認知症と精神疾患の区別は難しい
親が高齢になって、いつもと様子が違う。
でも認知症なのか精神疾患なのかよくわからないという事はよくあります。
専門知識のない人が鑑別することはまず不可能です。
一番大切なことは専門医を受診することですが、その前に包括支援センターで勤務していた私が経験したことをお伝えします。
どんな情報が必要か
専門医への受診をするかどうかの前に、本人の支援を考えるには、まず家族や知人など昔から本人の事を知っているという方の情報が必要になります。
具体的にどんなことを聞いていくかというと、
・いつから症状(変化)があるのか
・その人のパーソナリティ(性格)はどうか
・普段の交流関係や家族との関係はどうか
・持病やこれまでの既往歴
・定期的な病院受診はしているか
・家の中はどのような感じか
これらの情報を聞いて行くうちに、認知症または精神疾患の可能性があるのかが少し見えてきます。
もちろん本人に会ってみなければ分からない場合も多いですが、高齢者の相談では家族や近隣からの電話が多いため、わかる範囲で聞いていきます。
認知症や精神疾患にみられる症状
認知症なのか精神疾患なのかは専門医を受診しなければわかりませんが、どちらか迷う症状としては、妄想・幻覚が挙げられます。
よくある症状としては、誰かが家の中へ入ってきて物を盗んでいく‘‘物盗られ妄想‘‘、いるはずのない子供が立っている‘‘幻視‘‘、外から電波が飛んできて、誰かに見張られている‘‘妄想‘‘などが挙げられます。
精神疾患では「幻聴」もありますが、意外にも幻聴を訴える高齢者はあまりいません。
また高齢者に限ったことではないかも知れませんが、妄想や幻覚のある人はかなり多くいると思われます。
ですが、必ずしも医療機関に受診するとは限らず、日常生活に大きな支障がない場合にはそれらの症状と上手く付き合いながら生活しているという人もいます。
個人的には妄想や幻覚があるからと言って、必ず精神科を受診する必要はないと思っています。
何らかの支援が必要なのは、それらの症状が本人や周囲の人々の生活を脅かす場合です。
専門医受診までのプロセス
まずは専門医への受診をすすめていきますが、本人がその妄想や幻覚を完全に信じていて「自分は正常だ」と思い込んでいる場合には、受診へのハードルは高くなります。
当然、対応方法はその人のパーソナリティや家庭環境などによって異なりますが、基本的には本人が一番信頼している人(キーパーソン)に協力してもらいます。
キーパーソンがいない場合には本人が比較的受け入れられそうな人(例えば主治医や昔からの付き合いのある近隣住民など)を探します。
家族の言うことは一切聞かないという人でも、信頼している主治医や知人から話してもらうことで受診に繋がったという例もあります。
天涯孤独で頼れる人がいない場合には、包括の職員が何度も訪問して少しずつ信頼関係を築いていくというケースも。
受診までに時間を要する場合であっても、家族や近隣住民へ危害を加えるなどの行為がある時や希死念慮(死にたいという気持ち)が強い場合には、警察を呼んで保護してもらうことになります。
警察から精神科へ連れて行ってもらうということも珍しくありません。
認知症と精神疾患の区別は難しい
高齢者の認知症と精神疾患の関連について詳しいことは分かりませんが、これまでの経験では妄想や幻覚が治療によって改善すると、認知症の症状が悪化するという事がありました。
いずれにしても、本人の辛い症状がなくなったのであれば良いですが、代わりに認知症状が悪化して自宅での生活が難しくなることもあります。
認知症でも幻視や妄想が出る人もいますし、他の疾患で同じような症状が出ることもあります。
まずは本人の症状や生活の様子を確認して、必要であれば専門医の受診を促す。また自宅で生活を続けるのであれば、必要な支援が受けられるように調整していく必要があります。
同時に家族や近隣住民の理解を得ることも重要です。
認知症や精神疾患は怖いものと思われがちですが、実際に苦しんでいるのは本人自身であることを念頭に関わっていく事が大切だと思います。
まずは相談を
こういった困難なケースは、家族だけで解決することはまず困難であることを理解しておきましょう。
できるだけ早く専門機関へ相談することが必要です。
地域包括支援センターでは高齢者に関する相談を受けて、必要な情報提供や関係機関へ繋げるということも行っています。
「どこへ相談したら良いのかわからない」という場合には、自治体や地域の包括支援センターへ連絡してみましょう。
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