「そして生活はつづく」(星野源)を神戸旅行で現地調達した話
HAKOMACHI 4/31冊目
こんばんは、せいたです。
神保町の棚貸し書店でハコマチという棚をやっている、棚主です。
2024年7月限定の棚なので、31冊の本を置き、1日1冊本を紹介する、という試みをやっています。
今日は、本当は2冊目くらいに紹介したかった、よく読み返すエッセイをご紹介します。なんで4冊目になったかというと、棚に置く本を探し回ったのですが、どの書店にも置いていなく、7月1日の当日に棚に置くことができなかったのです。
5件くらい回って、やっと見つけ、今日やっと棚に飾ることができました。
「カンヅメ」旅先で出会った本
城の崎にて
この本に出会ったのは、忘れもしない。
社会人3年目の秋、仕事に追われ、資格勉強に追われ、やっと9月の末にとった夏休み。
城崎温泉から帰り、神戸でさらに一泊をしたそんな日のことでした。
城崎に行こうと思ったのはふと「『カンヅメ』になりたい」と思ったのがきっかけでした。
朝7時30分から22時、もしくはそれより後まで仕事。終わらない時は土日も作業する。緊急で事故があれば、朝でも晩でも電話に出る。そんな生活の中で、とるといいよ、と言われた資格試験まで、あと1ヶ月も時間がない。
これは、休みをとって、集中して、勉強したい。
それなら、カンヅメしかない。
そう思い、いつの時代かの文豪のように、城崎温泉に宿を取り、1日籠ることに。
今書いていて思いますが、その時の自分、本当に仕事が好きですよね。
あと、勉強が好き。
その前に長く休んだのは確か同じ年のゴールデンウィークだったのですが、その時も群馬のお城を巡りながら、ずっとその休みの直前に配属された後輩の育成計画を考えていたのを思い出します。
そんな城之崎での最高な文豪生活を終えて、
まだ休みがある、と足を伸ばしたのが兵庫県三宮でした。
一通り有名な観光地を周り、気づくと、「やることがない」とホテルに帰ってきた自分。
あれ、休み取りすぎた?いや、そんなことはない。あまりに休みを取らない生活を続けてきたせいで、休みの日の過ごし方を忘れていたようです。
そんなふうにホテルのベッドに横になりながら、こんなふうに旅先でホテルでずっと過ごすのもなあ、と考えていると、ふとある願望が頭に浮かびます。
「星野源さんのエッセイを一気読みしたいな」
『そして生活はつづく』 星野源
人の人生って面白い!
ミュージシャンとしてはもちろん、俳優、文筆家としても有名になった星野源さん。
エッセイもいくつか出されているのですが、僕は「書きはじめ」感のあるこの作品が一番好きでした。
各章が「〇〇はつづく」という題名で、星野源さんがもがきながらも、日常を送り、それを等身大で文章にする、そんな感覚。
エッセイってどうなん?なんて考えていた当時の僕は、その面白さと「あるある!」という共感、そしていつの間にか涙が流れている、そんな文章に、心動かされていました。
あんなスーパースターの源さんにも、こんなふうに感じることがあるんだ、と感じたのを覚えています。
実は古参のファン
そして、自分自身が実は星野源の古参のファンだったことを思い出します。
皆さんが星野源さんを知ったのはいつですか?
連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」でしょうか、
それとも「コウノドリ」?「真田丸」?
やっぱり「逃げ恥」?
それともアルバム「YELLOW DANCER」が流行った、2016年でしょうか。
私が彼を認識していたのは、2008年宮藤官九郎さん脚本のドラマ、「未来講師めぐる」の時からでした。その時にキャラの立っていた彼を見て、調べてみると、なんと大好きだった「マンハッタンラブストーリー」「タイガー&ドラゴン」にも出演していることが分かり、あ!あの人かと。
その感動も束の間、どんどんと有名になっていく星野源さん。
周りが騒げば騒ぐほど、「いや、俺はもっと前から知っていたし」となる自分。あの感覚、なんなんですかね?
良さを理解してくれる人が増えた、と素直に喜べばいいのに。
いいよね、実はこんな面白いところやいいところもあってね、と話せばいいだけなのに。
なぜかみんなが見ている作品は見なくなるという、天邪鬼を発揮します。
(これ、高橋一生さんについても1本記事書けるぐらいの、古参自慢があります。)
そしてエッセイもお薦めされていたのに、遠のいていたある日。
旅先の神戸で、この時間があれば、全部読めるな、そう思ったのでした。
この章だけは、読みたくなる
旅先で古本屋へ
ベッドに横になったまま、スマホで近くのブックオフを調べると、ダッシュで向かいます。
いつもは2時間くらい時間をかける100円と200円の棚を無視して、通常のコーナーへ。そんな安い値段にまで下がっていないことは知っていました。ブックオフによる度に、目には入っていたのですから。
そして一気に4冊を購入、喫茶店でアイスミルクコーヒーを買って、かぶりつくように読んだのでした。
一気に読んだ4冊、その中でも、最初の1冊『そして生活はつづく』の中の、とある章が心から離れませんでした。
人を思うことが自分を思うこと
人はなんだか自分を思いすぎる、そんなテーマの章なのですが、
そうではなくて人を思いやることで、自分も相手もなくなる、そんな境地について書かれていました。
でも、その時の僕にも分かったのです。確かに、自分と周りの人や、自分と仕事との境界線がなくなる、そんな時ってあるな、と。
高校の2年生の中夜祭、最後にやった卒業ライブ。あの時、自分もメンバーも、観客も、区別がなかったなって。あの空間がいいなって。
何日も夜遅くまで準備をして、会議とマニュアルチェックとシフト作成を積み重ねて積み重ねて、その上でさらに自分なりに準備して、それで迎えた大学祭当日。
もう、チーム一丸とかそれすら超えて、君も、僕も、それ自身が、大学祭だよ、みたいな、そんな感覚。
朝から晩まで、そして休みの日も通い続けた担当のビルと街。もう何だか、仕事の一商品を超えて、自分の体の一部になったような感触。
あー、そんな状態、また創り出せたらいいなって、そういえばその時思ったのでした。
自分も相手もなく、笑い合うこと。そんな状態が、なりたい姿だな、と思い返したい時、感覚として思い返したい時、その章だけを引っ張り出して読むのです。
読むたびに、ライフゴーズオンやなあってなって。また活きたりしちゃうわけです。
そして、HAKOMISEはつづく。
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