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鏡よ鏡

自分の顔をじっくり見なくなって久しい。
外出時のマスク必須以来、眉を描くのみと化粧もぞんざいだ。

ぴちぴちギャルの頃は、まぁ、あったと仮定して、毎日何度鏡を覗いたことか。
眺めたところで本質の見目は変わらないのだけれど、雑誌モデルを真似て色やら塗り方やらを変えては友人たちと情報交換を楽しんでいた。

綺麗は無敵、可愛いは正義。
ネットが無い世界の女子も今とあまり変わらない。
そうして学校を出たばかりの野暮ったい子が次第に垢抜けていく。

あれこれ駆使してやっと手に入れた自分史最高の美貌は、若くなくなったというだけであっけなく消え去っていく。
残酷にも。

先頃、職場グループ内季刊誌に、所属する事業所の写真が掲載された。
自然体で業務に就いているものをと編集担当から依頼されたとのことで、スタッフ了承の下、4月に課長がバシバシ撮っていた。
…これ、載せるかな
ブサイク超えて貧相なんだけど。
世代が一緒の同僚たちと年下上司にプンスカ詰め寄ったところ、いつものありのままの皆さんですけどと言い放たれてしまった。

細目、への字口、二重アゴ。
しばらく振りに凝視した鏡越しでもこんな自分じゃないんだけど。

思い当たるのは自分史上、否、至上フィルター。
鏡がこの魔法にかかっているに違いない。
だって、容赦無いカメラのレンズには記憶の残像が存在しないのだもの。

鏡よ鏡 答えちゃって
おまえの映す姿だけ



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