一羽の折り鶴
ふとしたお見舞いでうれしいかったのが,一羽の折り鶴。
入院のたびに,保険会社に医療保険金請求の用紙を送ってもらう。すると,書類にクリップで止められて端正な折り鶴が一つ,一緒に送られてくる。
保険会社の営業テクニックだろうとは,わかっている。
けれど,どこかの誰かが,どこかの誰かへ,どうか良くなりますようにと祈りながら一つ一つの折り目を指でなぞった時間は,美しい。
病気の家族をもつ者にとって,周囲の気遣いは有難くもあり,孤独にもさせる。「最近,いかが?」とは尋ねづらいし,安易に励ますこともできない。そうした気配を感じてしまう。
そんなとき,見も知らぬ人からの折り鶴に,「遠くから見守っているよ」と言われた気がして,寂しかった心にひととき灯りがともるのだ。
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