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【Vol.25 仕組みは飛躍に】家業倒産、大学中退、派遣社員から年収1600万リーマンになるまでの話
仕組みは飛躍のもとに
「そんなずっと頑張れんやろ。仕組みで何とかならんのか?」
ある月例ミーティングで方針の説明した直後、色黒部長から言われたことだ。
正直に言おう。
理解できず、絶句した。
理由は二つある。
一つは「仕組み」を導入する発想が全くなかったことだ。
「頑張れないから仕組みを使え」という言葉の意味はわかるが、ピンと来なかった。
もう一つは、「頑張れない」という状態が理解できなかったこと。
僕は「給料をもらってる限り、100%の力を発揮すべし」という考えていた。
そこにモチベーションは関係しない。
しかし、他の多くの人にとって、モチベーションは勝手に変動するものだ。
そして制御する気がない人がいることも知っていた。
そこで僕は、実績を可視化してプレッシャーを与え、期待する動きを取ってくれた人に最大限の賛辞を送ることで、モチベーションを喚起していた。
困惑する僕を見て、色黒部長は具体例を挙げてくれた。
「例えば、1週間後の10:00に書類をチェックしなあかんとしよか。どうする?」
「カレンダーアプリに入れますね、忘れないように。」と僕。
「それや、それが仕組みや。アプリに入れとけば、通知してくれるやろ?そしたら、忘れんように気をつける必要ないやろ?」
その通りだ。
意志の力を使わなくていいように、仕組みを用いている。
なぜ販売だけを例外としてきたのか…。
戦略は絞れていたが、実行は全てやる気に頼っていた。
愚かな自分を呪ったが、同時に戦術の幅が拡げられた感覚を得た。
そこで、意志の介在を最小化するべく考えたことを言語化すると、以下のようになる。
【前提】
・成果=量×質
【仕組み化で目指すこと】
①(意志に関わらず)高い確率で起こるようにする:量
②(意志に関わらず)常に高いレベルを担保する:質
【具体的なアプローチ】
①に対して
・望む結果につながる言動が、必ずかつ自然に取られるよう導線を設計する
・仮に意志が必要な場合は、その言動につながるトリガーを用意し、最小かつ瞬間的で済むように設計する
②に対して
・意志で左右されないよう、ツール類で均一化する
①②共通
・各言動を最小の意志で取れる人が、その言動を多く取れるように設計する
≒強みを活かす
※人によって意志の力の必要度は異なる
※強みとなっていることは、さほど意志の力を必要とせず行える
これを踏まえ、「前商談」と呼ぶ施策を思いつき、導入した。
「前商談」とは、以下のようなものだ。
①「セールスタイプ」がフロアにて、来店したお客様に訴求すべき商材を訴求する。
②獲得した場合や、そもそも販売につながらないお客様は「CSタイプ」が応対する。
スタッフは、大別すると以下いずれかのタイプだった。
「セールスタイプ」:販売が得意だが、オペレーションを苦手とするタイプ。
「CSタイプ」:販売は苦手だが、手続きが早く顧客対応に長けたタイプ。
獲得後の手続きを退屈な作業だと感じてしまう僕や、手続きにやたらと時間がかかるニノは「セールスタイプ」だ。
一方、共感性が高く「不要だろうな…」と自身が感じると、途端に商材訴求の心理的ハードルが高くなる主に女性陣は「CSタイプ」だった。
非常にシンプルな施策だが、必ず全お客様に訴求が行えた。
しかも「セールスタイプ」は最小の意志で、質の高い訴求ができた。
そしてその後の手続きは、「CSタイプ」が丁寧かつ迅速に行なってくれた。
そのおかげで回転率が高まって待ち時間が減り、応対でのお客様満足度も向上し、CSアンケートのスコアが改善した。
また、それぞれが苦手なことをする必要がなくなったため、ESも向上するというメリットもあった。
当時はまだ、どの店舗でもカウンター接客が当たり前で、フロア応対は行われていなかった。
しかし、この取り組みを毎年行われるキャリア主催の「改善コンテスト」で発表したところ、高く評価された。
「関西改善コンテスト」で入賞したことで、全国に拡がることになったのだ。
そして肝心の販売実績だが、驚愕の伸びを示した。
最高でも100位以内であった関西内順位は、トップ10に入り、手数料は150%に。
関西支社から優秀賞とジャンプアップ賞を受賞し、一躍周囲から模範とされる店舗になった。
この躍進が評価され、僕は旗艦店の立て直しを任せられることになった。
派遣社員時代からお世話になった店を離れるのは寂しかったが、「仕組み」で劇的に改善してやろうという気持ちもあった。
「仕組み」という視点を与えてくれた色黒部長には、感謝しかない。
しかしそんな僕を、店舗内外の数々の障壁が待ち受けていたのであった…
To be continued...