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高齢者というメディア2019年1月   【縁起と因縁『ここから先を考えない』覚悟】

あのねぇ、さがんさん。
お釈迦さんは、死んだ後の世界とか霊魂の存在をはっきりと否定しとるんよ。スッタニパータいう原始仏教の経典で。
生きる、その先の、死ぬ・・・死んだ後、とかそういうことではなく、
そこには「縁起」いうもんがあるだけやっていわはんねん。
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【縁起】いうもんはね。ものごとの流れ・・因果関係とでもいうんかな。こういうことがあって、その結果、ああいうことになる・・・ということ、【それ自体】らしいねん。「縁起がいい」とか悪いとかよく、いいがちやけど、本来は、いい悪いというより、「そういうことがあるよ」というのをどう受け止めるかをお釈迦さんはいうてはったんと違うかなって僕はそう思うねん。

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うちのおふくろが死ぬ前の話やけど、すっきりしない顔の時があって、僕、その時、おふくろに、こう言うたんよ。
「お母さん、親鸞さんがこんなん言うてはるよ。『我々に誠の信心は無い』って。『我々が神仏を信じんくてもいい』って。『阿弥陀さんが、我々を信じてくれてるから、心配せんでもいい』んやて」って。
そしたら、お袋の顔がパァッ・・と明るくなってねぇ。
『そんないいこと。。ああ。ふくちゃんに教えてあげたいなぁ』っていうて。その時に、ほんまにおふくろが綺麗な顔になったんよ。
綺麗な肌の色してねぇ。
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僕は、なんどとなく、こういう話を聞いていた。なんどとなく、まるで知らない世界・・・ 仏教世界の話を聞いた。一体、何の因果だかわからない。一体、そこに何の理由があるというのか、わからない。ただ、その人は、何もわからない僕に、こういう話をなんどとなく、してくれた。  一体、何の因果だかわからない。 
一体、そこに何の理由があるというのか、わからない。
ふと、僕は意地悪な質問をしたくなった。
それは、とある日のことで。こんな形である。
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ちょっと、聞いていいですか?
僕、なんとなく、なんて答えはるか想像がついてるんですけど、
その上で、聞くなんて、不躾だと思うけど、あえて聞きたいんです。

18歳のね、一番意気揚々という時期、肉体も屈強で、勉強もできて。
大学のワンダーフォーゲル部に入って、さぁ、これからだという時に、
そこで…事故に遭ったわけじゃないですか?

ちょっと、山道で迷った。
とても疲れていたから、とある木の下に倒れこむように座った。
先輩たちは、道を探そうとして木の枝に上っていく。

まさか、その木が腐っているだなんて。
まさか、自分の上に先輩達と共に、折れた幹が落ちてくるだなんて。
脊椎が真っ二つに折れる程のケガを負うなんて。
まさか、胸から下の感覚もなく、動かすこともできなくなるなんて。

そこから、少なくとも10年間、社会とも交流できず、ある意味、生き地獄を味わったわけでしょ?

そんな生き地獄にすら、そこにも「縁起」やら因果関係があるっていう教えを聞いて、それ、どんな気持ちになりましたか?

なんでボクやねん。
なんで、こんな目にあわなあかんねん。って、そうは考えませんでした?

不思議なことに、なぜだろう。
その人は、僕が話始めた最初から僕の顔をみながら、ニコニコと笑っていた。
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あのねぇ。さがんさん、
もともとに「いんねんしょうき」いう言葉があるんですわ。
原因の因、縁・・・生じて、起きるって書くんやけど、どういう意味か・・わかりますか?

「わからないです。因縁が起きるってことですか?」

そうそう。
「因縁生起」を略したのが、【縁起】やねん。

因と縁をどう読むかで
原因に縁(よ)って、生じるってことになるけんども、
ボクは、縁(えん)に因(よ)って、生じるって考えてるねん。

縁がそこにあるから、こういう新しい出会いがある。楽しいチャレンジがある。

こんな原因があったせいで、こんな結果になってしまった・・ではなく、
こういう縁があったおかげで、こういう結果が作り出されるんやって・・・。

元々、何の原因があるかなんてことは、我々の頭では、考えてもしょうがないことやから。そして、霊魂や死後の世界、お釈迦さんが否定してはんのやから。

そこにあるのは、「原因」ではなくて、
「縁」
そして、それが連なっていく、『縁起』という連なりがほんまにあるんやなぁ、と思ったんよ。
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そう答えてくれながら、その人は、ほんとうに、ニコニコと微笑む。
ほんとうに、綺麗な顔、綺麗な肌の色をしていた。
一体、何の因果であれ、
一体、何の因縁であれ、
そんな時間を、僕とその人はともに過ごした・・という「縁起」。
それは、とある日のことだった。
とある日であり、
そして、特別な日になった日でもあった。

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