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ビジュアルスノウ症候群について(症状、原因、治療、漢方)

全文公開です。

ビジュアルスノウ症候群 (visual snow syndrome: VSS)という症候群があります。

▶︎ ビジュアルスノウ症候群は全視野にみられます


視界砂嵐症候群、雪視症、小雪症候群、降雪視症候群などとも呼ばれます。

・砂嵐越しのように見える
・テレビのホワイトノイズように見える
・吹雪の中のように見える
・ずっとチリが舞っているように見える

などの見え方が、全視野に見られる症状です。

この見え方には個人差があり、白色だけの方もいれば、赤や緑の混色の方もいます。また、光過敏、視覚保続、増強する眼内現象、夜間視力障害、耳鳴りなどが合わせてみられることもあります。

これらの症状により、読書や日常生活に大きな困難を覚えたり、気分障害や集中力の低下などを起こすこともあります。

視覚の異常から「このまま失明するのでないか」という不安を感じる人も多いのですが、「失明することは絶対にない」と言われています。


▶︎ 「飛蚊症」や「ブルーフィールド内視現象」とは異なります

視野に「異物」のようなものが見える症状に「飛蚊症」があります。

「飛蚊症」は目の「硝子体」に混濁が生じて「蚊」が飛んで見えるような症状なので「飛蚊症」と言われていますが、「飛蚊症」の場合は目を動かすと同時に動きます。

また、青空などの青い光を見ていると小さな明るい点状のものがたくさん「不規則」に動いて見えることがあります。目の動きとは別に動くのですが、これは「飛蚊症」ではなく、「ブルーフィールド内視現象(シェーラー現象)」と呼ばれる生理的な現象であり、「飛蚊症」ではありません。

ビジュアルスノウ症候群は、「飛蚊症」「ブルーフィールド内視現象」とは異なります。

一方で、ビジュアルスノウの「見え方」に伴う症状には羞明(眩しさ)、視覚保持(残像やスローモーション映像のように重なって見える現象)、飛蚊症やブルーフィールド内視現象が高確率で伴い、片頭痛、耳鳴り、夜間視障害(夜盲症)などを伴うことも多く、視覚以外の感覚にも影響が見られることがあり、「感覚過敏」も見られることもあります。


▶︎ ビジュアルスノウ症候群の診断基準

診断基準について、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)の付録に記載されている内容では以下のように

診断基準
1 視野全体に動的で連続した小さな点が3ヶ月以上続くもの
2 以下の2つ以上該当
 a 反復視、視覚保持(残像や動くものの軌跡が見える)
 b 羞明(眩しさを感じる)
 c 夜盲症(夜間の視力障害)
 d その他の持続的な以下のものに限定されない視覚陽性症状:内視現象の増強(過度の浮遊物またはブルーフィールド内視現象)、開眼または閉眼時の万華鏡様色彩、光視症
3 症状が典型的な片頭痛の視覚的前兆と一致しない
4 症状が他の疾患では説明できない


▶︎ 原因ははっきりわかっていません…がわかっていることもあります

視覚に変化があるほかの病気で、片頭痛の「閃輝暗点(せんきあんてん)」があり、間違われることがあります。ビジュアルスノウ症候群と閃輝暗点とは別の現象であることはわかっていますが、片頭痛に関連する症状ではないかとも考えられています。

「視覚」に関連する症状の原因は、合併する症状などやこれまでの検査の結果から、脳の異常興奮により、正常とは違う見方をしてしまうのが原因ではないかと考えられています。これらのことから「脳神経」の誤作動の可能性が指摘されています。

ビジュアルスノウが見られる方は片頭痛持ちの方が多かったり、PET検査などの詳しい検査では、脳の一部に通常とは異なる変化が見られたとする報告もあります。

ビジュアルスノウを研究する研究者からは、

「外線条視覚皮質の嫌気性代謝亢進が起こり、これが外部からの視覚刺激を規則的に処理する代謝予備能の低下を引き起こしている可能性がある。」

「ビジュアルスノウが確認された方全てにおいて、右島皮質および右舌状回の灰白質密度低下がみられた。先天発症群において、右島皮質および右舌状回の灰白質密度低下、後天発症群において、両島皮質の灰白質密度低下がみられた。」

などの報告があります。

脳の情報処理で「フィルタリング」されるはずの外部刺激や内部刺激に脳がさらされ、優先順位付けが損なわれて、視覚皮質が過剰に活性化された状態である可能性があります。

簡単に言えば「脳のネットワーク障害」ということになります。

原因についてわかっていないことも多いのですが、上記のようにわかっていることもあり、これまでの研究報告から「目」そのものではなく、「脳神経」の誤作動の可能性が高いと考えられます。


▶︎ ビジュアルスノウ症候群の治療

治療のためにいろいろ薬が試されていますが、治療として成立するほど効果のあったものは存在しません。

ビジュアルスノウ症候群の方に試された薬の効果についての報告があります。

報告では、ラモトリギン(商品名:ラミクタールほか)の服用により、26名中5名(19.2%)に部分的な寛解がみられました。

他にも、バルブロ酸、トピラマート、アセタゾラミド、フルナリジンが試されましたが、14人中14人の患者さん全てに症状の改善は見られませんでした。

現在のは有効な治療薬はなく、病院を受診すると上記の報告をもとに「効くかもしれない薬がある」といって「ラモトリギン(ラミクタールほか)」を提案されることもありますが、この薬はもともとは「てんかん」「双極性障害」の薬であるため副作用も心配です。

実際、上記の報告では、半数に有害事象が見られたとしています。

今のところ有効な治療法がないため、ラモトリギン(商品名:ラミクタールほか)を試す以外には、そのほか併発する症状を和らげる治療が中心となることが多いです。

また、片頭痛を繰り返すようなら片頭痛の治療を行い、羞明(眩しさ)が強い場合は、眩しさを感じやすい色を選択的に遮断する「遮光メガネ」が有効なこともあり、このメガネは一般の眼鏡店で入手が可能です。

また、ビジュアルスノウ症候群においては強いストレスを感じることが多いため、ストレスケアも重要です。実際にストレスケア、メンタルケアをすることで結果としてビジュアルスノウの症状が軽減したケースがあります


▶︎ ビジュアルスノウ症候群は珍しい病気はありません

症状があって受診しても、「飛蚊症」に間違われたり、視力検査、眼底検査、視野検査などの目の検査では異常が見られないため、「心因性」と言われたりすることもあります。

ビジュアルスノウは1995年に片頭痛患者にみられる永続する視覚陽性症状として報告されたのが始まりです。

その後2014年に「visual snow syndrome」として診断基準が専門誌で提案されて以来、世界的にかつ爆発的に症例や研究成果が報告されるようになりました。

しかし、患者さんの苦痛が非常に大きいにもかかわらず、医療従者や社会の理解や認知は進んでいないのが実情です。また、「心因性」や「精神的な問題」と誤解されることもまだまだ多いです。

日本でもSNSやWEB上では、この疾患ではないかと悩んでいる多くの方からの訴えがたくさん見られます。

海外の報告では、一般人口の約 2 % にビジュアルスノウ症候群の症状がみられると報告しているものもあります。

ビジュアルスノウ症候群で失明する心配はないと言われていますが、その苦痛はとても大きいため、一刻も早く治療法が確立されることが期待されています。


▶︎ ビジュアルスノウ症候群の漢方治療

ビジュアルスノウの漢方治療も西洋医学と同様、確立された治療法はありません。西洋医学的には脳の「ネットワーク障害」であることが指摘されていますので、「目」の症状にこだわりすぎると、症状は良くならない可能性があります。

漢方では、体質・体調を考慮しながら、ビジュアルスノウ症候群の症状については重鎮安神薬や平肝熄風薬と補益薬を中心に使用しつつ、併発している症状(不安やうつ、耳鳴りや片頭痛、その他の残像や飛蚊症などの視覚症状)に対しての処方を加味し、その人に対して必要な処方を組み立てます。

一人ひとり症状が異なることが多いビジュアルスノウ症候群では、煎じ薬の方が細かい調整が可能です。

わからないことが多いビジュアルスノウ症候群ですが、少しでも症状を軽減するために、煎じ薬での漢方治療も選択肢の1つとして考えてもらえたらと思います。

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