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推しのルーツを探る

「〇〇推しでしょ」「絶対〇〇好きだと思った」

白状すると、私は推しの好みが分かりやすい。
これまでいろんな作品を渡ってきたが、感情が頂点に達するのはだいたい似通ったタイプに出会ったときだ。
友人たちと歴代の推しについて話をすると、そのたびに「好みに一貫性があって分かりやすい」と言われる。意外性など皆無だという自覚もある。

ふと、私が初めて「推し」た人物は誰なのか気になった。
これだけ分かりやすいとなれば、特定の人物がいて、そこから今までの推したちに向かって、樹形図のように線が伸びているに違いない。

探るか、推しの源流ー

本記事は、2023年7月に草稿していたものである。
良い感じに燻されたので消し炭になる前に手を加えて公開することにした。
自己紹介替わりの記事として、したためていたらしい。お手柔らかに。


推しを遡る

まず記憶の整理も兼ねて、記憶を紐解き、歴代の推しを洗い出していく。すると、はっきりと「推しだな」と思える人物が3人いた。
書き出しながらすでに思った、わかりやすいにもほどがある。

鬼龍紅郎(あんさんぶるスターズ!!)

いま一番熱く「推し」ている。出戻りPとして2年目を迎えたが、その熱は冷めることなく絶えず燃えている。

出戻り当時、登場人物の関係性を一通りさらっておきたかったのだが、展開が間延びされたゲームシナリオを読み進めるのがどうしても億劫だった。
そんな時、小説が出ていると知った。日日日、いい仕事するじゃない。

鬼龍くんが「推し」になった瞬間は忘れもしない。鮮明に覚えている。
それは、「私」が成り行きで貸したハンカチを鬼龍くんが返してくれる(実際は貸したのとは違うハンカチを渡された)シーン。
やり取りこそゲームシナリオと同じだが、小説は「私」の一人称視点で物語が展開されていく。
ゆえに、ゲームでは分からない「私」の心情が読み取れる。

紅郎さんに押し付けられたハンカチを、私は目の前でふわりと広げた、それは輝きを反射し、花開くようだった。
(中略)恐縮するしかない私に、紅郎さんがとんでもないことを言い始める。
「……ん? あぁ、俺が刺繍したんだよこれ。得意なんだ、縫いもの」
どういうことだろう。えっ、手縫いしたの?こんな体格もいい強そうなひとが、針でちまちま刺繍したの……?その光景が、いまいち想像できない。

ー日日日(2016)『あんさんぶるスターズ!2 革命児の凱歌』(kindle版)位置No.1330より

えっ、手縫いしたの?
こんな体格もいい強そうなひとが、針でちまちま刺繍したの……?

一瞬、読んでたわたしの口から出た言葉かと錯覚した。それほど「私」とわたしの反応が全く一緒だった。
この瞬間から無性に鬼龍くんのことが気になり始めた。そして今に至る。
わたしはギャップにめっぽう弱い。

岡田准一(V6)

どちらかというと「担当」という表現の方がしっくりくるのだが、岡田くんも紛れもない「推し」だ。今回、言葉の定義づけはあまり重視していない。

高校生から社会人になるまで、V6は常にわたしを支えてくれた。
初めてのFC入会、はじめてのコンサート…アイドルファンとしての初めてをいくつも経験させてくれた。

余談だが、書きながら思い出した。初めて買ったCDは、V6ではなくてNEWSの『weeeek』だったなぁ。当時の音楽番組や有線で聞きすぎてサブリミナル効果に陥っていた。

上記の記事で書いた通り、わたしは図書館戦争の実写映画を観て堂上篤を演じた岡田くんに堕ちた。そして岡田一門(岡田くんのFC名)に入門し、日夜クリエイティブを突き詰める姿を応援している。

先日お誕生日を迎えた岡田くん。彼が投稿したポストには、感謝とともに年を重ねてなお前進する決意が添えられていた。

オカダはみてますー

どんな些細な思いでも彼にはきっと届いているのだろうなと嬉しくなる反面、私の愚行も見られているのではないかと、岡田くんの鋭い眼光に睨まれているようで自然と背筋が伸びる。門下生として恥じないようにせねばと思わせてくれる、そんな健全な相互作用が心地いい。

土方十四郎(銀魂)

「推し」というより「好き」に近い感情だった。シンプルに顔に惹かれた。
当時のわたしは小学校高学年。「推し」という概念自体、まだ芽生えていなかった。

出会いは偶然、学校から帰宅してテレビをつけたら『銀魂』がやっていた。そして土方さんが映っていた。それだけのことだ。
しかし、我が家では珍しくテレ東にCHが合っていたことと、偶々、土方さんが出てる回が放送されていたという二重の奇跡が重なった。

原作すら知らなかったわたしにとって、テンポよく繰り広げられる会話劇やコントのような三段落ち、あるいは予想を裏切るどんでん返しのすべてが新鮮だった。
いま思えば(話の内容はともあれ)展開が小気味よく、わたしのフィーリングに合っていたのだと思う。

『銀魂』がきっかけでSNSアカウントを作成したり、声優さんという職業に関心を持つようにもなった。
典型的なオタクロードの礎は、間違いなくここから築かれている。

歴代推したちに惹かれた点

さて次に、上述した歴代の推したちのどこに惹かれたのかを挙げていく。
挙げながら思った、やっぱりわかりやすいな。

・無骨で愚直。常に鍛錬を怠らない
・堅物一辺倒ではなく、茶目っ気がある(ギャップがある)
・自分が所属する集団に対して強い忠誠心を持っている
・自分が認めた相手に対して強い忠義心を持っている
・戦闘力が高い
・顔面偏差値も高い

単刀直入にいえば面食いなだけだ。
しかし恥ずかしさを押し殺して分析するならば、どうやらわたしは、不器用でも自分の信念は曲げない少し昔気質な男に惹かれる傾向にあるらしい。

ここでもう一つ掘り下げなければならない疑問が生まれた。
なぜ、わたしは土方さんに惹かれたのだろうか?

小学校の記憶まで遡ってきた。間違いなく推しの源流に近づいている。
土方さんはわたしのオタクの間口を広げてくれた存在だ。だとすると、土方さんに出会うより前にわたしをオタクの入り口に立たせた人物がいるはずなんだ。

絞り出せ…絞り出せ……!

推しの源流

白鳥霧矢(忍剣花百姫伝)

見つけた。こいつだ。白鳥霧矢、お前が「推し」の源流だ。

小学校中学年~高学年くらいに夢中になった歴史ファンタジー小説がある。それが越水利江子の『忍剣花百姫伝にんけんかおひめでん』シリーズだ。

時は戦国乱世。忍者の城・八剣城を正体も知れぬ魔の軍勢が襲う。
城主は戦死、わずか四歳の花百姫は霊剣を持ったまま行方知れずとなった……
十年の歳月が流れた。記憶を失い、少年として育てられた姫。
ふたたび魔が蠢きだす中、姫の記憶と不思議な力が次第に目覚め、神宝を持つ無敵の剣士・八忍剣も姫の下に集い始める。
だが彼らの前には、巨大な敵と過酷な運命が立ちはだかっていた。
壮大な時代活劇ファンタジー!

忍剣花百姫伝(1) めざめよ鬼神の剣 あらすじ
忍剣花百姫伝(6) 星影の結界 ポプラ社

わたしの記憶と実際の人物像に齟齬があってはいけないと、文庫版を買い揃えて読み直した。
というのも、全7巻のうち、手元にオリジナル版が1巻と6巻しかなかったのだ。おそらく1巻を書店で購入して読んだらその世界観に惹かれ、次巻以降から学校の図書館で借りたのだろう。6巻があるのは、先約がいてなかなか借りられず痺れを切らして購入した、というところか。

改めて読むと、得体の知れない魔物と忍びたちとの手に汗握る戦いに、さながらヒーローショーを見る子どものように夢中になった。
そして、幼馴染み・師弟・主従といったそれぞれの関係性の中で生まれる一途な恋心や無償の愛を真正面から浴び、読み終えた時に放心状態になっていた。恐るべし、児童文学……

(これじゃ、鏡が見つかるまで、霧矢は船から降りてこないよな)
捨て丸はまた肩の力が抜けた。
「どうせ、おれなんか、霧矢にとってはただの姫さまだ。おれの気持ちなんか、霧矢はどうでもいいんだ……」
(中略)
だが、一方で、そういう自分をだめなやつだとも思う。
そんな冷静な自分がいるから、よけい、情けなかった。
「こんなことなら、ごちそうをお腹いっぱい食べればよかった……」
「何を腹いっぱい食べればよかったって?」
ふいにきかれて、捨て丸は顔を上げた。
間近に、霧矢が立っていた。のぞきこんだ 隻眼 は笑っている。
(中略)
「だれが、姫の気持ちもわからない、ぼんくらなんだ?」
霧矢がいじわるくきいた。
「それはそのう……」
とまどう捨て丸を、たくましい腕が、ひょいと抱き上げた。
「しばらく会わぬうちにまた美しくなった。おれの姫が!」
捨て丸を高くかかげて、霧矢がうれしそうにいった。

ー越水利江子(2012)『忍剣花百姫伝 時を駆ける魔鏡』(kindle版)位置No.1040-1045より

作中に登場する白鳥霧矢は八剣城やつるぎじょうの姫に使える八忍剣の一人で水天の法(水耳みずみみ)の術者だ。
川や海の水や湿った大気を通して肉眼では見えないはずのものを見たり、耳では聞こえないはずの音や声を聞くことができる。

鍛え抜かれた体と鋭い三白眼により冷徹な印象を与えるが、城主亡き八剣城の最後の宝である姫を守るべく、己の身を危険に晒すことを厭わない。
しかし、水耳により見通した未来で不穏な気配を察知すると、自分が姫の側にいることで姫を危険に晒してしまわぬように、姫と別れて行動することを選ぶのだ。
本当は自分がいちばん近くで姫のことを守ってやりたいのに。なんとももどかしい。

こういう自己犠牲を、わたしは一種の美徳と考える。
自身の将来や利益を投げ打ってでも目の前にあるいちばん大切なものに全力を預ける。それってなかなかできるものではないと思う。だから自己犠牲を厭わない人物に、わたしは憧憬の念を抱くのだ。

あなたの推しはどこから?
わたしは白鳥霧矢から。

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