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「なんでそちらを選ぶかなあ」

「人生は選択の連続である」という言葉がある。出典はシェイクスピアの「ハムレット」なのですね。

この言葉,あまりピンときていませんでした。私は進学も就職も結婚も,合格したから,あるいはそういう道筋になったから,そちらへ進んだという意識でいました。もちろんその度に吐きそうなほど悩みましたが,そちらを選択したのは必然だったと思えました。選択の結果というより,そう導かれたという感覚です。

そのほかの日常的な選択,たとえばある所へ行くのにどちらの路線で行くか,何を買って何を捨てるか,この仕事を進めるのにどういう手順でやるかなど,それほど意識的に選択したつもりはありません。お金がかからない方を選ぶとか,手間がかからない方を選ぶ,あるいは気分がいい方を選ぶなど,自分で気づかない”選択の癖”があるはずですが,自分にとってはそちらを選ぶことが当たり前ですので,自分の癖を意識してきませんでした。

家族や周囲の人も似た傾向の人が多かったり,違う傾向の人は「この人とは合わない」と無意識に避けてきたので,自分の選択の癖を意識しないできたのでしょう。

ところが,ここ数年で付き合いが多くなったある人について,「何でそちらを選ぶかなあ」と思うことがあり,改めて人には選択の癖があることに気づきました。

その人の癖のひとつは,引っ越しが多いこと。

私はあまり引っ越しはしません。いろいろな場所に住むことに憧れますが,面倒が先に立ちますし,お金がかかるのはいやだと思ってしまいます。

その人は,私ならば引っ越ししない理由でも,家を替えます。

転居の理由を聞くと,なるほどそういう理由か,とその場では私も納得します。でも後から「引っ越ししなくてもよかったのでは?」と思ったりします。

ほかの場面でも,「そちらを選ぶのか」と思うことがあります。

その人と私とでは,選択の基準が異なるのでしょう。

そうした一つ一つの積み重ねで,たどり着いた先が違っているのだと,改めて気づきました。

私の選択の基準は何だろう?

その基準でいいのだろうか?

その選択は,私を幸せにしてくれるのだろうか?

小さな物を買うときから,意識的に選択してみようと思います。

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冴子
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