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御徒町エレジー第22話【ボヘミアンラプソディ】

御徒町タイム6:30。


こうして毎朝早い電車に乗って通勤しているが今まで一度も座れた試しがない。


この界隈でゾンビのようにワラワラ湧いている異国の民は車内に一人もいない。


つまりはそういうことだ。


きっと奴らはホテルのフカフカなベッドで、のんびりと朝9時に起床。


レートの下がったジャパンマネーをたんまり換金し、今日も各所でデカい声をあげて無理難題をふっかけ蛮行を繰り返すに違いない。


そんな事を考えながら、御徒町の裏路地を歩く。


日々偏屈になっていく。


そんなに都会の喧騒が嫌なら田舎で暮らせばいいのだ。


いや、ホントは憧れているのだ。


俺も自由に世界を放浪してみたい。


ウイスキーの入ったチタン製のスキットルを首からぶら下げ、無精髭を生やし、どこかの海岸でそれをあおりながら鴎に向かって


「おーい!ジョナサーン!」と叫ぶのだ。


いやそれはダメだ…


それは放浪者ではなく


ただの浮浪者だ。。。


やめとこう。


他人を気にしている暇はない。


人生は短いのだ。


そんな事より今日の昼メシだ。


御徒町タイム14:00。


いつものように忍者走りで…


と、言いたいところだが、先日軽く腰をイワしてしまった。


俗に言う「魔女の一撃」って奴だ。


ソロリ、ソロリとかいけつゾロリ走りでグランドラインを超える。


前回の「カレーは飲み物。」の前を通過して、更なる奥地へと。


眼前に広がる景色。


色々な飲食店が見える。


さすがは秋葉原オーシャン。


まだまだ俺の航海は続きそうだ。

ハッ‼︎そうか!



散々異国の民を忌み嫌っていたが俺もまた、ここでは異邦人。


その事を忘れていた…


俺もまだまだである。


と、その時。


左側に見覚えのある看板。

また店名の最後に「 。」


以前、池袋店を訪れた事がある。


大好きな店だ、まさかこんな近くにあるとは知らなかった。


先日のカレー屋も黄色い看板に店名の最後に「 。」がついていた。


ひょっとしたら系列店なのかもしれないが、特に興味はない。


メシが美味けりゃそれでいい。


そして、この店は間違いなく美味い。


迷うことなく、すぐさま入店。


海老天そば(中)の食券を購入し、カウンターへ座る。

壁側に給水器とスープジャーが設置してある。

【冷たい蕎麦麦茶】

【蕎麦湯 魚粉を一振り】


ほぉ。


〆に蕎麦湯を試すとして。


まずは、蕎麦麦茶を汲んで飲んでみる。


おおっ、香ばしい。
好きな味だ。


「中華そば、お待たせしましたぁ」


えっっっ?
ここは蕎麦屋だろ?


何かの聞き間違いかと右隣の男性のトレーをチラ見する。


ホントだぁ。


美味そうな中華そばがモウモウと湯気をあげている。


(今度アレ食べたい…)


そして、俺のが来た。

海老天そば(中)


俺は海老天が大好物だ。


そしてここの海老天はデカい。

衣はサクサクだ。

ここのお店は蕎麦というよりつけ麺の太麺に近いという印象だ。


だから中華そばがあってもきっと違和感ないだろう。


麺の上には白葱、天かす、小松菜と大量の海苔と胡麻、そして味玉と海老天が乗っている。


つけ汁と麺はどちらも冷たいタイプだ。

具材が多すぎて麺が見えない

恐らく自称蕎麦好きが好むタイプの店ではない。


つけ汁はラー油が混ぜてあるので甘辛く、麺は多分何かを練り込んでいるんだと思う。


メチャクチャ噛み応えのあるハードタイプな麺だ。


どちらと言えばラーメン寄りの蕎麦という位置づけが丁度いいんじゃないかと思う(あくまで個人の意見です)

蕎麦に味玉とは嬉しい

まあ、何でも美味けりゃいい。


そして、ラーメンよりカロリー低いんじゃないかと期待しながら


ズ、ズゾゾゾゾォォォー!


ダイソンのような吸引力で一気に麺を啜る。


あっという間に完食。


そして、ちょっと楽しみにしていた〆の蕎麦湯を汲みに行く。


熱々の蕎麦湯をつけ汁に注ぎ、魚粉を一振り二振り。

ウマァ!!

ホッとする。
あったかいのが嬉しい。

「ごっそさん 。」


店を出て、向かいの通りや周辺をぐるっと見回す。


訪れた事のないニューワールド。


そしてこう思う。


俺は異邦人。


そう、ちょっとふり向いてみただけの異邦人なのだ。



       第二十三話へ続く

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