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travelereel
目が細くて悪いか!魂の叫びを聴いてくれ【エッセイ】
僕は生来目が細く老け顔である。
この顔貌のせいでこれまでたくさんの憂き目に遭っている。
いくつも話があるので紹介したい。
そもそも僕の受難は生まれ落ちてから始まる。
父は僕と初めて会ったとき、目が細過ぎるあまり「Fの男」と言うあだ名をつけた。
どういう意味か調べたら、昔起きた森永グリコ事件という未解決事件の犯人がそう言われていたらしく、細い狐目をしていたことから「Fの男」と呼ばれたらしい。
自分の子どもを犯罪者呼ばわりするな!と一人でつっこんだことを覚えている。
他にも話がある。
14歳のときに妹と歩いてたら気の良さそうな老婦人が妹に
「お父さんとお出かけできていいね〜。」
とにっこり笑顔で言ったこともある。
僕と妹の歳の差はたった3つなのだが。
その上品な微笑みが憎い。
まだ愚痴は止まらない。
僕の平常時の顔は物思いに耽ってるように見えるらしい。
黙っていたら、サスペンス映画みたいな顔面って言われたこともある。
トイレの個室から出てきたとき、友人から
「そんな深刻な顔して、血便でも出たか?」
と言われた。
血便と思われたくないので、今度は少し明るめな顔でトイレから出たら、
「とんでもない快便だったのか。」
と言われる始末だ。
思春期のころは本気で悩んでいた。
なんでこんなふてぶてしい顔なのか、坊主頭をさすりながら考えていたものだ。
今も黙っていたら「眠いのか」とか「早く帰りたいよね」とか言われるけど、正直どうでもよくなっている。
僕がやる気がなさそうに見えても、知ったことじゃない。
目が細くて悪いか!老け顔で悪いか!
この開き直り精神を過去の自分に送りたい。
目を細めて見守っているぞ。
(終)