、取説などスクールで習わない文書も多い。私は在宅でメディカルの翻訳会社にチェッカーとして登録、医療機器開発者向け講座を受講しつつ、少しずつ医療機器の仕事を受けるようになっていった。もう一人は、現場で知識を身に付けようと翻訳会社に転職。レベルアップしてフリーランスを目指す。
翻訳以外に進む人も
卒業後一度CROに務めたものの「やりたいのは翻訳じゃなかった」といって別の仕事を選んだ人も。言葉を使って直接人の役に立つほうが好きだったし、それもあり。
中高年からのチャレンジ(私ですわ)
私は40代後半から翻訳の学習を始めた。大学は教育学部の英語科、教員を24年。ビジネスも技術も医療もわからず、独学では翻訳者になるころには死ぬかもしれないと思って、スクールに通い始めた。特許翻訳を受講中に社内チェッカー(パート)になった。文法は得意だけど、医学の背景知識なし。毎回検索にヒーヒー。年齢と病気のためCROには転職できなかったので、校正で多くの文章にひたすら触れる。工業検定1級を取り、工業・特許の翻訳を始める。遠回りだけど、医療機器もできるのではと思ってもらえるように。
医療機器の仕事を取ろうとトライアルを探すも、数が少ない。翻訳会社MTSの添削(医療機器)を受ける。工業・特許の仕事を受けている会社にも医療機器をアピール。メールの署名欄に「医療機器」と書き、医療機器の講座を受けたら、すかさずPM/コーデさんに連絡して、登録情報の更新を依頼。
そうこうするうちに、医療機器の依頼も増えてきた。ISOや各種の規格、規制、ソフトウェア、マーケティングなど、まだまだ学ぶことがあるなと悩みつつ、何とか毎日やっております。
中高年からのチャレンジは、これまでの経歴を活かすことが他の年代よりも重要。ある程度独学したら、きちんと習ったほうがいい。時間は有限だし、視力と記憶力はどんどん衰えていくので、早いに越したことはない。
スクールを選ぶ前に自分の戦略を立てる
自分の強みと足りないものを考えて、いつまでに何を学ぶかを見極めることが大切。「スクールで学べば翻訳者になれる」という幻想は捨てること。プロから訳文の添削を受け、情報を探す正しい方法を効率よく学ぶためにスクールはある。一番前に座って毎回質問して、元をとる根性が必要。がんばってください。
ご質問は、Twitter ぶみにゃんご(@bumicchu)までDMでどうぞ。